【ヘンダーソン】慢性心不全 急性増悪[高血圧・糖尿病あり](0023)| 12.達成感をもたらすような仕事をする

ヘンダーソン

事例の要約

慢性心不全を基礎疾患に持つ患者が、急性増悪により救急搬送され入院した事例。患者は高血圧症と2型糖尿病の既往があり、自宅で突然の呼吸困難と胸部不快感を自覚し救急要請した。入院後は心不全治療とともに、患者の日常生活動作の拡大と再発予防に向けた指導を行っている。介入日は11月15日、入院後5日目である。

12.達成感をもたらすような仕事をする

A氏は72歳の男性で、元会社員として5年前に定年退職している。現在の社会的役割としては、家庭内での役割が中心となっていると推測されるが、詳細な情報は提供されていない。A氏は「趣味の庭仕事や散歩を続けたい」という希望を持っており、これらの活動が現在のA氏にとって達成感や満足感をもたらす重要な活動になっていると考えられる。また、「仕事や趣味の付き合い」という記述から、退職後も何らかの仕事や社会的活動、あるいは趣味を通じた交流を継続していることが推測される。

入院については、慢性心不全の急性増悪により緊急入院となっており、これまでの心不全による入院歴は2回あり、前回の入院は1年前である。現在の入院は約2週間の予定で、退院後の生活指導と服薬指導を継続中である。入院という環境変化により、A氏の日常的な活動や役割が一時的に制限されている状態である。

疾患が仕事や役割に与える影響としては、慢性心不全、高血圧症、2型糖尿病、慢性腎臓病という複数の慢性疾患を抱えていることが、日常生活や活動に制限をもたらしている可能性がある。特に「ここ半年間は仕事や趣味の付き合いで塩分制限や水分制限が守れず、また暑さによる食欲低下で服薬が不規則となり、1週間前から徐々に呼吸困難感と下肢浮腫が増悪していた」という記述から、社会的活動や趣味の交流が疾患管理と両立できていない状況がうかがえる。また、階段昇降や長距離歩行での息切れが出現することは、外出や活動範囲の制限につながり、社会参加や趣味活動の充実度に影響を与える可能性がある。

A氏は几帳面で真面目だが、自分の体調管理には無頓着な一面もあると記載されている。このような性格特性は、仕事や役割に対する姿勢と疾患管理の優先順位に影響を与えている可能性がある。真面目で几帳面な性格は責任感の強さを示唆し、役割遂行への意欲は高いと推測されるが、それが過度になると自己の健康管理がおろそかになる可能性がある。

A氏は72歳と高齢であり、加齢に伴う身体機能の変化が活動能力に影響を与えている。高齢者は筋力や持久力の低下、関節の柔軟性の低下などにより、若年時に比べて活動の範囲や強度が制限される傾向がある。また、慢性疾患の有病率も高く、複数の疾患を抱えることで相互に影響し合い、活動制限が強まる場合がある。A氏の場合、心不全、糖尿病、高血圧、慢性腎臓病という複数の慢性疾患が相互に影響し合い、活動能力や役割遂行能力に影響を与えていると考えられる。

退職後の高齢者にとって、仕事に代わる新たな役割や活動の獲得は生活の質や自己効力感の維持に重要である。A氏の場合、趣味の庭仕事や散歩、友人との交流などが退職後の生きがいとなっている可能性があるが、心不全症状の悪化により一時的にこれらの活動が制限されている状態である。このような状況は、達成感や自己効力感の低下につながる可能性があり、心理的な支援も含めた看護介入が必要である。

看護介入としては、まずA氏の退職前後の仕事や役割、現在の日常生活における役割や活動、それらに対する価値観や意欲について詳細に情報収集することが重要である。特に、A氏にとって達成感や満足感をもたらす活動は何か、それらの活動が現在の健康状態でどの程度可能か、疾患管理とどのように両立させていくかについての理解を深める必要がある。

次に、A氏の現在の能力に応じた活動計画の立案と実施を支援することが重要である。入院中から段階的に活動範囲を拡大し、心臓リハビリテーションを通じて身体機能の回復を図ることで、退院後の活動再開に備えることができる。特に入院後1週間を目処に病棟内歩行から院内歩行へと拡大し、心臓リハビリテーションを週3回実施することが指示されていることから、これらの活動を通じて徐々に自信を回復できるよう支援することが効果的である。

また、疾患管理と日常活動の両立を図るための教育的介入も重要である。塩分制限(6g/日)と水分制限(1,000-1,200mL/日)の重要性について指導を継続しながら、外出時や社会活動時にもこれらの制限を守るための具体的な方法を提案することが効果的である。例えば、外食時のメニュー選択の工夫、水分摂取のタイミングと量の管理方法、服薬管理のための工夫(お薬カレンダーの活用など)について具体的に指導することで、疾患管理と社会活動の両立を支援することができる。

さらに、A氏の心理的な側面への支援も重要である。入院当初は「また同じことを繰り返してしまった」と落胆していたが、徐々に前向きな発言が増えてきていることから、この前向きな変化を強化し、自己効力感を高めるような関わりが有効である。具体的には、小さな目標設定とその達成の積み重ねを通じて成功体験を増やし、「できること」に焦点を当てた関わりを心がけることが重要である。

退院に向けては、A氏と妻が共に参加する退院支援カンファレンスを実施し、退院後の生活プランを具体的に検討することが重要である。その際、A氏の希望する活動(庭仕事や散歩など)をどのように再開し、どのような点に注意すべきかについて具体的に話し合うことで、退院後の生活への見通しを持つことができる。また、地域の訪問看護サービスの利用も検討されていることから、退院後のサポート体制についても情報提供と調整を行うことが重要である。

達成感をもたらすような仕事をするというニーズに関しては、現在のところ入院による活動制限のため十分に充足されているとは言えない状態である。A氏は定年退職しており職業としての仕事はないが、趣味の庭仕事や散歩、友人との交流など、達成感や満足感をもたらす活動への希望を持っている。しかし、心不全症状の悪化により一時的にこれらの活動が制限されており、ニーズの充足が十分でない状況である。今後、身体機能の回復とともに徐々に活動を再開し、疾患管理と両立させながら達成感をもたらす活動を継続できるよう支援することが重要である。そのためには、A氏の価値観や希望を尊重しつつ、現実的な活動計画の立案と実施、疾患管理との両立のための具体的な方法の指導、心理的な支援などを包括的に提供する必要がある。

看護問題の明確化

心不全症状による活動制限に関連した役割遂行の制限

事例の目次

この記事の執筆者

なっちゃん
なっちゃん

・看護師と保健師免許を保有
・現場での経験-約15年
・プリセプター、看護学生指導、看護研究の経験あり

看護の攻略部屋wiki

看護学生をお助け | 看護過程の見本 | 完全無料でコピー&ペースト(コピペ)OK


コメント

タイトルとURLをコピーしました