【ヘンダーソン】慢性心不全 急性増悪[高血圧・糖尿病あり](0023)| 7.体温を生理的範囲内に維持する

ヘンダーソン

事例の要約

慢性心不全を基礎疾患に持つ患者が、急性増悪により救急搬送され入院した事例。患者は高血圧症と2型糖尿病の既往があり、自宅で突然の呼吸困難と胸部不快感を自覚し救急要請した。入院後は心不全治療とともに、患者の日常生活動作の拡大と再発予防に向けた指導を行っている。介入日は11月15日、入院後5日目である。

7.体温を生理的範囲内に維持する

A氏は72歳の男性で、慢性心不全の急性増悪により入院中である。現在のバイタルサインは安定しており、体温は36.5℃と生理的範囲内にある。入院時(11月10日)の体温も36.8℃であり、入院経過を通して発熱は認められていない。呼吸数は入院時28回/分と頻呼吸であったが、治療により現在は18回/分と正常範囲内に改善している。脈拍は78回/分・不整であり、これは基礎疾患である心房細動によるものと考えられる。血圧は132/76mmHgと安定している。

療養環境の温度、湿度、空調に関する具体的な情報は提供されていないが、11月という季節を考慮すると、室温管理や適切な寝具の提供が必要である。高齢者は体温調節機能が低下しているため、環境温の変化に対する適応能力が若年者に比べて低下している。そのため、部屋の温度や湿度の管理、適切な衣類や寝具の選択が重要である。療養環境の適切な温度管理は、心不全患者の安静時エネルギー消費量を最小限に抑え、心負荷を軽減するためにも重要である。

感染症の有無については、現在の情報からは感染症を示唆する所見は認められない。入院時の血液検査ではWBCが11,200/μLと上昇していたが、これは急性心不全による生体ストレスに対する反応と考えられ、入院5日目には8,500/μLと改善傾向にある。CRPの値については情報が提供されていないため、炎症反応の程度を詳細に評価するための追加情報が必要である。

A氏のADLは、入院前はほとんど自立していたが、入院時は急性心不全の症状により安静臥床を指示されていた。現在(入院5日目)は症状が安定し、自力での病棟内移動が可能となっている。ただし、階段昇降や長距離歩行では息切れが出現するため、無理のない範囲での活動が指導されている。衣類の着脱などの日常生活動作は基本的に自立しているが、かがむ動作や上肢を挙上する動作で息切れが生じるため、時間をかけてゆっくりと行っている。入浴に関しては、入院4日目からシャワー浴が許可され、看護師の見守りのもとで行っているが、長時間の立位では疲労感が強くなるため、シャワーチェアを使用している。

血液データについては、WBCは入院時11,200/μLから入院5日目には8,500/μLへと改善している。これは急性期の生体ストレス反応が軽減し、全身状態が改善していることを示している。CRPの値は情報として提供されていないため、炎症反応の詳細な評価には追加の情報収集が必要である。

A氏は72歳と高齢であり、加齢に伴う体温調節機能の低下が考えられる。高齢者は皮膚の血管収縮反応や発汗機能が低下しており、環境温の変化に対する適応能力が低下している。また、基礎代謝の低下により産熱量も減少しているため、低体温になりやすい傾向がある。さらに、自律神経系の機能低下により、体温の日内変動が小さくなり、発熱時の体温上昇が若年者ほど顕著でない場合もある。そのため、感染症などが発生した際に発熱が明確でない可能性があり、わずかな体温変化や全身状態の変化に注意する必要がある

看護介入としては、まず定期的なバイタルサイン測定を継続し、体温変動の有無を観察することが重要である。特に夜間や早朝の体温低下に注意し、適切な室温管理と寝具の調整を行う必要がある。また、心不全患者は利尿薬の使用による脱水のリスクがあるため、適切な水分摂取の支援も重要である。水分制限(1,000mL/日)がある中で効率的な水分摂取ができるよう指導し、脱水による体温調節機能の低下を予防する必要がある。

さらに、活動と休息のバランスを整え、過度の疲労を予防することも重要である。適切な活動レベルの維持は筋肉からの熱産生を促し、体温維持に寄与する。しかし、心不全患者では過度の活動は心負荷を増大させるため、症状に応じた活動量の調整が必要である。心臓リハビリテーションを通じて適切な運動耐容能の評価と運動処方を行い、無理のない範囲での活動を支援することが重要である。

清潔ケアについては、入浴やシャワー浴後の体温低下に注意する必要がある。特に高齢者は入浴後の体温低下が起こりやすいため、入浴後の保温ケアや環境調整が重要である。また、シャワー浴の時間や湯温にも配慮し、心負荷を増大させない方法で清潔を保つよう支援する必要がある。

A氏には基礎疾患として糖尿病があり、末梢循環障害や自律神経障害による体温調節機能への影響も考慮する必要がある。足底の感覚がやや鈍い印象があるとの情報から、糖尿病性神経障害の初期症状の可能性があり、末梢循環不全による四肢の冷感や温度感覚の低下がないか観察を継続する必要がある。また、抹消循環不全による組織の虚血は感染リスクを高めるため、皮膚の観察や保湿ケアなど予防的な介入も重要である。

体温のニーズ充足状況としては、現時点では体温は生理的範囲内に維持されており、ニーズは充足されている状態である。しかし、高齢であることや基礎疾患の存在から、環境温の変化や活動状態の変化に伴う体温調節機能の低下リスクがあるため、引き続き観察と予防的介入を継続する必要がある。また、退院後の自宅での体温管理についても、季節に応じた室温管理や衣類・寝具の選択、適切な活動と休息のバランスなどについて、本人と家族への指導を計画的に行い、自己管理能力の向上を支援することが重要である。

看護問題の明確化

なし

事例の目次

この記事の執筆者

なっちゃん
なっちゃん

・看護師と保健師免許を保有
・現場での経験-約15年
・プリセプター、看護学生指導、看護研究の経験あり

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