【ヘンダーソン】アルツハイマー型認知症 入院7日目(0007)| 4.身体の位置を動かし、また良い姿勢を保持する

ヘンダーソン

事例の要約

アルツハイマー型認知症と診断され5年が経過した83歳女性が、自宅で転倒し入院となった事例である。30年間小学校教諭として勤務していた患者は、夫の他界後に認知症症状が急速に進行し、長男夫婦との同居を機に医療機関を受診していた。入院後は環境の変化により見当識障害が悪化し、教師時代の記憶と現実が混在した発言が増加。さらに誤嚥性肺炎を合併し、食事摂取量が著しく低下している。長男の妻が献身的にケアを続けているものの、介護負担が限界に近づいており、今後の療養方針の検討が必要な状況である。20XX年1月15日入院、介入7日目の事例である。

4.身体の位置を動かし、また良い姿勢を保持する

A氏の日常生活動作(生活動作)について、入院前は室内歩行は自立していたものの、パーキンソニズムの影響により小刻み歩行がみられ、屋外では杖を使用していた。移乗動作は自立していたが、動作が緩慢で見守りを要していた。排泄は日中であれば自力でトイレまで移動可能であり、入浴は週3回、長男の妻の介助で実施していた。更衣は自立していたが、着衣の順番を間違えることがあり見守りを要していた。現在は誤嚥性肺炎の治療のため、ベッド上での安静が必要な状態となっており、生活動作の自立度が著しく低下している

麻痺の有無については、明確な麻痺の記載はないが、パーキンソニズムによる動作の緩慢さと筋強剛がみられている。加齢による筋力低下も加わり、円滑な動作の遂行に影響を及ぼしている。骨折については、現時点での骨折はないが、3ヶ月前に自宅で転倒し右膝を打撲した既往がある。今回の入院の契機となった転倒では、幸い骨折には至っていない。

医療機器類については、セフトリアキソン注射用1gを1日2回点滴静注で投与中であり、酸素を経鼻カニューレで2L/分投与中である。点滴ラインや酸素チューブの存在が、体動時の制限因子となっている可能性がある。

生活習慣については、これまで長男夫婦と3人暮らしで、趣味の園芸を楽しむなど、ある程度活動的な生活を送っていた。しかし、認知機能の低下が進行しており、認知症重症度評価(HDS-R)は3年前の22点から直近では12点まで低下している。環境の変化により見当識障害が増悪し、「ここは学校?」「授業の準備をしないと」などの発言が頻回にみられ、現状認識が十分でない状態である。

呼吸機能については、誤嚥性肺炎により呼吸状態が悪化しており、呼吸数24回/分、酸素飽和度93%(酸素2L/分投与下)と努力呼吸がみられる。両側下肺野で湿性ラ音を聴取しており、体位変換時の呼吸状態の変化に注意が必要である。

転倒転落のリスク要因として、以下の点が挙げられる。まず、加齢による筋力低下とパーキンソニズムによる動作の緩慢さ、小刻み歩行がある。認知機能の低下により、現状認識や危険認識が不十分である。さらに、誤嚥性肺炎による全身状態の悪化や、点滴ライン、酸素チューブの存在も転倒リスクを高める要因となっている。過去3ヶ月以内に転倒歴があることも、高リスク要因として考慮する必要がある。

必要な看護介入として、以下の対応が重要である。体位変換は2時間ごとに実施し、褥瘡予防に努める。体位変換時は呼吸状態を観察し、必要に応じて酸素流量を調整する。ベッド柵は4点で設置し、転落防止に努める。認知機能低下に配慮し、見当識を促す声かけや環境整備を行う。点滴ラインや酸素チューブの整理と固定を適切に行い、自己抜去や転倒の予防に努める。

継続的な観察が必要な項目として、呼吸状態の変化、意識レベル、見当識の状態、皮膚の状態(特に褥瘡好発部位)、点滴刺入部の状態などが挙げられる。また、リハビリテーション開始後は、筋力や活動度の変化についても注意深く観察を続ける必要がある。

以上のアセスメントから、A氏の身体の位置と姿勢の保持に関するニーズは充足されていない状態にあると判断される。その理由として、誤嚥性肺炎による活動制限、パーキンソニズムによる動作障害、認知機能低下による現状認識の不足、高い転倒リスクが挙げられる。これらの問題に対する包括的な看護介入と継続的な観察が必要である。

看護問題の明確化

#パーキンソニズムと認知機能低下に関連した転倒・転落のリスク状態
#誤嚥性肺炎に関連した活動耐性の低下

事例の目次

この記事の執筆者

なっちゃん
なっちゃん

・看護師と保健師免許を保有
・現場での経験-約15年
・プリセプター、看護学生指導、看護研究の経験あり

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