【ヘンダーソン】急性リンパ性白血病 入院治療中(0050)

ヘンダーソン

事例の要約

7歳男児の急性リンパ性白血病の事例。4月10日の外来受診時に貧血と出血傾向を主訴に来院し、精査の結果、B前駆細胞型急性リンパ性白血病と診断された。現在、寛解導入療法を終了し、地固め療法中である。介入日は5月15日

基本情報

A氏は7歳の男児で、身長122cm、体重23kgである。家族構成は父親(38歳)、母親(36歳)、妹(4歳)の4人家族で、キーパーソンは母親である。小学校2年生で、性格は活発で明るく、友達が多い。感染症はなく、卵アレルギーがあるが、3歳以降は症状が出ていない。認知力は年齢相応で良好である。

病名

B前駆細胞型急性リンパ性白血病

既往歴と治療状況

既往歴は3歳時に熱性けいれんを1回経験している以外は特に大きな病気はなく、これまで順調に発育してきた。3歳時にインフルエンザにかかった際、解熱後に一過性の小脳失調症状を認めたが、1週間程度で自然回復した。予防接種は定期接種をすべて終了している。現在は寛解導入療法を終え、地固め療法中である。

入院から現在までの情報

4月上旬より発熱と倦怠感が続き、近医を受診するも解熱剤処方で経過観察となっていた。しかし、その後も38度台の発熱が続き、顔色不良と点状出血を母親が発見し、4月10日に当院小児科外来を受診した。血液検査で白血球数増加(25,000/μL)、ヘモグロビン7.5g/dL、血小板2.0万/μLと汎血球減少を認め、末梢血塗抹標本で芽球を認めたため、同日緊急入院となった。翌日の骨髄穿刺にて急性リンパ性白血病(B前駆細胞型)と診断された。染色体検査ではt(12;21)(p13;q22)転座を認め、TEL-AML1融合遺伝子陽性であり、比較的予後良好群に分類された。入院後すぐに中心静脈カテーテルを挿入し、4月12日より寛解導入療法を開始した。プレドニゾロン、ビンクリスチン、L-アスパラギナーゼ、ダウノルビシンの4剤による多剤併用化学療法を施行し、中枢神経予防としてメトトレキサートの髄腔内投与も実施した。治療開始8日目の骨髄検査では芽球が5%以下となり、早期の良好な治療反応性を示した。寛解導入療法終了後の骨髄検査では形態学的完全寛解を達成し、微小残存病変(MRD)も陰性であった。現在は地固め療法中で、高用量メトトレキサート療法を実施している。

バイタルサイン

来院時は体温38.2℃、脈拍110回/分、呼吸数24回/分、血圧92/58mmHg、SpO2 98%(室内気)であった。顔色不良と全身の倦怠感があり、両下肢と体幹に点状出血斑を認めた。現在は体温36.5℃、脈拍88回/分、呼吸数20回/分、血圧94/60mmHg、SpO2 99%(室内気)と安定している。

食事と嚥下状態

入院前は食欲旺盛で好き嫌いなく食事を摂取していたが、発症前の1週間は食欲低下がみられていた。嚥下状態は問題なし。喫煙や飲酒の習慣はない。現在は化学療法の副作用による口内炎があり、食事摂取量は7割程度である。嚥下機能に問題はないが、口内痛のため水分や柔らかめの食事を好んでいる。栄養状態維持のため、必要に応じて高カロリー輸液を併用している。

排泄

入院前は排便は1日1回で規則的であった。現在は抗がん剤の副作用による便秘傾向があり、排便は2~3日に1回程度である。便性状はやや硬めで、時に腹部不快感を訴える。下剤はマグネシウム製剤を適宜使用している。排尿は問題なく、1日に5~6回ある。

睡眠

入院前は21時に就寝し、6時頃に起床する規則正しい生活を送っていた。現在は入院環境への適応と治療の影響で入眠困難と中途覚醒がみられることがある。ステロイド投与中は特に不眠が強く、眠前に時折抗ヒスタミン薬を使用することがある。夜間に痛みで目が覚めることもあるが、鎮痛薬で対応している。日中の活動性は徐々に改善している。

