本事例の要約
慢性心不全を基礎疾患に持つ患者が、急性増悪により救急搬送され入院した事例。患者は高血圧症と2型糖尿病の既往があり、自宅で突然の呼吸困難と胸部不快感を自覚し救急要請した。入院後は心不全治療とともに、患者の日常生活動作の拡大と再発予防に向けた指導を行っている。介入日は11月15日、入院後5日目である。
11.自分の信仰に従って礼拝する
A氏の宗教は特になく、信仰に関する特別な配慮は必要としていないと記載されている。このことから、A氏は特定の宗教的信条に基づいた生活習慣や価値観を持っていないと考えられる。しかし、信仰がないことは必ずしも価値観や信念がないことを意味するわけではなく、A氏独自の人生観や価値観を持っている可能性がある。そのため、A氏の価値観や信念について、より詳細な情報収集が必要である。
既存の情報からA氏の価値観や生活信条について推測すると、「趣味の庭仕事や散歩を続けたい」「なるべく再入院せずに自宅で過ごしたい」という希望を持っていることから、A氏は自宅での日常生活の維持や趣味の継続を重視していると考えられる。これらはA氏の生活の質において重要な要素であり、支援においては尊重すべき価値観である。また、入院当初は「また同じことを繰り返してしまった」と落胆していたが、徐々に「今回こそは医師や看護師の言うことをしっかり守らないといけない」と前向きな発言が増えてきたことから、治療への前向きな態度や健康回復への意欲も持ち合わせている。
信仰による食事の制限については、特定の宗教的信条に基づく食事制限はないと考えられる。ただし、A氏は「好きな料理や飲み物を我慢するのは辛い」と述べており、食事や飲酒に関する楽しみが生活の質に重要な役割を果たしていることがうかがえる。塩分制限(6g/日)や水分制限(1,000-1,200mL/日)などの治療上の制限と、A氏の食生活に関する価値観とのバランスを考慮した支援が重要である。
治療法の制限に関しては、宗教的な理由による治療の制限はないと考えられる。A氏は現在、薬物療法や心臓リハビリテーションなどの標準的な心不全治療を受けており、これらの治療に対する拒否感や抵抗は特に記載されていない。ただし、「自分の体調管理には無頓着な一面もある」という性格特性から、治療の必要性や重要性の理解が不十分である可能性があり、この点に関する教育的介入が必要かもしれない。
A氏は72歳と高齢であることから、長年にわたり形成されてきた価値観や信念が強固になっている可能性がある。高齢者は若年者に比べて長い人生経験を通して培われた独自の価値観や人生観を持っていることが多く、それらは簡単には変わらない場合がある。また、加齢に伴い死生観が変化し、残された人生をどのように生きるかについての考えが明確になる場合もある。A氏の場合、再入院を避け自宅で過ごしたいという願いは、このような加齢に伴う価値観の変化を反映している可能性がある。
入院中の精神的支えは家族、特に妻の存在が大きく、面会時には表情が明るくなる傾向があるとの記載から、A氏にとって家族との関係性が重要な価値を持っていることが推測される。この家族との絆を尊重し、支援の中に取り入れることが重要である。
看護介入としては、まずA氏の価値観や信念についてさらに詳細に理解するための情報収集が必要である。具体的には、A氏が人生で大切にしてきたこと、現在の生活で重視していること、将来に対する希望や不安などについて、オープンな質問を通して理解を深めることが有効である。このような対話を通じて、A氏の内面的な支えとなる価値観や信念を把握し、それを尊重した看護計画を立案することが重要である。
また、A氏の価値観と治療方針とのバランスを考慮した支援も重要である。例えば、食事制限に関しては、単に制限を強いるのではなく、A氏の食の好みを理解した上で、可能な範囲で嗜好を満たしながら必要な制限を守れるような具体的な方法を一緒に考えることが有効である。このような過程を通じて、A氏が自己管理の意義を理解し、主体的に取り組む姿勢を育むことができる。
退院後の生活を見据えた介入も重要である。A氏は「趣味の庭仕事や散歩を続けたい」という希望を持っていることから、これらの活動が安全に継続できるよう、疾患管理と日常生活のバランスについて具体的な指導を行うことが必要である。例えば、心不全症状のモニタリング方法や、症状に応じた活動調整の方法などを指導することで、A氏が大切にする生活様式を可能な限り維持しながら疾患と共存していく道筋を示すことができる。
さらに、A氏の精神的支えとなっている家族、特に妻との関わりを支援することも重要である。妻も「食事の工夫をもっと勉強したい」と前向きな姿勢を示していることから、この意欲を活かし、夫婦で協力して疾患管理に取り組める体制を整えることが効果的である。例えば、食事指導の際には妻も参加してもらい、実際の調理法や食品選択について具体的に指導することで、退院後の生活に役立つ知識と技術を身につけてもらうことができる。
自分の信仰に従って礼拝するというニーズに関しては、A氏は特定の宗教的信条を持っていないため、宗教的な礼拝の必要性はないと考えられる。しかし、より広い意味での精神的な支えや価値観の尊重というニーズは存在し、家族との関係性や日常生活の維持など、A氏が大切にする価値の実現を支援することで、このニーズを充足することができる。現在の情報からは、A氏の価値観や信念について詳細な把握が十分でないため、このニーズが完全に充足されているとは言い難い。今後さらに情報収集を行い、A氏の内面的な支えとなる要素を理解した上で、それを尊重した支援を提供することが必要である。
看護問題の明確化
なし
事例の目次
【ヘンダーソン】慢性心不全 急性増悪[高血圧・糖尿病あり](0023)| 今回の情報
1.正常に呼吸する
2.適切に飲食する
3.あらゆる排泄経路から排泄する
4.身体の位置を動かし、また良い姿勢を保持する
5.睡眠と休息をとる
6.適切な衣類を選び、着脱する
7.体温を生理的範囲内に維持する
8.身体を清潔に保ち、身だしなみを整え、皮膚を保護する
9.環境のさまざまな危険因子を避け、また他人を傷害しないようにする
10.自分の感情、欲求、恐怖あるいは気分を表現して他者とコミュニケーションを持つ
11.自分の信仰に従って礼拝する
12.達成感をもたらすような仕事をする
13.遊び、あるいはさまざまな種類のレクリエーションに参加する
14.正常な発達および健康を導くような学習をし、発見をし、あるいは好奇心を満足させる
看護計画
この記事の執筆者

・看護師と保健師免許を保有
・現場での経験-約15年
・プリセプター、看護学生指導、看護研究の経験あり
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