【ヘンダーソン】大腿骨頸部骨折 骨粗鬆症(0011)| 9.環境のさまざまな危険因子を避け、また他人を傷害しないようにする

ヘンダーソン

事例の要約

自宅玄関での転倒により右大腿骨頸部骨折を受傷し、人工骨頭置換術を施行した78歳女性の介入14日目の事例である。

9.環境のさまざまな危険因子を避け、また他人を傷害しないようにする

A氏の認知機能について、入院前のMMSEは29/30点であったが、現在は27/30点と軽度低下している。78歳という高齢であることに加え、入院による環境変化、手術によるストレス、そして疼痛による睡眠障害が認知機能に影響を与えていると考えられる。特に夜間の疼痛による睡眠障害は、術後せん妄の重大なリスク因子となる。夜間せん妄の早期発見のために、夜間の意識状態、見当識、異常言動の有無について、より詳細な観察と記録が必要である。

安全に関する理解力と行動について、入院前は地域の高齢者サークルの世話役を務めるなど社会活動も活発で、几帳面な性格から安全への意識は高いと考えられる。しかし、自宅玄関での初めての転倒体験により、強い心理的不安と恐怖感を抱いている。これは「痛くて眠れない」「夫に迷惑をかけて申し訳ない」という発言からも読み取れる。特に第3病日からの端座位訓練開始時より、疼痛への不安から積極的な離床に躊躇する様子が顕著となっている。この心理的バリアは、リハビリテーションの進行を妨げる要因となっており、段階的な自信回復への支援が必要である。

身体機能の面では、現在は歩行器使用下で5m程度の歩行が可能であるが、筋力低下と疼痛による不安定性が認められる。移動時のふらつきや姿勢の崩れについて、詳細な観察と記録が必要である。また、降圧剤(アムロジピン5mg)の服用があり、起立性低血圧のリスクにも注意が必要である。現在の血圧は128/74mmHgと安定しているが、特に移動時の血圧変動について観察を継続する必要がある。

皮膚の状態について、術創部は発赤や浸出液もなく経過良好で抜糸も完了している。しかし、体重減少(3kg)とアルブミン値の低下(3.0g/dL)、さらにヘモグロビン値の低下(9.2g/dL)は、創傷治癒の遅延や皮膚トラブルのリスクとなる。特に、車椅子使用時の局所圧迫や、ベッド上での長時間の同一体位による褥瘡リスクについて、より詳細なアセスメントが必要である。仙骨部や踵部など、褥瘡好発部位の定期的な観察と予防的ケアが重要である。

感染予防について、手術部位感染(SSI)のリスク管理が重要である。血液データでは、白血球数は7.8×10³/μLと基準値内であるが、CRP値は術後7日目で1.2mg/dLと依然軽度上昇が継続している。また、夫の毎日の面会と長女の週2-3回の面会があることから、面会者を介した感染リスクも考慮する必要がある。手指衛生の徹底と面会制限の具体的な指針について、情報収集と指導強化が必要である。

環境面での危険因子として、病室内の動線上の障害物や段差の確認が重要である。特に夜間のトイレ移動時の転倒リスクが高く、適切な照明管理とナースコール使用の徹底が必要である。また、退院後の自宅環境について、玄関での転倒歴を踏まえた環境評価が必要である。特に、玄関の段差、手すりの設置状況、照明の配置などについて、理学療法士や作業療法士と連携した詳細な評価と改善提案が重要である。

必要な看護介入として、以下の包括的な対応が求められる:

認知機能維持と術後せん妄予防に向けて、日中の活動性向上と夜間の良質な睡眠確保を図る。具体的には、日中の離床時間の確保、疼痛コントロールの最適化、環境調整(騒音・照明)による睡眠の質の向上を目指す。転倒予防については、移動時の見守りと介助の標準化、環境整備の徹底、そして定期的な転倒リスク評価を実施する。皮膚統合性の維持に向けて、栄養状態の改善、体位変換の時間間隔の設定、適切な圧分散マットレスの使用を検討する。

感染予防に関しては、スタッフの手指衛生遵守率の向上、面会者への具体的な感染予防教育(手指消毒、マスク着用、体調不良時の面会制限など)の実施が必要である。また、創部の観察と清潔ケアの標準化、定期的な環境清掃の確認も重要である。

退院に向けた準備として、自宅環境の詳細な評価と改善提案、家族への介助方法の指導、転倒予防策の具体的な立案が必要である。特に80歳の夫との二人暮らしという状況を考慮し、介護保険サービスの活用も含めた包括的な支援体制の構築が重要である。

現時点でのニーズの充足状況について、安全に関するニーズは部分的に充足されているものの、なお課題が残る状況である。看護師による介助と基本的な環境整備により、現時点での重大な事故は回避できているが、自立度の低下と転倒への不安が著明である。また、感染予防や皮膚トラブルの予防に関して、より体系的で継続的な介入が必要な状況である。退院後の生活を見据えた包括的な安全管理体制の確立が求められる。

看護問題の明確化

#右大腿骨頸部骨折術後の疼痛・活動制限、転倒既往に関連した転倒再発のリスク状態
#術後の活動量低下・低栄養状態(Alb 3.0g/dL)・貧血(Hb 9.2g/dL)に関連した皮膚統合性障害のリスク状態
#手術部位感染の潜在的リスク状態(CRP 1.2mg/dL持続)に関連した感染リスク状態

事例の目次

この記事の執筆者

なっちゃん
なっちゃん

・看護師と保健師免許を保有
・現場での経験-約15年
・プリセプター、看護学生指導、看護研究の経験あり

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