視力・聴力・知覚・コミュニケーション・信仰

視力、聴力ともに正常である。知覚に異常はない。コミュニケーションは年齢相応に良好で、医療スタッフとも積極的に会話する。治療や処置に対する理解も良好である。家族に特定の宗教的信仰はない。

動作状況

入院前は運動能力も高く、サッカークラブに所属して週2回の練習に参加していた。現在は全身状態の改善に伴い、病棟内の歩行は可能となっているが、長時間の活動後は疲労感を訴える。移乗や排泄動作、衣類の着脱は自立している。入浴は付き添いのもとでシャワー浴を実施している。転倒歴はない。

内服中の薬

・プレドニゾロン 20mg/日 朝食後
・スルファメトキサゾール・トリメトプリム合剤 400mg/80mg 週3回(月・水・金)朝食後
・フルコナゾール 100mg/日 朝食後
・アシクロビル 200mg 1日3回 毎食後
・ラクツロース 10mL 1日2回 朝夕食後(便秘時)

入院中のため、内服薬は看護師管理である。A氏は薬の必要性を理解しており、服薬への協力は良好である。

検査データ

検査データ

検査項目入院時最近基準値
WBC25,000/μL(芽球60%)3,500/μL4,000-9,000/μL
RBC2.50×10^6/μL3.20×10^6/μL4.00-5.50×10^6/μL
Hb7.5g/dL9.2g/dL11.5-14.5g/dL
Plt2.0×10^4/μL15.0×10^4/μL15.0-35.0×10^4/μL
AST35 IU/L42 IU/L10-40 IU/L
ALT28 IU/L38 IU/L5-35 IU/L
LDH850 IU/L250 IU/L120-250 IU/L
BUN18 mg/dL14 mg/dL8-20 mg/dL
Cr0.4 mg/dL0.3 mg/dL0.3-0.7 mg/dL
Na136 mEq/L138 mEq/L135-145 mEq/L
K4.0 mEq/L3.8 mEq/L3.5-5.0 mEq/L
CRP2.8 mg/dL0.3 mg/dL0-0.3 mg/dL
今後の治療方針と医師の指示

現在、標準リスク群としての治療プロトコールに従い、地固め療法を継続中である。今後の予定としては、高用量メトトレキサート療法を2コース実施後、再寛解導入療法へと移行する計画である。その後、維持療法を約2年間実施予定である。医師からは、化学療法中の感染予防として手洗いの徹底と人混みを避けることの指導があった。また、発熱時には速やかに受診するよう指示されている。食事は栄養バランスに気を付け、水分摂取を十分にするよう指導されている。中心静脈カテーテルの管理と観察についても家族に指導がなされている。現在の治療反応性は良好であり、予後も期待できる状況である。

本人と家族の想いと言動

A氏は年齢なりに病気の説明を受け、治療に協力的である。長期間の入院に対して時に不安や寂しさを表出するが、病棟スタッフや家族の支援により精神的に安定している。両親には「なぜ私の子どもが」という気持ちがあったが、医療者の説明を理解し、積極的に治療に参加している。母親は毎日付き添いをしており、父親は仕事の合間に面会に来ている。妹は週末に面会に来ることがあり、A氏は妹と会うと嬉しそうにしている。両親からは「治療がうまくいっていると聞いて安心しています。できるだけ普通の生活に戻れるよう支えたい」との言葉が聞かれる。また、A氏は「早く学校に戻りたい。友達と遊びたい」と話している。学校との連携も図られており、担任の先生から励ましのメッセージや学級の様子が届けられている。


アセスメント

疾患の簡単な説明

A氏は7歳の男児で、B前駆細胞型急性リンパ性白血病と診断されている。急性リンパ性白血病は骨髄中のリンパ球系前駆細胞が腫瘍性に増殖する疾患であり、正常な血液細胞の産生が抑制される。A氏の場合、染色体検査でt(12;21)(p13;q22)転座を認め、TEL-AML1融合遺伝子陽性であり、比較的予後良好群に分類されている。現在は寛解導入療法を終え、地固め療法中である。高用量メトトレキサート療法を実施中であり、これは肺毒性を引き起こす可能性がある薬剤である。

