【ヘンダーソン】大腿骨頸部骨折 骨粗鬆症(0011)| 1.正常に呼吸する

ヘンダーソン

事例の要約

自宅玄関での転倒により右大腿骨頸部骨折を受傷し、人工骨頭置換術を施行した78歳女性の介入14日目の事例である。

1.正常に呼吸する

A氏は78歳の高齢女性で、右大腿骨頸部骨折に対して人工骨頭置換術を受けた患者である。手術侵襲による生体への影響と、高齢による呼吸機能の生理的変化を考慮したアセスメントが必要である。

疾患の説明として、大腿骨頸部骨折の手術後は、疼痛による呼吸抑制や長期臥床による肺胞換気の低下のリスクがある。術後の臥床により、従重力性の肺うっ血や無気肺のリスクが高まる。また、血液検査データでは術後にヘモグロビン値が9.2g/dLまで低下しており、酸素運搬能の低下による呼吸機能への影響も懸念される。加えて、アルブミン値が3.0g/dLと低下していることから、膠質浸透圧の低下による肺水腫のリスクも存在する。特に高齢者では、呼吸筋力の低下や肺の弾性収縮力の減少といった加齢変化により、術後の呼吸機能障害のリスクが一層高まる。さらに、疼痛による運動制限から深部静脈血栓症を併発した場合、肺塞栓症を引き起こす可能性もあり、包括的な予防策が必要である。

呼吸状態に関して、現在のバイタルサインでは体温36.6℃、心拍数76回/分と安定している。しかし、呼吸数、経皮的動脈血酸素飽和度(SpO2)、肺雑音の聴取所見、胸部レントゲン所見についての情報が不足している。これらは術後の呼吸状態を評価する上で重要な指標であり、早急に情報収集が必要である。特に高齢者では、低酸素血症の自覚症状が現れにくいため、客観的な指標による評価が重要となる。

呼吸症状について、呼吸苦や息切れ、咳嗽、喀痰の訴えに関する明確な記載はないが、現在は歩行器使用下で5m程度の歩行が可能となっている。この短距離歩行時の呼吸状態や自覚症状の観察が必要である。また、術後の疼痛により「痛くて眠れない」との訴えがあり、この疼痛が深呼吸や咳嗽を抑制している可能性があり、注意深い観察が必要である。

生活歴として、喫煙歴はなく、呼吸器系のアレルギーに関する既往もない。これは術後の呼吸器合併症のリスクを低減する好ましい要因である。また、入院前は社交的で活動的な生活を送っており、呼吸機能を含む身体機能の維持に寄与していたと考えられる。

看護介入として、定期的な呼吸状態の観察を実施する必要がある。具体的には呼吸数、呼吸パターン、SpO2のモニタリングを行い、異常の早期発見に努める。また、疼痛管理を適切に行いながら、深呼吸と咳嗽を促す呼吸訓練を実施することが重要である。さらに、早期離床を継続し、段階的な活動範囲の拡大を図ることで、呼吸機能の改善を促進する。水分摂取については、現在の800ml/日から1000ml以上への増量を目指し、適切な声かけと援助を行う。また、呼吸器合併症の予防に向けて、体位変換とポジショニングの工夫も重要である。

ニーズの充足状況について、現時点での評価に必要な情報が不足しているため、包括的な判断は困難である。しかし、術後の活動度が制限され、疼痛による呼吸への影響が懸念されることから、呼吸に関するニーズは完全には充足されていない可能性が高い。特に、疼痛管理と活動範囲の拡大を通じて、より効果的な呼吸機能の維持・改善を図る必要がある。

看護問題の明確化

#術後疼痛による深呼吸抑制に関連した非効果的な呼吸パターンのリスク状態

事例の目次

この記事の執筆者

なっちゃん
なっちゃん

・看護師と保健師免許を保有
・現場での経験-約15年
・プリセプター、看護学生指導、看護研究の経験あり

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