本事例の要約
58歳男性のA氏は、大手IT企業の管理職として過重労働が続く中、職場健康診断で収縮期血圧210mmHg、拡張期血圧118mmHgと著明な上昇を指摘され、高血圧緊急症の診断で即日入院となった。入院後、降圧治療により血圧は徐々に安定し、生活習慣の改善に向けた指導を受けている事例。介入日は1月28日(入院7日目)である。
8.身体を清潔に保ち、身だしなみを整え、皮膚を保護する
入院前の清潔習慣について、A氏は自宅での入浴を毎日実施しており、清潔に対する意識は高いと評価できる。現在は入院中であり、週3回のシャワー浴が許可されている。シャワー浴は医療者の見守りのもと実施されているが、介助を必要とせず自立して行えている。麻痺や知覚障害は認められず、バランス機能も良好であることから、転倒リスクは低いと判断される。しかし、高血圧緊急症の状態であることから、シャワー浴時の血圧変動には注意が必要である。
口腔内の状態については、喫煙歴が38年と長期にわたり、1日20本の喫煙習慣があったことから、口腔内の状態確認と必要に応じた保清指導が必要である。現在は入院による禁煙を継続できているが、口腔内の観察と口腔ケアの習慣化について評価を行う必要がある。また、入院前はコーヒーの摂取が多かったことから、歯の着色や口腔内の乾燥についても観察が必要である。
爪の状態や鼻腔の保清に関する具体的な情報は得られていないため、観察と情報収集が必要である。特に、手指の衛生管理は感染予防の観点からも重要であり、爪切りや手洗いの習慣について確認が必要である。
排泄に関しては、尿失禁、便失禁ともに認められず、トイレでの排泄が自立している。排泄後の衛生管理も問題なく行えていると考えられるが、具体的な手技については確認が必要である。
身だしなみについては、几帳面な性格で管理職という立場にあることから、日常的に整容に気を配っていると推測される。病衣の更衣も自立しており、清潔な衣類の交換も適切に行えている。
皮膚の状態については、体重が82kgと標準より多いことから、皮膚の密着部や発汗による浸軟のリスクについて観察が必要である。特に、現在は運動量が制限されているため、長時間の臥床による皮膚トラブルの予防的観察が重要である。
今後の看護介入としては、以下の点に注意が必要である。シャワー浴前後の血圧測定を確実に実施し、急激な血圧変動の予防に努める。口腔ケアの重要性について指導を行い、禁煙継続への支援と共に、効果的な口腔ケア方法を指導する。必要に応じて、歯科衛生士による専門的な指導を検討する。また、退院後の生活を見据え、自宅での入浴方法や注意点について、妻を含めた指導を行う必要がある。
ニーズの充足状況については、基本的な清潔ケアは自立して行えており、現時点では充足していると判断される。しかし、口腔ケアの習慣化や退院後の安全な入浴方法の確立については、さらなる指導と支援が必要である。
看護問題の明確化
#高血圧緊急症に関連した入浴時の循環動態変動のリスク状態
事例の目次
【ヘンダーソン】高血圧 入院7日目(0013)| 今回の情報
1.正常に呼吸する
2.適切に飲食する
3.あらゆる排泄経路から排泄する
4.身体の位置を動かし、また良い姿勢を保持する
5.睡眠と休息をとる
6.適切な衣類を選び、着脱する
7.体温を生理的範囲内に維持する
8.身体を清潔に保ち、身だしなみを整え、皮膚を保護する
9.環境のさまざまな危険因子を避け、また他人を傷害しないようにする
10.自分の感情、欲求、恐怖あるいは気分を表現して他者とコミュニケーションを持つ
11.自分の信仰に従って礼拝する
12.達成感をもたらすような仕事をする
13.遊び、あるいはさまざまな種類のレクリエーションに参加する
14.正常な発達および健康を導くような学習をし、発見をし、あるいは好奇心を満足させる
看護計画
この記事の執筆者

・看護師と保健師免許を保有
・現場での経験-約15年
・プリセプター、看護学生指導、看護研究の経験あり
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