呼吸数、SPO2、肺雑音、呼吸機能、胸部レントゲン

A氏の呼吸状態について、来院時は発熱と貧血の影響により呼吸数24回/分と頻呼吸を呈していたが、現在は呼吸数20回/分と7歳児の正常範囲内である。SpO2は来院時98%、現在99%(室内気)と良好な値を維持している。肺雑音や呼吸機能検査、胸部レントゲン所見についての記載はないため、これらの情報を収集する必要がある。特に白血病治療中は肺感染症や薬剤性肺障害のリスクがあるため、定期的な呼吸音の聴取と胸部レントゲン検査の実施が重要である。

呼吸苦、息切れ、咳、痰

現在の呼吸症状に関する明確な記載はないが、バイタルサインが安定していることから重度の呼吸苦はないと推測される。ただし、「長時間の活動後は疲労感を訴える」との記載があり、これは貧血(Hb 9.2g/dL)の影響による活動耐性の低下と関連している可能性がある。また、化学療法による免疫抑制状態であるため、呼吸器感染症のリスクが高く、咳嗽や痰の有無、性状について継続的な観察が必要である。特に中性球減少期には細菌性肺炎や真菌性肺炎のリスクが高まるため注意を要する。

喫煙歴

A氏は7歳であり、喫煙歴はない。また、家族の喫煙状況についての情報はないため、家族の喫煙状況と受動喫煙の可能性について確認が必要である。特に、化学療法中の児は呼吸器系の合併症リスクが高いため、家庭内での受動喫煙を避けるよう家族への指導が重要である。

呼吸に関するアレルギー

記載された情報によると、A氏は卵アレルギーがあるが3歳以降は症状が出ていない。呼吸器系のアレルギー(気管支喘息など)についての記載はないが、アレルギー素因を有する小児は気道過敏性を持つことがあるため、注意深い観察が必要である。また、薬剤アレルギーについての情報も不足しているため、抗がん剤や抗生剤に対するアレルギー反応(呼吸器症状を含む)の有無を確認する必要がある。

ニーズの充足状況

現在のA氏の呼吸に関するニーズは概ね充足されている。SpO2値は良好で、呼吸数も安定しており、酸素投与の必要性はない。しかし、貧血の存在や化学療法の継続に伴い、今後呼吸状態が変化する可能性がある。特に高用量メトトレキサート療法は間質性肺炎などの肺毒性を引き起こす可能性があるため、呼吸状態の変化に対する継続的なモニタリングが必要である。また、活動後の疲労感については、貧血の改善と共に段階的な活動量の調整が必要である。

A氏は身体発達の途上にある学童期の児であり、肺胞や気道径の発達も未熟である。そのため成人と比較して呼吸器感染症の影響を受けやすく、急速に状態が悪化する可能性がある点にも留意が必要である。

健康管理上の課題として、①貧血による活動耐性の低下、②化学療法に伴う呼吸器合併症リスク、③感染予防の必要性が挙げられる。これらに対する看護介入としては、定期的な呼吸状態の観察(呼吸数、SpO2、呼吸音、呼吸パターン)、活動と休息のバランスを考慮した日常生活援助、感染予防策の徹底(手指衛生、マスク着用、面会制限など)が重要である。また、発熱や咳嗽などの呼吸器症状出現時には速やかに医師に報告し、適切な検査と治療を開始できるよう体制を整えておく必要がある。さらに、退院後の生活に向けて、家族に対して感染予防策や症状観察のポイントについて指導を行い、異常時の対応について教育することが重要である。

今後も継続して観察すべき点としては、運動時の呼吸状態(頻呼吸、SpO2低下の有無)、夜間睡眠時の呼吸状態(特に睡眠時無呼吸の有無)、化学療法後の咳嗽や呼吸困難の出現有無、発熱時の呼吸状態の変化などが挙げられる。また、定期的な胸部レントゲン検査や必要に応じて肺機能検査を実施し、呼吸器合併症の早期発見に努めることが重要である。A氏は成長発達途上であり、治療による長期的な呼吸機能への影響も考慮した長期的なフォローアップも必要である。

