【ヘンダーソン】慢性心不全 急性増悪[高血圧・糖尿病あり](0023)| 2.適切に飲食する

ヘンダーソン

事例の要約

慢性心不全を基礎疾患に持つ患者が、急性増悪により救急搬送され入院した事例。患者は高血圧症と2型糖尿病の既往があり、自宅で突然の呼吸困難と胸部不快感を自覚し救急要請した。入院後は心不全治療とともに、患者の日常生活動作の拡大と再発予防に向けた指導を行っている。介入日は11月15日、入院後5日目である。

2.適切に飲食する

A氏は入院前、1日3食の食事を摂取していたが、濃い味付けを好み、特に塩分の多い食品を多く摂取していた。妻が調理することが多いが、A氏の好みに合わせた味付けとなりがちであった。また、外食も週に2〜3回あり、アルコールも週3〜4回程度(ビール500ml缶を1〜2本)摂取していた。糖尿病があることは認識していたが、間食を控える意識は低く、甘いお菓子を摂取することもあった。水分摂取量については明確な記載はないが、心不全の増悪因子となる過剰な水分摂取があった可能性が考えられる。現在入院中のA氏には、心不全食(塩分6g/日制限、エネルギー1,600kcal、水分1,000ml/日制限)が提供されている。味付けが薄いため、「物足りない」と訴えることもあるが、徐々に慣れてきている様子である。食事摂取量は8割程度であり、水分制限については理解しているものの、「喉が渇く」と訴えることがあり、適宜説明が必要な状況である。

食事に関するアレルギーとしては、エビ・カニによる軽度のアレルギーがある。アレルギー症状としての消化器症状や皮膚症状などの詳細な情報は記載されていないが、軽度とされていることから、少量の摂取であれば大きな問題はない可能性がある。しかし、アレルギー反応は体調によって変動することがあるため、入院中の食事では除去食として対応し、摂取後の症状出現の有無を確認する必要がある。

A氏の身体計測値は、身長168cm、入院時の体重は75kg(BMI:26.6)で軽度肥満であった。入院5日目には体重71.5kgとなり、入院時から3.5kg減少している。これは主に体内の過剰な水分が利尿により排出されたものと考えられる。A氏は72歳で、高齢者の低栄養リスクも考慮する必要があるが、現時点では軽度肥満の範囲内であり、栄養状態は比較的良好と言える。しかし、今後の治療過程で体重減少が続く場合は注意が必要である。

A氏の身体活動レベルは、入院前は日常生活活動を自立して行えていたが、階段昇降や長距離歩行時には息切れを自覚することが増えていた。入院後は安静度が段階的に拡大し、現在は病棟内歩行が許可されている状態である。現在の身体活動レベルは低く、必要エネルギー量も通常より少なめに設定されていると考えられる。心不全食として1,600kcalのエネルギー摂取が設定されているが、これは基礎代謝量と現在の活動量を考慮した適切な設定と思われる。

食欲に関しては、入院前は暑さによる食欲低下があったとの記載があるが、現在の食欲については明確な記載がない。食事摂取量が8割程度であることから、ある程度の食欲はあると推測される。嚥下機能については問題なく、むせることなく食事摂取が可能であるとの記載がある。口腔内の状態や咀嚼機能については具体的な記載がないため、追加の情報収集が必要である。高齢者では歯の欠損や口腔乾燥などの問題が生じやすいため、口腔内の状態を確認し、必要に応じて口腔ケアの指導も行う必要がある。

嘔吐や吐気に関する情報は記載されていない。心不全では肝うっ血による消化機能低下や薬剤の副作用として消化器症状が出現することがあるため、これらの症状の有無についても確認が必要である。

血液データとしては、入院時のTP(総蛋白)は6.8g/dL、Alb(アルブミン)は3.5g/dL、Hb(ヘモグロビン)は13.5g/dLであり、いずれも基準値内または基準値下限に近い値である。入院5日目にはTPは6.9g/dL、Albは3.7g/dLと若干改善している。Hbは13.2g/dLと微減しているが、基準値内である。高齢者ではAlbが低下しやすい傾向があるが、A氏のAlbは比較的維持されている。TG(中性脂肪)については具体的な数値の記載がないため、脂質代謝の状態は評価できない。糖尿病があることから、脂質代謝異常の可能性もあり、追加のデータが必要である。HbA1cは7.5%と血糖コントロールは不十分な状態であり、食事療法の強化が必要である。

A氏の栄養ニーズを総合的に評価すると、現在の食事摂取状況は必ずしも十分とは言えないが、極端な栄養不良ではない。しかし、心不全と糖尿病を併せ持つA氏の食事管理は複雑であり、塩分制限、エネルギー制限、水分制限を同時に行う必要がある。また、高齢者では栄養素の吸収効率の低下や筋肉量の減少などにより、十分なタンパク質摂取が必要となるが、腎機能低下(eGFR:52mL/分/1.73m²)も考慮する必要がある。

A氏への看護介入としては、まず心不全食と水分制限の必要性について繰り返し説明し、理解を深めることが重要である。味覚の変化に対応するため、香辛料や酢、レモンなどの酸味を活用した減塩食の工夫を提案することも有効である。また、妻に対しても減塩調理法の指導が必要である。水分制限については、一日の水分量を視覚的に把握できるよう測定カップを使用したり、氷をなめるなどの口渇感への対処法を指導する。さらに、糖尿病の食事療法として、炭水化物の摂取量や食品交換表の活用法についても説明が必要である。退院前には栄養士による具体的な食事指導を行い、実際の食生活に即した内容とすることが望ましい。

また、食事摂取状況や体重の変化を継続的に観察することが重要である。特に退院後の食事管理が適切に行われているかを確認するために、定期的な体重測定や食事記録の指導、外来受診時の評価が必要である。血液検査でのAlb値やHbA1cの推移も定期的に確認し、栄養状態や血糖コントロールの評価を行う必要がある。

以上のことから、A氏の食事・栄養に関するニーズは現時点では部分的に充足されている状態であるが、長期的な食事管理のためのセルフケア能力の向上が必要である。特に退院後の生活では、習慣化した濃い味付けの食事や不規則な飲酒習慣をどのように修正していくかが課題となる。自己管理が難しい場合は、妻の協力を得ながら、訪問看護や栄養指導などの社会資源を活用した支援体制を構築することも検討すべきである。

看護問題の明確化

不適切な食習慣(塩分過多・水分過多)に関連した心不全管理の困難さ
糖尿病に対する自己管理意識の低さに関連した血糖コントロール不良
複合的な食事療法(塩分制限・水分制限・糖質制限)に関連した長期的アドヒアランス維持の困難さ

事例の目次

この記事の執筆者

なっちゃん
なっちゃん

・看護師と保健師免許を保有
・現場での経験-約15年
・プリセプター、看護学生指導、看護研究の経験あり

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