本事例の要約
これは関節リウマチと診断され、疼痛コントロール目的で入院となった60代女性の入院4日目の事例です。入院後、疼痛管理と関節機能の評価が行われている段階であり、今後の治療方針の確立と退院に向けた準備が進められている状況である。11月15日介入。
4.身体の位置を動かし、また良い姿勢を保持する
A氏は65歳の女性で、関節リウマチと診断され入院中である。入院前のADLは自宅内での動作は自立していたが、関節痛により動作時間がやや延長していた。現在の歩行は関節痛のため緩慢であるが、病棟内は独歩で移動可能である。手すりがあれば階段の昇降も可能であるが、膝関節痛のため降りる際に特に痛みを訴える。移乗動作はベッドから椅子、トイレへの移動などは問題なく行えている。ただし、朝方は特に関節のこわばりがあるため、起き上がりや立ち上がりに時間を要する。排尿・排便は自立しており、トイレまでの移動、衣服の上げ下げ、後始末まで自分で行えている。ただし、ボタンの着脱など細かい動作に時間がかかることがある。入浴は看護師見守りのもとシャワー浴を実施している。浴室内での移動は自立しているが、洗体時に手指関節の痛みを訴えることがある。衣類の着脱は特に上着のボタンやファスナーの操作、靴下の着脱に時間がかかるが自力で行っている。麻痺はなく、骨折の既往についての記載もない。
ドレーンについての記載はない。点滴に関する情報も記載されていないが、入院後に薬物調整が行われているため、点滴による投薬が行われている可能性がある。この情報については追加の確認が必要である。
A氏の生活習慣は、入院前は自宅で夫と二人暮らしであり、退職前は小学校教師として勤務していた。几帳面で丁寧な性格であり、常に自分でできることは自分でやりたいという自立心の強い方である。睡眠は入院前は22時就寝、6時起床の規則正しい生活を送っていたが、関節痛が強くなってからは、夜間痛で中途覚醒することが増えていた。現在は入院環境への適応と夜間の関節痛により入眠困難を訴えており、眠前に頓用でゾルピデム5mgを服用している。認知機能は正常で、日常会話や指示理解に問題はなく、見当識障害も認めない。自立心が強く積極的に行動する傾向があるが、関節症状による動作制限がある点と睡眠薬使用による夜間の覚醒時の判断力低下の可能性を考慮する必要がある。
ADLに関連した呼吸機能については、来院時のSpO2は98%(室内気)、現在のSpO2は99%(室内気)と良好である。呼吸数も現在16回/分と安定している。日常生活動作中の呼吸状態についての具体的な記載はないが、酸素化は良好に維持されており、呼吸機能がADLを制限している様子はない。しかし、関節リウマチ患者では肺病変を合併する可能性があるため、活動時の呼吸状態や息切れの有無などの詳細な評価が必要である。また、退職前の職業が小学校教師であり、日常的に話す機会が多かったことが推測されるため、発声や会話に関する評価も有用である。
転倒転落のリスク評価に関しては、A氏は関節リウマチによる関節痛と朝のこわばりがあり、これらが転倒リスクを高める要因となる。特に朝方は関節のこわばりにより動作が制限されるため、起床時の転倒リスクが高いと考えられる。また、夜間は睡眠薬(ゾルピデム)を服用しており、夜間覚醒時の判断力低下や身体バランスの不安定さによる転倒リスクも懸念される。しかし、現時点での転倒歴はなく、認知機能は正常で環境認識や危険予知能力は保たれていると考えられる。浴室内では看護師の見守りのもとでシャワー浴を実施しており、適切な安全管理が行われている。
A氏の関節リウマチは発症から約3ヶ月であり、現在は疼痛コントロールと薬物療法の調整中である。疼痛は薬物療法により軽減傾向にあり、安静時NRS 2/10、動作時NRS 5/10となっている。特に朝のこわばりについては時間が短縮しており、30分程度で改善するようになってきているが、依然としてADLに影響を与えている。また、2年前に右膝変形性関節症と診断されており、これも移動時の痛みや動作制限の要因となっている。
加齢に伴う身体機能の変化も考慮する必要がある。A氏は65歳であり、加齢による筋力低下や関節の柔軟性の減少、反応速度の低下などが生じている可能性がある。特に関節リウマチによる関節症状と加齢変化が複合することで、身体機能制限がより顕著になることが考えられる。また、骨粗鬆症の診断もあり、カルシウム製剤の内服治療中であることから、骨折リスクが高まっていることも考慮する必要がある。
看護介入としては、まず疼痛コントロールの継続と評価が重要である。関節痛が軽減されることで身体活動が促進され、ADLの維持・向上につながる。また、リハビリテーション科による関節可動域訓練の継続も重要であり、日常生活での自主トレーニングの指導も必要である。転倒予防のための環境整備として、ベッド周囲の整理整頓、夜間の足元灯の設置、浴室内の滑り止めマットの使用、手すりの活用などが考えられる。特に朝方の関節こわばりが強い時間帯は、見守りや声掛けを強化し、無理な動作を避けるよう指導することが重要である。また、睡眠薬使用中の夜間の覚醒時には、必要に応じてナースコールを使用するよう説明することも必要である。
A氏は自立心が強く「自分のことは自分でできるようになりたい」という想いを持っているため、この意欲を尊重しながらも安全な活動を促進することが重要である。また、「このまま悪化して家事や趣味の編み物ができなくなるのではないか」という不安も持っており、心理的サポートも併せて提供する必要がある。
A氏の「身体の位置を動かし、また良い姿勢を保持する」というニーズは部分的に充足していると考えられる。基本的なADLは自立しており、病棟内の移動も独歩で可能である。しかし、関節痛による動作制限があり、特に朝方の関節こわばりや階段降下時の膝関節痛など、特定の状況下での身体機能制限が認められる。また、転倒リスクも存在するため、安全な移動や姿勢保持に関するニーズは完全には充足していないと言える。関節リウマチの進行や薬物療法の効果、リハビリテーションの進捗によって、身体機能は変化していくため、継続的な評価と個別的な看護介入の調整が必要である。
看護問題の明確化
#関節リウマチに伴う関節痛・朝のこわばりと睡眠薬使用に関連した転倒転落リスク状態
#関節リウマチに伴う関節痛と朝のこわばりに関連した活動性の低下
事例の目次
【ヘンダーソン】関節リウマチ 入院4日目(0017)| 今回の情報
1.正常に呼吸する
2.適切に飲食する
3.あらゆる排泄経路から排泄する
4.身体の位置を動かし、また良い姿勢を保持する
5.睡眠と休息をとる
6.適切な衣類を選び、着脱する
7.体温を生理的範囲内に維持する
8.身体を清潔に保ち、身だしなみを整え、皮膚を保護する
9.環境のさまざまな危険因子を避け、また他人を傷害しないようにする
10.自分の感情、欲求、恐怖あるいは気分を表現して他者とコミュニケーションを持つ
11.自分の信仰に従って礼拝する
12.達成感をもたらすような仕事をする
13.遊び、あるいはさまざまな種類のレクリエーションに参加する
14.正常な発達および健康を導くような学習をし、発見をし、あるいは好奇心を満足させる
看護計画
この記事の執筆者

・看護師と保健師免許を保有
・現場での経験-約15年
・プリセプター、看護学生指導、看護研究の経験あり
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