食事と水分の摂取量と摂取方法

A氏は入院前、食欲旺盛で好き嫌いなく食事を摂取していたが、白血病発症前の1週間は食欲低下がみられていた。現在は化学療法の副作用による口内炎があり、食事摂取量は全体の7割程度である。具体的な1日の摂取カロリーや水分摂取量についての詳細な記載はないため、これらの情報を収集する必要がある。口内痛のため水分や柔らかめの食事を好んでおり、栄養状態維持のため必要に応じて高カロリー輸液を併用している。摂取方法については経口摂取が可能であり、嚥下機能に問題はない。化学療法の副作用や口内炎による摂食困難に対応するため、食事形態の工夫や分割食などの対応が必要であると考えられる。また、中心静脈カテーテルを挿入しているため、補助的な静脈栄養も可能な状態である。

食事に関するアレルギー

A氏は卵アレルギーがあるが、3歳以降は症状が出ていないことが報告されている。しかし、化学療法による免疫状態の変化に伴い、アレルギー反応が再燃する可能性もあるため注意が必要である。卵アレルギーの程度や過去の症状(アナフィラキシーの有無など)についての詳細情報は不足しているため、追加の情報収集が望ましい。また、他の食物アレルギーの有無についても確認が必要である。化学療法中は新たな食物アレルギーが出現する可能性もあるため、新規食材導入時の観察を継続することが重要である。

身長、体重、BMI、必要栄養量、身体活動レベル

A氏は身長122cm、体重23kgの7歳男児である。年齢相応の体格であり、BMIは計算すると約15.5となり、小児の標準範囲内である。必要栄養量については、基礎代謝量に加えて、成長発達に必要なエネルギー、さらに疾患・治療による代謝亢進状態を考慮する必要がある。一般的に7歳男児の1日の必要エネルギー量は約1,500〜1,700kcalであるが、白血病治療中は代謝が亢進しているため、通常より10〜20%増の栄養摂取が望ましい。現在の身体活動レベルは、入院前はサッカークラブに所属し週2回の練習に参加する活発な児であったが、現在は病棟内の歩行は可能なものの、長時間の活動後は疲労感を訴える状態である。このような活動制限と治療による代謝変化を考慮した栄養管理が必要である。

食欲、嚥下機能、口腔内の状態

A氏の食欲は化学療法の副作用により低下しており、特に口内炎による痛みのため食事に対する意欲が減退している。嚥下機能自体に問題はないが、口内痛のため水分や柔らかめの食事を好む傾向がある。口腔内の状態については、具体的な口内炎の程度(グレード分類)や部位、粘膜の色調や湿潤度などの情報が不足しているため、詳細な口腔内アセスメントが必要である。化学療法中の口内炎は二次感染のリスクがあり、特に好中球減少状態では全身感染に発展する可能性があるため、口腔ケアの徹底と定期的な評価が重要である。

嘔吐、吐気

嘔吐や吐気に関する具体的な記載はないが、化学療法中であるため、これらの消化器症状が出現する可能性は高い。特にメトトレキサートは嘔気・嘔吐の副作用が報告されている薬剤である。制吐剤の使用状況や、食事摂取のタイミングと嘔気の関係性についての情報収集が必要である。また、化学療法のスケジュールと消化器症状の出現パターンを把握し、症状が強い時期の栄養管理方法を検討することが重要である。

血液データ(TP、Alb、Hb、TG)

提供された情報にはTP(総蛋白)、Alb(アルブミン)、TG(中性脂肪)の値は記載されていないため、これらの検査データを収集する必要がある。Hb(ヘモグロビン)については、入院時7.5g/dL、最近の値は9.2g/dLと基準値(11.5-14.5g/dL)より低値であるが、治療に伴い改善傾向にある。この貧血状態は食欲不振や疲労感に関連している可能性があり、十分な鉄分や蛋白質の摂取が必要である。また、栄養状態を評価するためには、TP、Alb、TGなどの値も確認し、総合的に栄養評価を行うことが重要である。特に長期の化学療法中は低栄養状態に陥りやすいため、定期的な血液検査による評価が必要である。

ニーズの充足状況

現在のA氏の栄養摂取に関するニーズは、口内炎による食事摂取量の減少があるものの、高カロリー輸液の併用により一定程度充足されていると考えられる。しかし、成長発達途上にある小児であり、十分な栄養摂取は治療効果や回復に直接影響するため、より積極的な栄養介入が必要である。白血病治療中の小児は、栄養素の需要増加と摂取量減少のリスクが重なり、栄養不良に陥りやすい。また、ステロイド使用時の食欲亢進期と化学療法後の食欲低下期が交互に訪れるため、時期に応じた栄養管理が重要である。特に地固め療法中は治療強度が高く、栄養状態が悪化しやすいため注意が必要である。

