【ヘンダーソン】大腿骨頸部骨折 骨粗鬆症(0011)

ヘンダーソン

事例の要約

自宅玄関での転倒により右大腿骨頸部骨折を受傷し、人工骨頭置換術を施行した78歳女性の介入14日目の事例である。

この事例で勉強できること

大腿骨頸部骨折・転倒転落のアセスメント

今回の情報

基本情報

基本情報として、A氏は78歳の女性で、身長153cm、体重45kg(入院前から3kg減少)である。80歳の夫と2人暮らしで、キーパーソンは週2-3回の頻度で支援している車で30分の距離に住む長女(54歳)である。専業主婦で、地域の高齢者サークルの世話役を務めるなど社交的で活動的な生活を送っていた。性格は几帳面で規則正しい生活を心がけている。感染症の既往やアレルギーの情報は特になく、認知機能はMMSEが入院前29/30点から現在27/30点と軽度低下している。

病名

診断名は右大腿骨頸部骨折(Garden分類 type III)で、人工骨頭置換術を施行した。また、骨密度測定でT-score: -3.2の重度骨粗鬆症が判明している。

既往歴と治療状況

A氏の既往歴として、6年前より高血圧症があり、近医で降圧剤の内服治療を継続している。今回の入院時の精査の際に実施した骨密度測定でT-score: -3.2の重度骨粗鬆症が判明し、新たにアレンドロン酸35mg週1回とエルデカルシトール0.75μg連日投与を開始している。

入院から現在までの情報

入院からの経過として、自宅玄関で転倒し救急搬送された。翌日に人工骨頭置換術を施行し、術後経過は概ね良好であった。第3病日から端座位訓練を開始したが、疼痛への不安から積極的な離床に躊躇する様子がみられた。第5病日から立位訓練、第7病日から歩行器歩行訓練と段階的にリハビリテーションを進め、現在は歩行器使用下で5m程度の歩行が可能となっている。しかし、日常生活での移動は車椅子を使用し、全介助を要する状態が続いている。

バイタルサイン

来院時にはBP 146/88mmHg、HR 88/min、BT 36.8℃であり、現在はBP 128/74mmHg、HR 76/min、BT 36.6℃と安定している。

食事と嚥下状態

入院前は夫と共に1日3食を規則正しく摂取し、水分も1日1.2L程度を確保していた。現在は配膳の介助が必要だが摂取は自立しており、嚥下機能に問題はない。ただし、水分摂取量は1日800ml程度まで減少している。飲酒は月1-2回の機会飲酒程度で、喫煙歴はない。

排泄

入院前は自立していた。現在は車椅子で多目的トイレまで移動し、看護師の介助を要する状態である。術後の活動量低下に伴う便秘に対してセンノシド12mgを使用している。

睡眠

入院前は規則正しい生活を送り、睡眠に問題はなかった。現在は「痛くて眠れない」との訴えがあり、疼痛による睡眠障害が見られている。眠剤の使用については記載がない。

視力・聴力・知覚・コミュニケーション・信仰

視力・聴力は特に問題なく、日常会話でのコミュニケーションに支障はない。知覚は右大腿部の術後疼痛があるものの、その他の部位に異常はない。社交的な性格で意思疎通は良好である。信仰はキリスト教である。

動作状況

入院前の動作状況として、A氏は全ての日常生活動作が自立しており、杖なしでの独歩が可能で、自由に外出もできていた。入浴、排泄、着替えなども介助を要さず、転倒歴はなかった。
現在の動作状況としては、歩行器を使用して5m程度の歩行は可能だが、日常的な移動は看護師の全介助で車椅子を使用している。ベッドから車椅子への移乗も看護師の介助を必要とし、トイレでの排泄動作も介助を要する。入浴は全介助でのシャワー浴となっており、衣類の着脱も看護師の介助が必要である。今回の転倒は自宅玄関での出来事であり、これが初めての転倒である。疼痛への不安から積極的な動作に躊躇する様子が見られ、慎重な動作訓練が必要な状況である。

内服中の薬
  • アレンドロン酸 35mg 週1回 朝食前
  • エルデカルシトール 0.75μg 1日1回 朝食後
  • ロキソプロフェン 60mg 頓用(疼痛時、1日1回程度の使用)
  • センノシド 12mg 1日1回 眠前(排便コントロール目的)
  • アムロジピン 5mg 1日1回 朝食後(高血圧症)

服薬状況: 内服管理は看護師管理となっている。入院前は自己管理していたが、現在は術後の安静度や疼痛管理の観点から、看護師が配薬し、内服確認を行っている。疼痛に対するロキソプロフェンは、主に夕方から夜にかけて1日1回程度の使用頻度である。

検査データ
検査項目基準値入院時術後7日目(現在)
WBC4.0-9.0×10³/μL8.27.8
RBC3.8-4.8×10⁶/μL3.53.2
Hb12.0-16.0g/dL10.89.2
Ht36.0-48.0%32.430.1
PLT15.0-35.0×10⁴/μL22.420.8
TP6.7-8.3g/dL6.25.8
Alb3.8-5.2g/dL3.63.0
AST10-40U/L2832
ALT5-45U/L2428
BUN8-20mg/dL1824
Cr0.4-1.1mg/dL0.80.9
Na135-145mEq/L140134
K3.5-5.0mEq/L4.24.0
Cl98-108mEq/L10296
Ca8.8-10.1mg/dL9.28.4
CRP0-0.3mg/dL2.61.2
今後の治療方針と医師の指示

今後の治療方針として、疼痛管理の最適化による活動性の向上を図りながら、リハビリテーションを段階的に進めていく。低栄養と貧血の改善のため、栄養指導と食事内容の調整を行う。術創部は発赤や浸出液もなく経過良好で、抜糸も完了している。骨粗鬆症に対する薬物療法を継続し、再転倒予防に向けた指導も実施する。医師からは、疼痛の程度に応じて鎮痛薬の調整を行うこと、1日1000ml以上の水分摂取を確保すること、リハビリテーションは患者の状態に合わせて進めることが指示されている。退院に向けては介護保険サービスの導入を検討し、自宅での生活環境の調整も必要とされている。

本人と家族の想いと言動

本人と家族の想いについて、A氏は「痛くて眠れない」「早く家に帰りたい」「夫に迷惑をかけて申し訳ない」と発言しており、疼痛による不安と家族への負担を心配する様子が見られる。夫は毎日面会に来ており、「私も年だから介護は不安だ」と話すものの、「できる限り支えていきたい」という思いを示している。長女は週2-3回の面会時に、「できるだけ手伝いに来るようにします」と話し、両親の支援について前向きな姿勢を見せている。今後の生活への不安を家族で共有しながらも、協力して支援していこうとする様子が見られる。

この記事の執筆者

なっちゃん
なっちゃん

・看護師と保健師免許を保有
・現場での経験-約15年
・プリセプター、看護学生指導、看護研究の経験あり

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