本事例の要約
アルツハイマー型認知症と診断され5年が経過した83歳女性が、自宅で転倒し入院となった事例である。30年間小学校教諭として勤務していた患者は、夫の他界後に認知症症状が急速に進行し、長男夫婦との同居を機に医療機関を受診していた。入院後は環境の変化により見当識障害が悪化し、教師時代の記憶と現実が混在した発言が増加。さらに誤嚥性肺炎を合併し、食事摂取量が著しく低下している。長男の妻が献身的にケアを続けているものの、介護負担が限界に近づいており、今後の療養方針の検討が必要な状況である。20XX年1月15日入院、介入7日目の事例である。
13.遊び、あるいはさまざまな種類のレクリエーションに参加する
A氏は退職後、趣味として園芸を楽しんでいたが、認知症の進行とパーキンソニズムの出現により、徐々に活動範囲が制限されてきている。特に認知機能の低下は顕著であり、HDS-Rの点数が3年間で22点から12点まで低下していることから、趣味活動の継続や新たな余暇活動の開始が困難な状況にある。
運動機能面では、パーキンソニズムの影響により小刻み歩行がみられ、屋外では杖を使用している状態である。入院前は室内での歩行は自立していたものの、3ヶ月前に転倒して右膝を打撲しており、活動への不安感が生じている可能性がある。また、現在は誤嚥性肺炎の治療のためベッド上での安静が必要な状態であり、活動範囲が著しく制限されている。
認知機能については、見当識障害が顕著であり、「ここは学校?」「授業の準備をしないと」などの発言が頻回にみられる。一方で、教師時代の長期記憶は比較的保たれており、その時期の話をすると表情が明るくなることから、この記憶を活用したレクリエーションの提供が効果的である可能性がある。
日常生活動作については、入院前は更衣や排泄などの基本的な動作は自立していたが、見守りや一部介助を要する状況であった。現在は誤嚥性肺炎の治療により、ベッド上での生活を余儀なくされており、活動性の低下や廃用症候群のリスクが高まっている。また、日中の覚醒が悪く、夜間も環境の変化により睡眠リズムが乱れている状況は、余暇活動への参加意欲にも影響を与えている可能性がある。
加齢による視力・聴力の変化については、軽度の老眼があり読書時には眼鏡を使用しているが、普通の会話は可能な程度である。これらの感覚機能は、レクリエーション活動の選択や実施方法を検討する上で考慮すべき要素となる。
看護介入として、以下の取り組みが重要である。まず、日中の覚醒を促し、生活リズムを整えることで、レクリエーション活動への参加機会を確保する。また、ベッドサイドでも実施可能な活動として、教師時代の思い出話を取り入れた回想法や、簡単な手工芸、音楽療法などを検討する。その際、本人の認知機能や身体状態に合わせて活動の難易度を調整し、達成感が得られるよう配慮する必要がある。
リハビリテーション科と連携し、ベッドサイドでの運動プログラムを実施することで、身体機能の維持・改善を図ることも重要である。また、長男夫婦の面会時には、本人が以前楽しんでいた園芸や趣味活動について具体的な情報収集を行い、退院後の活動再開に向けた支援を検討する必要がある。
さらに、活動中の表情や発言、参加意欲などを継続的に観察・記録し、効果的なレクリエーションプログラムの立案に活用することが求められる。特に、認知機能の状態や疲労度に応じて活動時間や内容を調整する必要があり、バイタルサインや呼吸状態の観察も欠かせない。
このニーズは現在充足されていない。誤嚥性肺炎による活動制限、認知機能の低下、生活リズムの乱れにより、レクリエーション活動への参加が著しく制限されている状況である。本人の残存機能や興味・関心を活かした適切な活動プログラムの提供と、それを可能にする心身の状態の改善が必要である。
看護問題の明確化
#誤嚥性肺炎と認知症による活動制限に関連したレクリエーション活動の制限
事例の目次
【ヘンダーソン】アルツハイマー型認知症 入院7日目(0007)| 今回の情報
1.正常に呼吸する
2.適切に飲食する
3.あらゆる排泄経路から排泄する
4.身体の位置を動かし、また良い姿勢を保持する
5.睡眠と休息をとる
6.適切な衣類を選び、着脱する
7.体温を生理的範囲内に維持する
8.身体を清潔に保ち、身だしなみを整え、皮膚を保護する
9.環境のさまざまな危険因子を避け、また他人を傷害しないようにする
10.自分の感情、欲求、恐怖あるいは気分を表現して他者とコミュニケーションを持つ
11.自分の信仰に従って礼拝する
12.達成感をもたらすような仕事をする
13.遊び、あるいはさまざまな種類のレクリエーションに参加する
14.正常な発達および健康を導くような学習をし、発見をし、あるいは好奇心を満足させる
看護計画
この記事の執筆者

・看護師と保健師免許を保有
・現場での経験-約15年
・プリセプター、看護学生指導、看護研究の経験あり
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