健康管理上の課題として、①化学療法による口内炎管理、②適切な栄養・水分摂取量の確保、③成長発達に必要な栄養素の確保、④貧血の改善が挙げられる。これらに対する看護介入としては、口内炎に対する定期的な口腔ケアと評価、痛みのコントロール、食事形態の工夫(柔らかい食事、冷たい食事など)、分割食の提供、栄養補助食品の活用などが考えられる。また、食事摂取量や水分摂取量、体重の定期的なモニタリングを行い、必要に応じて栄養サポートチーム(NST)と連携した介入を検討する必要がある。さらに、食事に関する好みや嗜好を尊重し、A氏が食事を楽しめる工夫も重要である。

今後も継続して観察すべき点としては、体重変化の推移、口内炎の程度と食事摂取量の関係、治療スケジュールと消化器症状の関連性、水分出納バランス、栄養状態を反映する血液データの変化などが挙げられる。また、退院後の食事管理についても、家族への指導を計画的に行うことが重要である。特に、免疫抑制状態を考慮した食品衛生管理や、成長に必要な栄養素の摂取方法について家族教育を行い、自宅での食事管理が適切に行えるよう支援する必要がある。

排便回数と量と性状、排尿回数と量と性状、発汗

A氏は入院前、排便は1日1回で規則的であった。現在は抗がん剤の副作用による便秘傾向があり、排便は2~3日に1回程度である。便性状はやや硬めで、時に腹部不快感を訴えることがある。下剤はマグネシウム製剤を適宜使用している状況である。排便量についての具体的な記載はないため、排便量の評価と記録が必要である。排尿については1日に5~6回あり、問題なく経過している。排尿量や尿の性状(色調、混濁の有無など)に関する具体的な情報が不足しているため、詳細な観察と記録が必要である。発汗に関する情報は記載されていないが、化学療法中は体温変動による発汗増加や、夜間発汗などの症状が出現する可能性があるため、観察が必要である。特に高用量メトトレキサート療法中は尿のアルカリ化が必要となるため、排尿状態の詳細な観察と記録が重要である。

in-outバランス

具体的なin-outバランスに関するデータの記載はない。特に高用量メトトレキサート療法中は腎毒性のリスクがあり、十分な尿量確保と水分バランスの管理が重要である。中心静脈カテーテルが挿入されており、高カロリー輸液を併用していることから、輸液量と尿量のバランス管理が行われていると推測される。しかし、詳細な輸液量、経口摂取量、尿量、その他の排泄量(便、嘔吐など)についての情報収集が必要である。7歳児の標準的な1日尿量は600~800mL程度であるが、体格や水分摂取量によって個人差があるため、A氏の平常値を把握することが重要である。また、腎機能を反映する検査値(BUN、Cr)は正常範囲内であるが、化学療法による腎機能への影響を早期に発見するためにも、正確なin-outバランスの評価が必須である。

排泄に関連した食事、水分摂取状況

A氏は口内炎があり、食事摂取量は7割程度である。水分については「水分や柔らかめの食事を好んでいる」との記載があるが、具体的な1日の水分摂取量は不明である。便秘傾向があることから、食物繊維の摂取状況や水分摂取量の詳細な評価が必要である。抗がん剤治療中は十分な水分摂取が腎機能保護や薬剤の排泄促進に重要であるため、経口および輸液による適切な水分量の確保が必要である。また、便秘対策として食物繊維を多く含む食品の摂取状況や、乳製品などの便通を促進する食品の摂取状況についても確認が必要である。ただし、口内炎による摂食困難があるため、食事形態や摂取方法の工夫も併せて検討する必要がある。

麻痺の有無

記載された情報からは麻痺の存在は認められない。「移乗や排泄動作、衣類の着脱は自立している」とあることから、排泄に関連する動作の自立度は良好であると判断できる。神経学的な症状は記載されておらず、自力での排泄行動に支障はないと考えられる。ただし、化学療法の副作用として末梢神経障害が出現する可能性があるため、特にビンクリスチン投与後は下肢の感覚異常や運動機能について注意深く観察する必要がある。また、中枢神経系への浸潤や中枢神経予防治療の影響についても注意が必要である。

