【ヘンダーソン】胃癌 術後7日目(0001)| 4.身体の位置を動かし、また良い姿勢を保持する

ヘンダーソン

事例の要約

55歳女性の胃癌(stageⅡA)症例。

職場健診を契機に発見され、7月8日に胃全摘術およびルーY法を施行。
既往に高血圧、脂質異常症あり。

術後経過は良好で、術後5日目より氷片摂取開始、7日目から流動食を開始している。点滴は減量中で、疼痛コントロール良好、ADLも病棟内歩行が自立している。

退院は術後14日目を予定。早期の職場復帰を希望する患者に対し、食事への不安があり、夫は協力的で食事管理に関心が高い。今後は合併症予防に努めながら、段階的な食事進行と活動範囲の拡大を図り、補助化学療法の必要性を検討する方針である。

4.身体の位置を動かし、また良い姿勢を保持する

A氏は手術後に予定通り安静度を拡大できている。現在は、ふらつきなく歩行し、8日目からは院内歩行が可能になる予定である。体の動かしにくさや麻痺等についても訴えている情報はない。引き続き安静度が安全に拡大できるように、状況に応じた声掛けや見守りが必要である。創部の疼痛があることで、体動時に痛みが増強し、活動に消極的になると、術後の治癒遅延のリスクが高まるため、疼痛コントロールも重要である。活動する前に頓服薬を使用できるので、本人と相談していく必要がある。

転倒転落のリスクについては、点滴ラインの存在や夜間の睡眠薬使用により転倒のリスクが高まる。また、痛みによって動作に制限がかかることも転倒につながる可能性がある。特に夜間のトイレ歩行時は、睡眠薬の影響で判断力や反応が低下している可能性があるため注意が必要である。そのため、必要時にはナースコールを使用するよう説明し、夜間のトイレ歩行時は見守りを行う必要がある。認知力に問題はないので、十分な説明を行えば、協力してくれると考える。また、環境整備として、床の整理整頓、適切な照明の確保、手すりの設置位置の確認なども必要である。

活動に関する呼吸機能については、”1.正常に呼吸する”でも述べたが、長期喫煙歴により基礎的な肺機能低下があり、術後の痛みで深呼吸が制限される可能性がある。しかし、現在は呼吸数18回/分、SPO2は97%と安定しており、活動による呼吸状態の悪化は認められていない。運動負荷による呼吸状態の変化に注意しながら、活動範囲を拡大していく必要がある。息切れや呼吸困難感が出現した場合は、休憩を促し、必要に応じて医師に相談する必要がある。

A氏の体位変換や姿勢保持に関するニーズについて、基本的なADLは自立しており、予定通り安静度も拡大できているため、概ね充足されている。しかし、術後の疼痛による活動制限の可能性や、夜間の睡眠薬使用、点滴による転倒リスク、長期喫煙歴による基礎的な呼吸機能低下があるため、完全な充足には至っていない。そのため、疼痛コントロールを行いながら活動を促進し、安全な動作確保のための環境整備と支援を継続する必要がある。また、活動に伴う呼吸状態の変化にも注意を払い、必要に応じて休息を促すなど、段階的な活動範囲の拡大を進めていく必要がある。

看護問題の明確化

# 術後の疼痛、点滴ライン留置、夜間の睡眠薬使用、基礎的な呼吸機能低下に関連した、活動制限および転倒転落のリスク状態

事例の目次

この記事の執筆者

なっちゃん
なっちゃん

・看護師と保健師免許を保有
・現場での経験-約15年
・プリセプター、看護学生指導、看護研究の経験あり

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