本事例の要約
自宅玄関での転倒により右大腿骨頸部骨折を受傷し、人工骨頭置換術を施行した78歳女性の介入14日目の事例である。
8.身体を清潔に保ち、身だしなみを整え、皮膚を保護する
A氏の入院前の清潔ケアについて、自宅での入浴は自立しており、規則正しい生活の中で適切に実施されていた。しかし、現在は右大腿骨頸部骨折術後の疼痛と活動制限により、全介助でのシャワー浴を必要としている。78歳という年齢による皮膚の脆弱性と術後の活動量低下は、皮膚トラブルのリスクを高める要因となっている。
入浴動作については、現在は歩行器使用下で5m程度の歩行は可能であるものの、日常的な移動は車椅子を使用し全介助を要する状態である。移乗動作も看護師の介助が必要であり、入浴時の転倒リスクが高い状態である。特に術創部周囲の清潔保持が重要であるが、現時点で術創部は発赤や浸出液もなく経過は良好である。
口腔内の状態や鼻腔の清潔に関する具体的な情報は不足しているが、嚥下機能に問題はなく、食事摂取は自立している。しかし、水分摂取量が入院前の1日1.2Lから800ml程度まで減少しており、口腔内乾燥のリスクがある。また、高齢による唾液分泌の低下も考慮する必要がある。爪の状態に関する情報も収集が必要である。
排泄に関しては、尿失禁・便失禁の記載はないが、現在は車椅子での多目的トイレまでの移動に介助を要する状態である。術後の活動量低下に伴う便秘に対してセンノシド12mgを使用しているが、排便コントロールの状況について継続的な観察が必要である。
清潔ケアに対する本人の受け止めとして、「早く家に帰りたい」「夫に迷惑をかけて申し訳ない」という発言があり、依存的な状況に対する心理的負担が伺える。80歳の夫との二人暮らしであり、退院後の清潔ケアの自立度向上は重要な課題である。
必要な看護介入として、以下の対応が求められる: 術後の疼痛管理を適切に行いながら、段階的に清潔ケアの自立度を向上させる必要がある。特に入浴動作については、安全性を確保しながら自立に向けた援助を行う。口腔内の観察と適切な口腔ケアの指導、水分摂取量の増加に向けた支援が必要である。また、皮膚の観察と保湿ケア、爪切りなどの細かな身だしなみへの配慮も重要である。排泄に関しては、自立度の向上と合わせて、失禁予防の観点からも定時排泄の習慣づけを検討する。
現時点でのニーズの充足状況について、清潔に関するニーズは充足されていない。これは術後の活動制限と疼痛による自立度の低下が主な要因である。しかし、介助により最低限の清潔は保たれており、術創部の経過も良好であることから、今後のリハビリテーションの進行と共に、段階的な改善が期待できる。
看護問題の明確化
#右大腿骨頸部骨折術後の疼痛・活動制限に関連したセルフケア不足(清潔)
事例の目次
【ヘンダーソン】大腿骨頸部骨折 骨粗鬆症(0011)| 今回の情報
1.正常に呼吸する
2.適切に飲食する
3.あらゆる排泄経路から排泄する
4.身体の位置を動かし、また良い姿勢を保持する
5.睡眠と休息をとる
6.適切な衣類を選び、着脱する
7.体温を生理的範囲内に維持する
8.身体を清潔に保ち、身だしなみを整え、皮膚を保護する
9.環境のさまざまな危険因子を避け、また他人を傷害しないようにする
10.自分の感情、欲求、恐怖あるいは気分を表現して他者とコミュニケーションを持つ
11.自分の信仰に従って礼拝する
12.達成感をもたらすような仕事をする
13.遊び、あるいはさまざまな種類のレクリエーションに参加する
14.正常な発達および健康を導くような学習をし、発見をし、あるいは好奇心を満足させる
看護計画
この記事の執筆者

・看護師と保健師免許を保有
・現場での経験-約15年
・プリセプター、看護学生指導、看護研究の経験あり
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