腹部膨満、腸蠕動音

腹部膨満や腸蠕動音に関する具体的な記載はない。ただし、「時に腹部不快感を訴える」との記載があり、便秘に伴う腹部症状が出現していることが推測される。抗がん剤治療中は腸管粘膜障害や自律神経障害による腸蠕動の低下が生じやすく、便秘だけでなく麻痺性イレウスのリスクもあるため、定期的な腹部診察(視診、聴診、触診)が必要である。特に腹部膨満の程度、腸蠕動音の頻度や性状、腹部の圧痛の有無などを評価し、腸管合併症の早期発見に努める必要がある。

血液データ(BUN、Cr、GFR)

BUNは入院時18mg/dL、最近の値は14mg/dLであり、基準値(8-20mg/dL)の範囲内である。Crは入院時0.4mg/dL、最近の値は0.3mg/dLであり、小児の基準値(0.3-0.7mg/dL)の下限値である。GFRに関する記載はないため、小児のGFR推算式を用いた評価が必要である。現時点では腎機能は保たれていると考えられるが、高用量メトトレキサート療法中は腎毒性のリスクが高まるため、頻回な腎機能モニタリングが必要である。また、電解質(Na 138mEq/L、K 3.8mEq/L)も正常範囲内であるが、化学療法による電解質異常のリスクがあるため継続的な観察が必要である。

ニーズの充足状況

A氏の排泄に関するニーズは、便秘傾向はあるものの下剤で対応できており、排尿機能に問題はないことから、ある程度充足されていると考えられる。しかし、抗がん剤治療による排泄パターンの変化と合併症リスクを考慮すると、より詳細な排泄状況の評価と予防的介入が必要である。特に7歳児は自分の排泄状況を適切に表現できない場合もあるため、客観的な観察と記録が重要である。また、入院環境での排泄は心理的な影響を受けやすく、プライバシーへの配慮も必要である。さらに、学童期の発達課題として自己管理能力の獲得があるため、年齢に応じた排泄の自己管理への支援も重要である。

健康管理上の課題として、①抗がん剤による便秘傾向、②高用量メトトレキサート療法中の腎機能管理、③適切な水分バランスの維持、④排泄の自立支援が挙げられる。これらに対する看護介入としては、便秘に対する予防的アプローチ(適切な水分摂取の促進、可能な範囲での食物繊維摂取、適度な活動の促進、規則的な排便習慣の確立)、腎機能保護のための水分バランス管理(輸液管理、尿量・比重モニタリング、尿のpH管理)、排泄状況の詳細な観察と記録(便の性状・量・回数、尿の性状・量・回数)などが重要である。また、便秘が長期化した場合の腸管合併症(腸閉塞など)の早期発見のため、腹部症状の注意深い観察も必要である。

今後も継続して観察すべき点としては、便秘の程度と対策の効果、尿量と尿の性状変化(特に血尿や混濁の有無)、腹部症状の変化、電解質バランス、腎機能指標の変動などが挙げられる。また、治療スケジュールと排泄パターンの関連性を把握し、予測的な看護介入を行うことも重要である。さらに、退院後の排泄管理についても、家族への指導を行い、自宅での観察ポイントや異常時の対応について教育することが必要である。特に、排便コントロールの方法や尿量・水分摂取のモニタリングについて具体的な方法を指導し、セルフケア能力の向上を支援することが重要である。

ADL、麻痺、骨折の有無

A氏は7歳男児で、入院前は運動能力も高く、サッカークラブに所属して週2回の練習に参加していた。現在は全身状態の改善に伴い、病棟内の歩行は可能となっているが、長時間の活動後は疲労感を訴える状態である。移乗や排泄動作、衣類の着脱は自立しており、基本的なADLは維持されている。入浴については付き添いのもとでシャワー浴を実施している状況である。麻痺や骨折に関する記載はなく、神経学的症状は認められていないと考えられる。ただし、急性リンパ性白血病治療中は骨髄抑制による血小板減少に伴う出血リスクや、ステロイド使用による骨密度低下のリスクがあるため、潜在的な運動機能障害のリスクを考慮する必要がある。特に入院時の血小板数は2.0×10^4/μLと著明に低下していたが、現在は15.0×10^4/μLと改善している。血小板数の変動に応じた活動制限の見直しも必要である。また、化学療法薬(特にビンクリスチン)による末梢神経障害の出現にも注意が必要である。

