本事例の要約
1月25日に高血圧による腎機能障害で緊急入院となった65歳男性の製造業事務職A氏に対して、入院2日目の1月27日より、生活習慣の改善と透析予防に向けて看護介入を行う事例。
3.あらゆる排泄経路から排泄する
A氏の腎機能は著しく低下しており、血液尿素窒素42mg/dL、クレアチニン2.8mg/dL、推算糸球体濾過量20.1mL/min/1.73m²と、慢性腎臓病の重症度分類でステージ4に相当する。この腎機能低下により、体液・電解質バランスの管理が重要となっている。
排尿状況について、入院前は10月頃から夜間頻尿(2-3回/晩)があり、その後3-4回/晩に増加していた。現在の排尿状況は、日中6-7回、夜間2-3回で、1回の排尿量は150-200ml程度である。1日の総尿量は約1200ml/日となっている。尿意は明確で自尿があり、排尿時痛などの症状はない。尿検査では蛋白3+から2+、潜血2+から1+と改善傾向にあるが、依然として異常値が持続している。尿比重は1.015と正常範囲内である。
水分出納について、入力は食事・飲水を合わせて1500ml/日(水分制限)に対し、出力は尿量1200ml/日と不感蒸泄(500-600ml/日)となっている。これは1日あたり200-300mlの水分損失を示しており、体液量の減少傾向が認められる。この水分バランスの負の傾向は、入院時に認められた浮腫の改善に寄与している一方で、過度な脱水のリスクも示唆している。腎機能低下のある高齢者では、体液量減少による腎機能のさらなる悪化を防ぐため、慎重な水分管理が必要である。また、発汗状況についての具体的な記載はないが、今後の活動量増加に伴う不感蒸泄の変化や、季節変動による発汗量の増加にも注意が必要である。体液量の評価には、体重測定、血圧、脈拍、皮膚の張り具合、粘膜の湿潤度などの総合的な観察が重要である。
排便状況に関する記載はないため、排便回数、性状、規則性などの情報収集が必要である。また、腹部膨満や腸蠕動音についても評価が必要である。高齢者は便秘のリスクが高く、水分制限と活動量低下も便秘を助長する可能性があるため、特に注意深い観察が求められる。
排泄に関連した食事摂取状況として、入院前は不規則な食事パターンで、特に朝食の欠食が週2-3回あった。現在は病院食(塩分制限食6g/日)が提供され、摂取量は徐々に増加している。水分摂取に関しては、入院前は喉の渇きを頻繁に訴え、ペットボトルの水やスポーツドリンクを常飲していたが、現在は1500ml/日の水分制限が行われている。
運動機能について、麻痺の記載はなく、病棟内の短距離歩行は自立している。トイレ動作や移動時の転倒リスクを考慮し、必要に応じてナースコールの使用を指導している。特に夜間のトイレ歩行時は注意が必要である。65歳という年齢を考慮すると、夜間頻尿による転倒リスクにも留意が必要である。
看護介入として以下の対応が必要である。排尿に関しては、排尿回数、量、性状の継続的な観察と記録を行う。特に夜間頻尿による睡眠への影響と転倒リスクに注意する。排便に関しては、排便状況の観察と記録を開始し、必要に応じて排便コントロールの介入を検討する。水分出納については、摂取量と排泄量の厳密な管理を継続し、体重測定による評価も併せて行う。また、浮腫の程度や脱水徴候の観察も重要である。
自立した排泄行動の維持のため、必要時のナースコール使用を促し、特に夜間の見守りを強化する。退院後の自己管理に向けて、水分制限の必要性と具体的な管理方法について指導を行う。また、排尿回数や尿量の記録方法についても指導が必要である。
ニーズの充足状況について、排尿機能は保たれているものの、頻尿が持続しており、水分制限による適切な管理が必要な状態である。また、排便状況の評価が不十分であることから、排泄に関するニーズは部分的な充足にとどまっている。今後は、排泄パターンの安定化と自己管理能力の向上に向けた支援を継続する必要がある。
看護問題の明確化
#慢性腎臓病に伴う腎機能低下に関連した排尿パターンの変調
#慢性腎臓病に伴う体液管理に関連した体液量バランス異常のリスク状態
#水分制限による活動制限に関連した便秘発症のリスク状態
事例の目次
【ヘンダーソン】慢性腎不全 生活習慣の改善が課題(0009)| 今回の情報
1.正常に呼吸する
2.適切に飲食する
3.あらゆる排泄経路から排泄する
4.身体の位置を動かし、また良い姿勢を保持する
5.睡眠と休息をとる
6.適切な衣類を選び、着脱する
7.体温を生理的範囲内に維持する
8.身体を清潔に保ち、身だしなみを整え、皮膚を保護する
9.環境のさまざまな危険因子を避け、また他人を傷害しないようにする
10.自分の感情、欲求、恐怖あるいは気分を表現して他者とコミュニケーションを持つ
11.自分の信仰に従って礼拝する
12.達成感をもたらすような仕事をする
13.遊び、あるいはさまざまな種類のレクリエーションに参加する
14.正常な発達および健康を導くような学習をし、発見をし、あるいは好奇心を満足させる
看護計画
この記事の執筆者

・看護師と保健師免許を保有
・現場での経験-約15年
・プリセプター、看護学生指導、看護研究の経験あり
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