【ヘンダーソン】胃癌 術後7日目(0001)| 9.環境のさまざまな危険因子を避け、また他人を傷害しないようにする

ヘンダーソン

事例の要約

55歳女性の胃癌(stageⅡA)症例。

職場健診を契機に発見され、7月8日に胃全摘術およびルーY法を施行。
既往に高血圧、脂質異常症あり。

術後経過は良好で、術後5日目より氷片摂取開始、7日目から流動食を開始している。点滴は減量中で、疼痛コントロール良好、ADLも病棟内歩行が自立している。

退院は術後14日目を予定。早期の職場復帰を希望する患者に対し、食事への不安があり、夫は協力的で食事管理に関心が高い。今後は合併症予防に努めながら、段階的な食事進行と活動範囲の拡大を図り、補助化学療法の必要性を検討する方針である。

9.環境のさまざまな危険因子を避け、また他人を傷害しないようにする

A氏は認知機能に問題がなく、医療者の説明を理解し適切な質問もできている。術後せん妄の情報はなく、現時点で判断力の低下は認められない。危険個所や説明を理解することはできると考える。ただし、夜間は睡眠薬を使用しているため、内服時の判断力低下に注意が必要である。

病室内の環境に関して、ベッド周囲の段差の有無や配置物、点滴ルート類の取り回しなど、転倒のリスクとなる環境因子についての情報収集が必要である。術後は筋力が低下し、特に夜間のトイレ歩行時には転倒のリスクが高まる。そのため、ベッド周囲の整理整頓、適切な照明の確保、必要物品の配置など、安全な環境整備が重要である。

また、現状では創傷部以外の皮膚損傷の情報はなく、病棟内歩行が可能で活動的であることから褥瘡発生のリスクは低いと考えられる。しかし、術後の栄養状態(総蛋白6.5g/dL、アルブミン3.5g/dL)の低下と6kgの体重減少が改善されない場合は、リスクが高まる可能性がある。

手術による侵襲と安静により、術後は抵抗力が低下している状態である。そのため、感染予防対策として、手洗いや手指消毒の励行、マスクの着用、感染者の面会制限などの環境管理が重要である。血液データでは、白血球数8,200/μL、CRP2.1mg/dLと術後の炎症反応として妥当な範囲内であるが、創部感染の早期発見のため、バイタルサインの測定や創部の観察とともに、これらの血液データの推移を継続的に確認していく必要がある。

A氏の安全な環境維持に関するニーズについて、認知機能は正常で医療者の説明を理解できており、現時点での判断力に問題はないため、概ね充足されている状態である。しかし、夜間の睡眠薬使用による判断力低下のリスク、術後の筋力低下、点滴ルートの存在による転倒リスク、さらに栄養状態の低下による褥瘡発生のリスク、術後の感染リスクなど、複数の環境要因によるリスクが存在する。そのため、安全な環境整備と予防的介入を継続する必要がある状態である。

看護問題の明確化

# 術後の抵抗力低下、環境因子に関連した、感染のリスク状態
# 夜間の睡眠薬使用、点滴ライン、術後の筋力低下に関連した、転倒・転落のリスク状態
# 術後の栄養状態低下に関連した、皮膚統合性障害のリスク状態

事例の目次

この記事の執筆者

なっちゃん
なっちゃん

・看護師と保健師免許を保有
・現場での経験-約15年
・プリセプター、看護学生指導、看護研究の経験あり

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