ドレーン、点滴の有無

A氏は中心静脈カテーテルを挿入しており、化学療法薬や高カロリー輸液の投与経路として使用されている。カテーテル挿入部位や固定状態、感染徴候の有無についての詳細な記載はないため、これらの情報収集が必要である。中心静脈カテーテルは活動の制限因子となる可能性があり、特に活発な7歳児では事故抜去のリスクも考慮する必要がある。現在、高用量メトトレキサート療法を実施中であり、点滴管理が必要な状況である。また、髄腔内投与も実施されていることから、腰椎穿刺後の安静保持の必要性も一時的に生じると考えられる。これらの医療デバイスの存在がA氏の活動や姿勢保持にどのような影響を与えているかを評価し、安全な活動範囲を設定することが重要である。

生活習慣、認知機能

A氏は入院前、21時に就寝し6時頃に起床する規則正しい生活を送っていた。現在は入院環境への適応と治療の影響で入眠困難と中途覚醒がみられることがあり、ステロイド投与中は特に不眠が強い状態である。認知機能については「認知力は年齢相応で良好である」と記載されており、7歳児として適切な発達段階にあると考えられる。また、「治療や処置に対する理解も良好である」とあり、状況判断能力も保たれている。これらの情報から、A氏は年齢相応の認知機能を持ち、指示理解や自己の行動コントロールが可能であると評価できる。しかし、学童期前半の発達段階であるため、危険予測能力はまだ発達途上であり、活動範囲の拡大に伴う安全確保には配慮が必要である。また、長期入院による生活リズムの変化や活動制限が心理的ストレスとなり、落ち着きのない行動につながる可能性もあるため、精神的側面からの評価も重要である。

ADLに関連した呼吸機能

A氏の呼吸機能については、現在の呼吸数は20回/分、SpO2は99%(室内気)と安定している。入院時はHb 7.5g/dLと貧血状態であったが、現在はHb 9.2g/dLと改善傾向にある。ただし、基準値(11.5-14.5g/dL)と比較するとまだ貧血状態が続いており、貧血に伴う酸素運搬能の低下が活動耐性に影響している可能性がある。「長時間の活動後は疲労感を訴える」状態は、この貧血状態と関連していると考えられる。また、白血病治療中は免疫抑制状態にあり、呼吸器感染症のリスクも高いため、活動に伴う呼吸状態の変化(呼吸数増加、SpO2低下、呼吸困難感など)に注意する必要がある。化学療法による肺毒性のリスクもあり、運動時の呼吸状態を慎重に観察することが重要である。

転倒転落のリスク

A氏は7歳児であり、発達段階的には活発に行動する時期である。白血病のため入院治療中であるが、「性格は活発で明るく、友達が多い」とあり、元来活動的な児であると考えられる。現在は全身状態の改善に伴い病棟内歩行が可能となっているが、貧血や治療による疲労感、中心静脈カテーテルの存在などが転倒リスク要因となる。転倒歴はないとの記載があるが、入院環境は自宅と異なる不慣れな空間であり、特に夜間のトイレ移動時などはリスクが高まる。また、ステロイド投与による不眠や焦燥感、高用量メトトレキサートによる中枢神経系への影響なども転倒リスクを高める可能性がある。血小板数は現在正常範囲内であるが、治療経過に伴い変動するため、出血リスクを考慮した転倒予防策が必要である。

ニーズの充足状況

A氏の身体の位置を動かし良い姿勢を保持するというニーズは、基本的なADL(移乗、排泄、着脱)が自立しており、病棟内歩行も可能であることから、一定程度充足されていると言える。しかし、長時間の活動後の疲労感や、入浴時の付き添いが必要な状況から、完全な自立には至っていない。7歳児の発達段階では活動的に遊び、身体機能を向上させる時期であるが、疾患や治療による活動制限があり、発達課題の達成が妨げられる可能性がある。また、サッカークラブに所属していた児にとって、運動制限は精神的ストレスとなる可能性もある。学校生活への参加も制限されており、A氏は「早く学校に戻りたい。友達と遊びたい」と話している。これらの状況から、身体活動に関するニーズは部分的に充足されているものの、年齢相応の活動量や質は確保できていないと考えられる。

