【ヘンダーソン】関節リウマチ 入院4日目(0017)| 8.身体を清潔に保ち、身だしなみを整え、皮膚を保護する

ヘンダーソン

事例の要約

これは関節リウマチと診断され、疼痛コントロール目的で入院となった60代女性の入院4日目の事例です。入院後、疼痛管理と関節機能の評価が行われている段階であり、今後の治療方針の確立と退院に向けた準備が進められている状況である。11月15日介入。

8.身体を清潔に保ち、身だしなみを整え、皮膚を保護する

A氏は65歳の女性で、関節リウマチの診断で入院中である。自宅での入浴状況については具体的な記載がないため、入浴頻度や方法に関する情報収集が必要である。ただし、入院前は自宅での日常生活動作は自立していたという情報から、入浴に関しても基本的には自立していたと推測される。一方で、関節痛により動作時間が延長していたことを考慮すると、入浴動作にも時間を要していた可能性がある。特に関節リウマチの症状として両手指の朝のこわばりと関節痛があることから、洗体や洗髪などの細かい動作に困難を感じていた可能性が高い。

入院中の入浴については、看護師見守りのもとシャワー浴を実施している。浴室内での移動は自立しているが、洗体時に手指関節の痛みを訴えることがある。この状況から、安全面への配慮から看護師の見守りが必要であるが、基本的な入浴動作は自分で行える能力を有していると判断できる。ただし、手指関節の痛みにより、十分な洗浄ができていない可能性や、疲労感を生じる可能性があるため、必要に応じて部分的な介助を検討する必要がある。

ADLについては、入院前は自立していたが、関節痛により動作時間が延長していた。入院中も病棟内の移動は独歩で可能であり、手すりがあれば階段の昇降もできる。移乗動作もベッドから椅子、トイレへの移動などは問題なく行えている。しかし、朝方は特に関節のこわばりがあるため、起き上がりや立ち上がりに時間を要する。こうした状況は入浴動作にも影響を与えており、特に起床後すぐの入浴は困難が予想されるため、時間帯の配慮が必要である。

麻痺の所見はなく、運動機能の制限は関節痛とこわばりによるものである。このことから、入浴動作の問題は神経学的な障害ではなく、疼痛管理によって改善する可能性がある。関節リウマチの薬物療法が効果を示し、疼痛コントロールが良好になれば、入浴動作の自立度も向上すると期待される。

鼻腔、口腔の保清、爪に関する具体的な情報は得られていないため、これらについても詳細な情報収集が必要である。特に関節リウマチの症状として手指関節の痛みがあることから、爪切りや口腔ケアなど細かい手指の動きを要する清潔ケアに困難を生じている可能性がある。また、メトトレキサートやステロイド製剤の服用により口腔内粘膜障害や感染のリスクが高まることも考慮し、口腔内の状態確認を行う必要がある。

尿失禁、便失禁の有無については、排泄に関する情報から、現在も自力でトイレまで歩行し排泄を行っている。排尿回数は日中5〜6回、夜間1回程度であり、排便は入院後やや不規則となり2日に1回程度となっているが、失禁の記載はない。これらの情報から、現時点では尿失禁、便失禁はなく、排泄の自己コントロールは保たれていると判断できる。ただし、夜間の排尿回数が1回あることから、夜間のトイレ移動による転倒リスクには注意が必要である。

A氏は65歳であり、加齢に伴う皮膚の変化も考慮する必要がある。高齢者の皮膚は一般的に乾燥しやすく、皮脂分泌の減少、皮膚のバリア機能の低下、皮膚の再生能力の低下などの特徴がある。こうした加齢変化に関節リウマチによる活動制限が加わることで、皮膚トラブルのリスクが高まる可能性がある。特に、入浴後の保湿ケアや、長時間同じ姿勢による皮膚への圧迫を避けるなどの予防的ケアが重要である。

必要な看護介入としては、まず入浴環境の調整が挙げられる。滑り止めマットの使用、手すりの設置、シャワーチェアの活用など、安全に入浴できる環境を整える必要がある。また、関節痛に配慮した入浴方法の工夫として、入浴前の温罨法による関節の温め、長柄ブラシや軽量な洗体用品の使用、入浴時間や温度の調整などが有効である。

さらに、口腔ケアや爪のケアなど、細かい動作が必要な清潔ケアについては、自助具の紹介や介助の必要性を評価し、必要に応じて支援を行うことが重要である。特に、免疫抑制剤を使用しているため、感染予防の観点からも適切な清潔ケアの実施と指導が必要である。

皮膚の状態観察も重要であり、特に関節部分や圧迫部位の皮膚状態を定期的に確認し、発赤や損傷がないか観察する必要がある。乾燥や発赤が見られる場合は、適切な保湿剤の使用や体位変換の指導を行うことが重要である。

退院に向けては、自宅での入浴環境の評価と調整が必要である。夫への介助方法の指導や、必要な福祉用具の紹介、住環境の調整(手すりの設置など)について検討し、安全かつ自立した清潔ケアができるよう支援することが重要である。

以上のことから、A氏の身体を清潔に保ち、身だしなみを整え、皮膚を保護するというニーズは、現時点では看護師の見守りを必要とするものの、基本的な動作は自立しているため部分的に充足されていると判断できる。しかし、関節痛による洗体動作の困難さや、細かい清潔ケア(口腔ケア、爪切りなど)に関する情報が不足しているため、これらの領域でのニーズが十分に充足されているかは判断できない。そのため、詳細な情報収集と観察を継続し、個別性に応じた清潔ケア支援を行うことで、このニーズの充足を目指す必要がある。特に、関節リウマチの疾患管理と並行して、疼痛コントロールの強化や動作の工夫、環境調整などの介入を通じて、A氏の清潔ケアの自立度を高める支援が重要である。

看護問題の明確化

#疾患に伴う関節痛と可動域制限に関連したセルフケア不足(入浴)

事例の目次

この記事の執筆者

なっちゃん
なっちゃん

・看護師と保健師免許を保有
・現場での経験-約15年
・プリセプター、看護学生指導、看護研究の経験あり

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