【ヘンダーソン】胃癌 術後7日目(0001)| 1.正常に呼吸する

ヘンダーソン

事例の要約

55歳女性の胃癌(stageⅡA)症例。

職場健診を契機に発見され、7月8日に胃全摘術およびルーY法を施行。
既往に高血圧、脂質異常症あり。

術後経過は良好で、術後5日目より氷片摂取開始、7日目から流動食を開始している。点滴は減量中で、疼痛コントロール良好、ADLも病棟内歩行が自立している。

退院は術後14日目を予定。早期の職場復帰を希望する患者に対し、食事への不安があり、夫は協力的で食事管理に関心が高い。今後は合併症予防に努めながら、段階的な食事進行と活動範囲の拡大を図り、補助化学療法の必要性を検討する方針である。

1.正常に呼吸する

A氏の現在の呼吸状態は、呼吸数18回/分、SPO2が97%と正常範囲内で安定している。しかし、胃全摘術後であることから、複数の要因により呼吸機能が低下するリスクを有している。

A氏は術後7日目を迎えており、全身麻酔による呼吸中枢の抑制と気道線毛運動の低下は回復傾向にあると考えられる。しかし、開腹術による腹筋や肋間筋への侵襲、および横隔膜周辺の手術操作による炎症反応の影響は残存している可能性がある。また、夜間の創部痛があり呼吸が制限されやすい状態である。術後早期と比較すると呼吸機能は改善傾向にあるものの、長期喫煙歴による基礎的な肺機能低下があるため、引き続き呼吸状態の観察と合併症予防が必要だと考える。これらの要因により無気肺や肺炎などの呼吸器合併症を発症すると、気道内分泌物の貯留や換気障害により呼吸状態が悪化し、低酸素血症を引き起こす可能性がある。その結果、術後回復の遅延や入院期間の延長につながるリスクがある。

呼吸状態の観察項目としては、呼吸数・呼吸リズム・呼吸の深さなどの呼吸パターン、SPO2、呼吸音、咳嗽の有無、喀痰の有無と性状、胸部レントゲン所見、呼吸苦の有無、動作時の息切れ、疼痛による呼吸への影響、腹部膨満の有無、バイタルサインの変化などの観察を行う必要がある。

合併症予防としては、深呼吸と咳嗽を促すことで、気道分泌物の貯留を防ぎ、肺の十分な換気を確保する。術後の疼痛により呼吸が制限されないよう、疼痛管理を適切に行う必要がある。特に夜間の疼痛コントロールについては、症状に応じて早期に鎮痛薬の使用を検討する。早期離床は順調であり、病棟内歩行が可能となっている。これにより背側肺領域の換気が促進され、呼吸機能の回復が早まると考える。引き続き離床を促進し、段階的に活動範囲を拡大することで、さらなる呼吸機能の改善を目指す必要がある。

また、長期の喫煙歴があることから、禁煙の継続支援も重要である。喫煙は気道粘膜を刺激し、線毛運動を低下させることで気道分泌物の排出を阻害する。また、肺胞の破壊や気道の炎症を引き起こし、肺の弾性収縮力を低下させる。A氏のブリンクマン指数(1日の喫煙本数×喫煙年数)は900と高値(喫煙関連疾患のリスクが高いとされる基準値600以上)であり、慢性的な気道粘膜の変化や肺機能の低下が生じていることが予測される。このため術後の呼吸器合併症のリスクが高まっている。入院を機に開始した禁煙を継続できるよう、禁煙のメリットを説明し、退院後の再喫煙防止に向けた支援と教育が必要である。

呼吸に関するアレルギーは、情報がないため、問題はないと考える。

以上から、A氏の呼吸に関するニーズは、現時点では呼吸数やSPO2が正常範囲内で安定しているため、一時的に充足されている状態である。しかし、術後7日目であり開腹手術による呼吸筋への影響が残存していること、夜間の創部痛により呼吸が制限される可能性があること、さらに長期の喫煙歴があり基礎的な呼吸機能低下が予測されることから、呼吸器合併症のリスクが存在する。そのため、深呼吸と咳嗽の促進、適切な疼痛管理、早期離床の継続、禁煙支援など、予防的介入を行う必要がある状態と考える。

看護問題の明確化

# 術後の呼吸機能の低下、長期喫煙歴、創部痛に関連した、呼吸器合併症のリスク状態。

事例の目次

この記事の執筆者

なっちゃん
なっちゃん

・看護師と保健師免許を保有
・現場での経験-約15年
・プリセプター、看護学生指導、看護研究の経験あり

看護の攻略部屋wiki

看護学生をお助け | 看護過程の見本 | 完全無料でコピー&ペースト(コピペ)OK

コメント

タイトルとURLをコピーしました