【ヘンダーソン】大腿骨頸部骨折 骨粗鬆症(0011)| 4.身体の位置を動かし、また良い姿勢を保持する

ヘンダーソン

事例の要約

自宅玄関での転倒により右大腿骨頸部骨折を受傷し、人工骨頭置換術を施行した78歳女性の介入14日目の事例である。

4.身体の位置を動かし、また良い姿勢を保持する

A氏は右大腿骨頸部骨折(Garden分類 type III)に対して人工骨頭置換術を施行した78歳の女性である。入院前はすべての日常生活動作が自立しており、杖なしでの独歩が可能で、自由に外出もできていた。しかし、現在は歩行器を使用して5m程度の歩行は可能であるものの、日常的な移動は看護師の全介助で車椅子を使用している状況である。ベッドから車椅子への移乗、トイレでの排泄動作、入浴動作、衣類の着脱のすべてにおいて看護師の介助を必要としている。

麻痺の有無については明確な記載はないが、術前の状態や現在の症状からは麻痺の存在を示唆する情報は認められない。ドレーンや点滴の使用状況についての記載はないが、術後7日目であることから、これらの医療機器による活動制限の有無について確認が必要である。

生活習慣として、入院前は地域の高齢者サークルの世話役を務めるなど社交的で活動的な生活を送っており、性格は几帳面で規則正しい生活を心がけていた。認知機能については、ミニメンタルステート検査(MMSE)の得点が入院前の29/30点から現在27/30点と軽度低下している。高齢者では、入院による環境の変化や活動量の低下により、認知機能が一時的に低下することがあるため、注意深い観察が必要である。

ADLに関連した呼吸機能について、5m程度の歩行時の呼吸状態や自覚症状についての具体的な記載はないが、疼痛への不安から積極的な離床に躊躇する様子が見られている。この心理的な不安が活動量の制限につながっている可能性があり、適切な疼痛管理とともに、段階的な活動範囲の拡大が必要である。

転倒転落のリスク要因として、高齢、術後の筋力低下、活動制限による廃用症候群のリスク、認知機能の軽度低下、夜間の疼痛による睡眠障害が挙げられる。また、今回の転倒が初めての転倒経験であることから、転倒への不安感が強い可能性がある。**重度の骨粗鬆症(T-score: -3.2)**を合併していることも、転倒時の骨折リスクを著しく高める要因となっている。世界保健機関(WHO)の診断基準では、T-scoreが-2.5以下を骨粗鬆症と定義しており、-3.2という値は重度の骨粗鬆症を示している。この状態は、若年成人平均値と比較して骨密度が3.2標準偏差以上低下していることを意味し、骨強度が著しく低下している状態である。そのため、軽度の転倒でも容易に骨折につながる可能性が高い。現在、アレンドロン酸とエルデカルシトールによる治療が開始されているが、薬物療法の効果が現れるまでには一定期間を要するため、この時期の転倒予防は特に重要である。

看護介入として、まず疼痛管理の最適化を図りながら、段階的なリハビリテーションプログラムを実施する必要がある。具体的には、疼痛の程度に応じた鎮痛薬の使用タイミングの調整、移動時の適切な介助方法の統一、環境整備による安全確保が重要である。特に重度の骨粗鬆症を有することから、移動や体位変換時には愛護的な介助が必要であり、急激な動きや過度な負荷を避ける必要がある。また、骨粗鬆症に対する薬物療法が確実に実施されるよう、服薬支援も重要である。また、本人の自信回復を促すため、できることとできないことを明確にし、できる動作の範囲を少しずつ拡大していく支援が必要である。

特に術後早期は、骨折部位の安定性と術創部の治癒状況を考慮しながら、適切な活動範囲と介助方法を判断する必要がある。リハビリテーションの進行に合わせて、徐々に介助量を調整し、自立度の向上を図ることが重要である。また、夜間の体位変換や排泄介助の際には、転倒予防に特に注意を払う必要がある。

ニーズの充足状況について、現状では身体の位置変換と姿勢保持に関するニーズは充足されていないと判断される。術後の疼痛や不安により活動が制限され、日常生活動作の多くで介助を要する状態が続いている。高齢者では、活動制限が長期化すると廃用症候群のリスクが高まるため、早期からの適切な介入が必要である。

看護問題の明確化

#術後疼痛及び不安に関連した活動耐性の低下
#重度骨粗鬆症及び活動制限に関連した転倒・再骨折のハイリスク状態

事例の目次

この記事の執筆者

なっちゃん
なっちゃん

・看護師と保健師免許を保有
・現場での経験-約15年
・プリセプター、看護学生指導、看護研究の経験あり

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