本事例の要約

55歳女性の胃癌（stageⅡA）症例。

職場健診を契機に発見され、7月8日に胃全摘術およびルーY法を施行。
既往に高血圧、脂質異常症あり。

術後経過は良好で、術後5日目より氷片摂取開始、7日目から流動食を開始している。点滴は減量中で、疼痛コントロール良好、ADLも病棟内歩行が自立している。

退院は術後14日目を予定。早期の職場復帰を希望する患者に対し、食事への不安があり、夫は協力的で食事管理に関心が高い。今後は合併症予防に努めながら、段階的な食事進行と活動範囲の拡大を図り、補助化学療法の必要性を検討する方針である。

8.身体を清潔に保ち、身だしなみを整え、皮膚を保護する

A氏は術後7日目であり、全身清拭による清潔ケアを実施している。清潔の保持は感染予防に重要であり、不十分な場合は創部感染のリスクが高まる。また、発汗や皮膚の汚れが残ることで、特に圧迫部位や皮膚の重なる部分において皮膚トラブル（発赤、湿疹、真菌感染など）を引き起こす可能性がある。創部周囲の湿潤は感染リスクを高めるため、発汗の状態を確認する必要がある。

清拭の頻度や実施状況、全身の皮膚状態についての情報が不足しているため確認が必要である。特に創部周囲の皮膚状態（発赤・腫脹・疼痛・熱感の有無）や、清拭時の疼痛の程度を評価し、疼痛がある場合は早期に頓服薬を使用するように支援する必要がある。

また、会陰部の清潔保持は尿路感染や皮膚炎の予防に重要である。排泄後の陰部洗浄の実施状況や、トイレでのウォシュレット使用の可否について情報収集が必要であり、清潔が保てない場合は適切なケア方法の指導が必要である。これらの観察と支援を通じて、清潔保持による合併症予防を図る必要がある。

術後10日目からシャワー浴が許可される予定だが、創部を濡らさないように医師からの指示がある。初回は看護師が介助し、安全な方法を指導する必要がある。特に創部の保護方法について具体的な説明を行い、点滴ラインはビニール等で保護して濡れないようにする介助が必要である。シャワー浴中はライン抜去の危険があるため、こするなどしないように指導が必要である。また、疲労や筋力低下に伴い、転倒のリスクもあるため、初回は看護師が付き添い、安全な入浴方法を指導する必要がある。

洗面や口腔ケアについても、実施状況や介助の必要性について確認が必要である。嘔気の有無や疲労度によって、セルフケアに支障が出ている可能性もある。また、爪切りや整容、洗髪など、その他の清潔ケアに関する情報も得られていないため、確認と必要な支援の検討が必要である。

以上のことから、身体の清潔保持に関するニーズは、基本的なケアは実施できているものの、必要な情報が不足しており、術後の状態に応じた適切な支援が必要な状態である。特にシャワー浴開始に向けて、安全な方法の指導と支援体制の整備が必要である。