本事例の要約
58歳男性のA氏は、大手IT企業の管理職として過重労働が続く中、職場健康診断で収縮期血圧210mmHg、拡張期血圧118mmHgと著明な上昇を指摘され、高血圧緊急症の診断で即日入院となった。入院後、降圧治療により血圧は徐々に安定し、生活習慣の改善に向けた指導を受けている事例。介入日は1月28日(入院7日目)である。
12.達成感をもたらすような仕事をする
A氏は大手IT企業において20年以上にわたり管理職として勤務しており、30名の部下を統括する重要な立場にある。性格は几帳面で仕事熱心であり、部下からの信頼も厚く、職場での役割遂行を通じて高い達成感を得ていると考えられる。このような職業上の役割は、A氏のアイデンティティの重要な部分を形成していると推測される。
今回の高血圧緊急症による突然の入院は、A氏の職業生活に大きな影響を与えている。入院当初は翌日の重要会議への出席を強く希望するなど、仕事への強い責任感と職場を離れることへの不安が表出されていた。特に、「部下たちが心配している」「できるだけ早く退院したい」という発言からは、管理職としての責務を果たせないことへのストレスが感じられる。
社会的役割としては、職場でのリーダーシップに加え、家庭では妻との二人暮らしの世帯主という立場にある。長男は結婚を機に別居しているが、家族関係は良好であり、特に妻は毎日面会に来て積極的なサポートを示している。このような家族からのサポートは、入院生活におけるストレス軽減に重要な役割を果たしている。
疾患が仕事に与える影響については、現在の入院による一時的な職場離脱に加え、退院後の生活様式の変更が必要となる。特に、これまでの仕事中心の生活から、健康管理を優先する生活への転換が求められる。具体的には、定期的な通院、服薬管理の徹底、食事制限、運動習慣の確立などが必要となり、これらは仕事のスケジュールや業務遂行に影響を与える可能性がある。
また、58歳という年齢を考慮すると、今後のキャリアプランにおいても健康管理を考慮した働き方の検討が必要となる。これまでの生活習慣や仕事優先の価値観を見直し、持続可能な働き方を確立することが重要である。
今後の看護介入としては、以下の点に注意が必要である。職場との連絡調整について、必要に応じて医療ソーシャルワーカーと連携し、円滑な職場復帰に向けた支援を行う。また、退院後の生活において、仕事と健康管理を両立させるための具体的な方策について、本人・家族を交えた話し合いの機会を設ける。特に、服薬管理や食事制限などの健康管理行動を日常業務の中に組み込む方法について、実践的な指導を行う必要がある。
ニーズの充足状況については、職業上の役割や達成感に関するニーズは入院により一時的に充足できていない状態にある。しかし、この状況を契機として、より健康的で持続可能な働き方を確立するための支援が必要である。
看護問題の明確化
#高血圧緊急症による入院に関連した職業役割遂行の中断
#生活習慣の改善の必要性に関連した仕事役割の変更への不安
事例の目次
【ヘンダーソン】高血圧 入院7日目(0013)| 今回の情報
1.正常に呼吸する
2.適切に飲食する
3.あらゆる排泄経路から排泄する
4.身体の位置を動かし、また良い姿勢を保持する
5.睡眠と休息をとる
6.適切な衣類を選び、着脱する
7.体温を生理的範囲内に維持する
8.身体を清潔に保ち、身だしなみを整え、皮膚を保護する
9.環境のさまざまな危険因子を避け、また他人を傷害しないようにする
10.自分の感情、欲求、恐怖あるいは気分を表現して他者とコミュニケーションを持つ
11.自分の信仰に従って礼拝する
12.達成感をもたらすような仕事をする
13.遊び、あるいはさまざまな種類のレクリエーションに参加する
14.正常な発達および健康を導くような学習をし、発見をし、あるいは好奇心を満足させる
看護計画
この記事の執筆者

・看護師と保健師免許を保有
・現場での経験-約15年
・プリセプター、看護学生指導、看護研究の経験あり
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