本事例の要約
1月25日に高血圧による腎機能障害で緊急入院となった65歳男性の製造業事務職A氏に対して、入院2日目の1月27日より、生活習慣の改善と透析予防に向けて看護介入を行う事例。
1.正常に呼吸する
A氏は高血圧性腎症による慢性腎臓病を有する65歳の男性である。慢性腎臓病では、体内の水分貯留により肺うっ血を引き起こし、呼吸困難を生じる可能性がある。また、貧血の進行により組織への酸素供給が低下し、呼吸困難を悪化させる要因となる。
入院時の状態として、安静時呼吸困難と起座呼吸を認めていた。これは体液貯留による肺うっ血の症状と考えられ、ヘモグロビン値11.8g/dLの貧血も呼吸困難を助長している可能性がある。両下腿全体の浮腫も認められており、体液過剰による呼吸器症状との関連が強く示唆される。
呼吸に関する詳細な情報として、呼吸数、経皮的動脈血酸素飽和度(動脈血酸素飽和度)、肺雑音の有無、胸部レントゲン所見については記載がないため、これらの情報収集が必要である。特に肺うっ血の程度を評価するために、胸部レントゲン検査の所見確認は重要である。
喫煙歴については、1日20本を45年間継続しており、長期の喫煙による呼吸機能への影響が懸念される。慢性閉塞性肺疾患(COPD)の合併の可能性も考慮し、呼吸機能検査の実施を検討する必要がある。入院を機に禁煙を開始しているが、ニコチン依存への対応と禁煙継続支援が必要である。
呼吸に関するアレルギー情報の記載はないが、アレルギー歴の確認は必要である。特に薬剤アレルギーの有無は治療選択に影響するため、詳細な問診が求められる。
入院後の経過として、安静度の設定と投薬調整により、入院1日目には呼吸困難感がやや改善している。本日(入院2日目)には起座呼吸も改善傾向にあることから、治療への反応は良好と判断できる。しかし、夜間の睡眠が安定していないことから、夜間の呼吸状態の継続的な観察が必要である。
看護介入として以下の対応が必要である。呼吸状態の定期的な観察(呼吸数、呼吸の深さ、呼吸音、呼吸困難の自覚症状)を実施する。特に夜間の呼吸状態と睡眠状況の観察を強化する。また、体重測定による体液管理、下腿浮腫の程度の観察を継続する。禁煙支援として、禁煙による身体的・精神的変化への対応と、禁煙継続への動機付けを行う。さらに、退院後の生活に向けて、呼吸困難時の対処方法や自己管理方法について指導を行う。
ニーズの充足状況について、現時点では治療により呼吸困難は改善傾向にあるものの、夜間の睡眠が安定していないことから、呼吸に関するニーズは部分的な充足にとどまっている。今後は、呼吸状態の更なる改善と安定した睡眠の確保に向けて、継続的な観察と支援が必要である。
看護問題の明確化
#慢性腎臓病に伴う体液貯留に関連した呼吸機能の低下
#長期喫煙歴に関連した呼吸機能障害のリスク状態
事例の目次
【ヘンダーソン】慢性腎不全 生活習慣の改善が課題(0009)| 今回の情報
1.正常に呼吸する
2.適切に飲食する
3.あらゆる排泄経路から排泄する
4.身体の位置を動かし、また良い姿勢を保持する
5.睡眠と休息をとる
6.適切な衣類を選び、着脱する
7.体温を生理的範囲内に維持する
8.身体を清潔に保ち、身だしなみを整え、皮膚を保護する
9.環境のさまざまな危険因子を避け、また他人を傷害しないようにする
10.自分の感情、欲求、恐怖あるいは気分を表現して他者とコミュニケーションを持つ
11.自分の信仰に従って礼拝する
12.達成感をもたらすような仕事をする
13.遊び、あるいはさまざまな種類のレクリエーションに参加する
14.正常な発達および健康を導くような学習をし、発見をし、あるいは好奇心を満足させる
看護計画
この記事の執筆者

・看護師と保健師免許を保有
・現場での経験-約15年
・プリセプター、看護学生指導、看護研究の経験あり
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