本事例の要約
慢性心不全の急性増悪により緊急入院となった72歳男性の事例である。入院3日目において、薬物療法と水分・塩分制限により症状の改善を認めており、今後は再発予防に向けた生活指導と退院支援を要する事例である。
9.環境のさまざまな危険因子を避け、また他人を傷害しないようにする
認知機能について、意識レベルは清明で日常生活に支障をきたすような認知機能の低下は認められていない。危険に対する認識力も保たれており、医療者の指示も理解できている。せん妄の出現も認められていない。ただし、72歳という年齢を考慮すると、入院による環境の変化や夜間の排尿による睡眠中断が続くことでせん妄のリスクが存在する。
環境の危険因子として、点滴ルートの存在が挙げられる。フロセミドの静脈注射が1日2回実施されているが、点滴実施中の移動時には転倒やルートトラブルのリスクが高まる。特に夜間のトイレ歩行が2-3回あることから、夜間の安全確保が重要である。病棟内の段差や障害物に関する情報は不足しており、追加の環境アセスメントが必要である。
活動面では、病棟内歩行は見守りで実施されており、トイレまでの移動時には看護師が付き添っている。これは心不全による活動制限に加え、安全確保の観点からも適切な対応である。転倒歴はなく、現在までの入院中も転倒は発生していない。ただし、両下肢の浮腫が残存しており、これによるバランスの変化や歩行への影響に注意が必要である。
皮膚損傷に関して、現時点での損傷は認められていないが、浮腫のある下肢は外傷を受けやすい状態にある。また、高齢者の皮膚は脆弱であり、わずかな接触でも損傷を生じやすいことに留意が必要である。圧迫による皮膚損傷のリスクについても観察が必要である。
感染予防対策について、白血球数は7.8×10³/μL、CRPは0.42mg/dLと改善傾向にあるものの、心不全患者は感染により容易に状態が悪化する可能性がある。手洗いの実施状況や面会制限に関する具体的な情報は不足しており、追加の情報収集が必要である。特に心不全患者は感染予防が重要であり、標準予防策の徹底が求められる。
看護介入としては、環境整備と安全確保が重要である。点滴実施中の移動時には必ず付き添い、夜間のトイレ歩行時には十分な照明を確保する。また、心不全症状の変化に応じて活動制限の程度を調整し、必要な介助を提供する。感染予防については、手洗いの指導や面会者への感染予防教育が必要である。
継続的な観察が必要な点として、せん妄の前駆症状の有無、活動時のバランス状態、浮腫の程度とその影響、皮膚の状態、感染徴候の有無が挙げられる。また、心不全症状の変化に伴う活動能力の変化も注意深く観察する必要がある。
加齢による影響として、反射機能や平衡感覚の低下、視力・聴力の変化が予測される。これらは環境の危険性を高める要因となるため、環境整備においてはこれらの要素を考慮する必要がある。
将来的な自宅退院に向けては、自宅環境のアセスメントと必要な環境調整の検討が必要である。特に浴室や玄関の段差、照明の配置、手すりの設置などについて、具体的な評価と提案が必要となる。
ニーズの充足状況については、現時点では病棟内での基本的な安全は確保されており、看護師の見守りや付き添いにより危険回避ができている状態である。ただし、心不全症状の変動や加齢による機能低下を考慮すると、継続的な観察と環境調整が必要な状態である。感染予防に関しては、情報不足により充足状況の評価が困難であり、追加の情報収集が必要である。
看護問題の明確化
#心不全に伴う活動耐性低下に関連した転倒・外傷のリスク状態
事例の目次
【ヘンダーソン】心不全 入院3日目(0005)
1.正常に呼吸する
2.適切に飲食する
3.あらゆる排泄経路から排泄する
4.身体の位置を動かし、また良い姿勢を保持する
5.睡眠と休息をとる
6.適切な衣類を選び、着脱する
7.体温を生理的範囲内に維持する
8.身体を清潔に保ち、身だしなみを整え、皮膚を保護する
9.環境のさまざまな危険因子を避け、また他人を傷害しないようにする
10.自分の感情、欲求、恐怖あるいは気分を表現して他者とコミュニケーションを持つ
11.自分の信仰に従って礼拝する
12.達成感をもたらすような仕事をする
13.遊び、あるいはさまざまな種類のレクリエーションに参加する
14.正常な発達および健康を導くような学習をし、発見をし、あるいは好奇心を満足させる
看護計画
この記事の執筆者

・看護師と保健師免許を保有
・現場での経験-約15年
・プリセプター、看護学生指導、看護研究の経験あり
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