【ヘンダーソン】慢性腎不全 生活習慣の改善が課題(0009)2.適切に飲食する

ヘンダーソン

事例の要約

1月25日に高血圧による腎機能障害で緊急入院となった65歳男性の製造業事務職A氏に対して、入院2日目の1月27日より、生活習慣の改善と透析予防に向けて看護介入を行う事例。

2.適切に飲食する

A氏は身長168cm、体重72kgで、算出されるBMIは25.5kg/m²であり、軽度肥満に分類される。慢性腎臓病の進行予防と体重管理の観点から、適正体重の維持が必要である。必要栄養量について、慢性腎臓病ステージに応じた算出が必要である。現在の体重72kgに基づき、腎臓病食事療法ガイドライン2014の推奨に従うと、必要エネルギー量は25-35kcal/kg/日で1800-2520kcal/日となる。ただし、現在の身体活動レベルは病棟内の短距離歩行が可能な程度であり、低~中程度の活動量と考えられることから、当面は下限値である1800kcal/日程度を目標とすることが適切である。タンパク質制限については、腎機能(eGFR 20.1mL/min/1.73m²)から0.6-0.8g/kg/日の制限が必要であり、43-58g/日が目標となる。

入院前の食生活は極めて不規則であった。朝食は妻が準備した和食中心の食事を摂取していたが、週2-3回は欠食していた。昼食は12時~14時の間で不規則であり、職場近くの食堂やコンビニで高塩分食を好んで摂取していた。夕食は仕事の都合で21時以降となることが多く、疲れを理由に夜食やアルコールを追加摂取する習慣があった。この不規則な食生活と高塩分食の摂取は、慢性腎臓病の進行に影響を与えた可能性が高い。

入院時は食欲低下により1日1食がやっとの状態であった。現在は病院食(塩分制限食6g/日、水分制限1500ml/日)が提供され、徐々に摂取量が増加している。具体的な食事摂取量の記載はないため、毎食の摂取量の観察と記録が必要である。水分摂取に関しては、入院前は喉の渇きを頻繁に訴え、ペットボトルの水やスポーツドリンクを常飲していた。現在は水分制限が行われており、1日の尿量は約1200ml/日となっている。水分出納について、入力は水分制限1500ml/日に対し、出力は尿量1200ml/日である。不感蒸泄(通常500-600ml/日)を考慮すると、現在の水分バランスはやや負に傾いており、これは浮腫の改善傾向とも一致する。しかし、過度な水分損失による脱水のリスクも考えられる。脱水の早期発見のため、口渇感、皮膚の乾燥、粘膜の湿潤度、血圧低下、頻脈、尿量減少、尿の濃縮などの観察が必要である。特に高齢者は脱水の自覚症状が現れにくいことから、より慎重な観察が求められる。体重の変化、活動量の増加、季節変動などを考慮しながら、水分出納のバランスを継続的に評価する必要がある。また、今後の活動量増加に伴う不感蒸泄の変化にも注意が必要である。

嚥下機能に問題はなく、65歳という年齢を考慮しても、加齢による嚥下機能低下は認められていない。口腔内の状態や、嘔吐、吐気に関する情報は記載がないため、評価が必要である。特に、食欲低下の原因として消化器症状の有無を確認する必要がある。

血液データでは、総タンパク6.9g/dL、アルブミン3.3g/dL、ヘモグロビン11.6g/dLと、栄養状態の低下を示唆する値となっている。特にアルブミン値の低下は、低栄養状態を示している。中性脂肪値の記載はないため、確認が必要である。

看護介入として以下の対応が必要である。毎食の食事摂取量と水分摂取量の観察を行い、制限内での適切な摂取を支援する。食事摂取量が増加傾向にあることから、この改善を維持できるよう支援する。また、妻の「退院後は塩分制限に気をつけた食事を作りたい」という意向を活かし、退院後の食事管理について、妻を含めた栄養指導を行う。さらに、管理栄養士と連携し、患者の嗜好を考慮しながら、腎臓病食への理解と受け入れを促進する支援を行う。

禁酒については入院を機に遵守できているが、退院後の継続に向けて、節酒や禁酒の意義について指導を行う。また、低アルブミン血症の改善に向けて、適切なタンパク質摂取量の指導も必要である。

ニーズの充足状況について、現時点では食事摂取量は改善傾向にあるものの、栄養状態の改善には至っていない。また、長年の不適切な食習慣の是正が必要な段階であることから、食事に関するニーズは部分的な充足にとどまっている。今後は、入院中の食事療法の効果を評価しながら、退院後の自己管理に向けた準備を進める必要がある。

看護問題の明確化

#慢性腎臓病に伴う食事・水分制限に関連した栄養摂取パターンの変調
#慢性腎臓病に伴う体液管理に関連した体液量過不足のリスク状態

事例の目次

この記事の執筆者

なっちゃん
なっちゃん

・看護師と保健師免許を保有
・現場での経験-約15年
・プリセプター、看護学生指導、看護研究の経験あり

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