【ヘンダーソン】アルツハイマー型認知症 入院7日目(0007)| 9.環境のさまざまな危険因子を避け、また他人を傷害しないようにする

ヘンダーソン

事例の要約

アルツハイマー型認知症と診断され5年が経過した83歳女性が、自宅で転倒し入院となった事例である。30年間小学校教諭として勤務していた患者は、夫の他界後に認知症症状が急速に進行し、長男夫婦との同居を機に医療機関を受診していた。入院後は環境の変化により見当識障害が悪化し、教師時代の記憶と現実が混在した発言が増加。さらに誤嚥性肺炎を合併し、食事摂取量が著しく低下している。長男の妻が献身的にケアを続けているものの、介護負担が限界に近づいており、今後の療養方針の検討が必要な状況である。20XX年1月15日入院、介入7日目の事例である。

9.環境のさまざまな危険因子を避け、また他人を傷害しないようにする

A氏は認知機能の著明な低下を認めており、直近の長谷川式簡易知能評価スケール(HDS-R)では12点と、過去3年間で22点から段階的に低下している。現在の入院環境において「ここは学校?」「授業の準備をしないと」などの発言が頻回にみられ、見当識障害が顕著である。環境の変化により、夜間の睡眠リズムも乱れており、せん妄のリスク要因となっている。

入院前は室内での歩行は自立していたものの、パーキンソニズムによる小刻み歩行がみられ、屋外では杖を使用していた。また、入院3ヶ月前には自宅で転倒し右膝を打撲した既往があり、今回の入院の契機となった転倒と合わせて、転倒リスクが高い状態にある。現在は誤嚥性肺炎の治療のためベッド上での安静が必要であり、経鼻カニューレによる酸素投与や点滴ルートが設置されている状況である。これらの医療機器やルート類は、認知機能低下により自己抜去のリスクがある。

感染管理の観点からは、誤嚥性肺炎に対して抗生剤治療を実施中である。白血球数は10800/μLと高値を維持しており、CRPも2.6mg/dLと炎症反応が持続している。易感染状態の要因として、高齢であることに加え、アルブミン値2.8g/dLと低栄養状態にあることが挙げられる。現在の面会制限や手指衛生に関する具体的な情報は不足しているが、感染予防の観点から適切な管理が必要である。

皮膚の状態については、現在オムツを使用しており、失禁による皮膚トラブルのリスクがある。また、ベッド上での活動制限により褥瘡発生のリスクも存在する。加齢による皮膚の脆弱性に加え、低栄養状態や発熱による発汗の増加は、皮膚損傷のリスクを高める要因となっている。

必要な看護介入として、まず認知機能低下に対する環境整備が重要である。ベッド柵の適切な使用、医療機器やルート類の固定方法の工夫、そして夜間の適切な照明管理が必要である。転倒予防については、移動時の見守りや介助の徹底、必要物品の配置の工夫が求められる。感染予防に関しては、標準予防策の徹底、手指衛生の確実な実施、面会者への適切な指導が必要である。また、皮膚観察を定期的に行い、早期に異常を発見することも重要である。

これらの状況を総合的に評価すると、環境の危険因子を回避し安全を確保するというニーズは現時点では十分に充足されていない。認知機能の低下による危険認識の不足、パーキンソニズムによる運動機能障害、感染症の存在など、複数のリスク要因が重なっている状態である。今後は、病状の改善に伴う活動範囲の拡大を見据えながら、段階的な安全対策の見直しと、家族を含めた包括的な支援体制の構築が必要である。

看護問題の明確化

#認知機能低下に関連した転倒・転落のリスク状態
#誤嚥性肺炎に関連した感染リスク状態

事例の目次

この記事の執筆者

なっちゃん
なっちゃん

・看護師と保健師免許を保有
・現場での経験-約15年
・プリセプター、看護学生指導、看護研究の経験あり

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