本事例の要約
自宅玄関での転倒により右大腿骨頸部骨折を受傷し、人工骨頭置換術を施行した78歳女性の介入14日目の事例である。
5.睡眠と休息をとる
A氏は入院前、几帳面な性格で規則正しい生活を送っており、睡眠に問題はなかった。しかし現在は、「痛くて眠れない」との訴えがあり、疼痛による睡眠障害が見られている。具体的な睡眠時間や睡眠パターンについての記載はないが、夜間の疼痛により睡眠の質が低下している可能性が高い。高齢者は若年者と比較して睡眠が浅く、環境の変化や疼痛などの外的要因の影響を受けやすいという特徴がある。また、加齢に伴い睡眠時間が短縮し、中途覚醒が増加する傾向にあるため、現在の睡眠状態について詳細な評価が必要である。
疼痛管理については、ロキソプロフェン60mgを頓用で使用しており、使用頻度は1日1回程度で主に夕方から夜にかけての使用となっている。しかし、夜間の疼痛コントロールが十分でない可能性があり、使用のタイミングや効果の評価が必要である。掻痒感の有無についての記載はないが、術創部は発赤や浸出液もなく経過良好で、抜糸も完了している。睡眠に影響を与える他の身体症状の有無についても確認が必要である。
入眠剤の使用については記載がないが、疼痛による不眠が継続している場合は、主治医と相談の上で検討が必要かもしれない。特に高齢者では、睡眠薬の使用による転倒リスクの増加や、日中の傾眠への影響を考慮する必要がある。
疲労の状態について明確な記載はないが、術後の活動量が制限されており、日中の活動状況が夜間の睡眠に影響を与えている可能性がある。現在は歩行器使用下で5m程度の歩行が可能だが、日常生活での移動は車椅子を使用しており、活動量が著しく低下している。この活動量の低下は、睡眠-覚醒リズムの乱れを引き起こす可能性がある。
療養環境への適応状況について、A氏は「早く家に帰りたい」「夫に迷惑をかけて申し訳ない」との発言があり、入院生活や家族への負担に対するストレスを感じている様子が見られる。この心理的なストレスも睡眠に影響を与える要因となり得る。認知機能については、MMSEが入院前の29/30点から現在27/30点と軽度低下しており、環境の変化による影響が考えられる。
看護介入として、まず睡眠状態の詳細な評価が必要である。就寝時刻、入眠までの時間、中途覚醒の有無と頻度、起床時刻、睡眠の質に関する主観的評価などについて情報収集を行う。疼痛に対しては、夜間の疼痛コントロールを重点的に行い、就寝前の体位調整や疼痛評価を確実に実施する。日中の活動量を可能な範囲で維持し、昼夜のリズムを整えることも重要である。また、室温、照明、音などの環境調整を行い、快適な睡眠環境を整備する必要がある。不安やストレスの軽減のために、傾聴を心がけ、必要に応じて家族との連携を図ることも重要である。
ニーズの充足状況について、現状では睡眠と休息に関するニーズは充足されていないと判断される。疼痛による睡眠障害、活動量の低下、入院生活へのストレスなど、複数の要因が睡眠の質に影響を与えている。高齢者では、不適切な睡眠が認知機能や身体機能の回復に悪影響を及ぼす可能性があるため、早期からの包括的な介入が必要である。
看護問題の明確化
#術後疼痛による睡眠パターンの障害
#活動量低下と環境変化に関連した睡眠-覚醒リズムの混乱のリスク状態
事例の目次
【ヘンダーソン】大腿骨頸部骨折 骨粗鬆症(0011)| 今回の情報
1.正常に呼吸する
2.適切に飲食する
3.あらゆる排泄経路から排泄する
4.身体の位置を動かし、また良い姿勢を保持する
5.睡眠と休息をとる
6.適切な衣類を選び、着脱する
7.体温を生理的範囲内に維持する
8.身体を清潔に保ち、身だしなみを整え、皮膚を保護する
9.環境のさまざまな危険因子を避け、また他人を傷害しないようにする
10.自分の感情、欲求、恐怖あるいは気分を表現して他者とコミュニケーションを持つ
11.自分の信仰に従って礼拝する
12.達成感をもたらすような仕事をする
13.遊び、あるいはさまざまな種類のレクリエーションに参加する
14.正常な発達および健康を導くような学習をし、発見をし、あるいは好奇心を満足させる
看護計画
この記事の執筆者

・看護師と保健師免許を保有
・現場での経験-約15年
・プリセプター、看護学生指導、看護研究の経験あり
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