健康管理上の課題として、①貧血に伴う活動耐性の低下、②中心静脈カテーテル管理と活動の両立、③治療に伴う身体的副作用(疲労感、神経障害など)への対応、④転倒リスク管理、⑤年齢に応じた活動欲求の充足と安全確保のバランスが挙げられる。これらに対する看護介入としては、貧血の改善を図るための栄養管理や輸血療法の実施、中心静脈カテーテルの安全な固定と管理方法の工夫、活動と休息のバランスを考慮したデイリースケジュールの調整、転倒予防のための環境整備(ベッド柵の使用、夜間照明の確保、履物の選択など)、年齢に応じた安全な遊びや活動の提供などが重要である。また、リハビリテーションスタッフと連携し、A氏の身体機能維持・向上のためのプログラムを検討することも有効である。

今後も継続して観察すべき点としては、活動量と疲労度の関係、活動前後のバイタルサインの変化(特に呼吸数、SpO2)、末梢神経障害の出現有無(特にビンクリスチン投与後)、血液データの変動(特にHb、血小板数)と活動耐性の関連、ステロイド投与と情緒・行動変化の関連などが挙げられる。また、治療の進行に伴う身体状態の変化を踏まえ、活動範囲や制限の見直しを定期的に行うことが重要である。さらに、長期的視点では退院後の学校生活や運動再開に向けた段階的な活動拡大計画と、家族への具体的な指導も必要である。特に、治療終了後も晩期合併症(骨密度低下、心機能障害など)のリスクがあることを考慮し、長期的なフォローアップ体制の構築も重要である。

睡眠時間、パターン

A氏は入院前、21時に就寝し6時頃に起床する規則正しい生活を送っていた。これは7歳児として適切な睡眠時間(9〜10時間程度)が確保されていたと考えられる。しかし現在は、入院環境への適応と治療の影響で入眠困難と中途覚醒がみられることがある。特にステロイド(プレドニゾロン)投与中は不眠が強く、睡眠パターンの乱れが顕著となっている。夜間に痛みで目が覚めることもあり、断続的な睡眠となっていることが推測される。具体的な現在の睡眠時間や睡眠の質(熟睡感の有無、睡眠中の体動など)についての詳細情報は不足しているため、これらの情報収集が必要である。また、日中の活動性については「徐々に改善している」との記載があるが、日中の傾眠や倦怠感の有無、昼寝の習慣など、24時間の睡眠・覚醒リズムの評価も重要である。学童期の子どもは成長ホルモンの分泌が睡眠中に多く、十分な睡眠は身体的発達に不可欠であるため、睡眠パターンの乱れはA氏の発達にも影響する可能性がある。

疼痛、掻痒感の有無、安静度

A氏は「夜間に痛みで目が覚めることもある」との記載があり、疼痛が睡眠の質に影響していることが窺える。疼痛の部位や性質、強度、持続時間についての詳細情報は不足しているが、白血病治療中は骨髄穿刺や腰椎穿刺などの処置に伴う痛み、口内炎による痛み、骨痛などが生じる可能性がある。特に口内炎については「化学療法の副作用による口内炎があり」との記載があり、これが睡眠を妨げる要因となっていることが考えられる。掻痒感に関する記載はないが、化学療法薬や輸血、支持療法薬(抗生剤など)によるアレルギー反応として掻痒感が出現する可能性もあるため、皮膚症状の観察も必要である。安静度については「病棟内の歩行は可能」との記載から、厳密な安静制限はないと考えられるが、中心静脈カテーテル管理や治療スケジュールに応じた活動制限はあると推測される。特に高用量メトトレキサート療法中は輸液負荷があり、安静時間が増加する可能性がある。

入眠剤の有無

「ステロイド投与中は特に不眠が強く、眠前に時折抗ヒスタミン薬を使用することがある」との記載から、入眠困難時には抗ヒスタミン薬が使用されていることがわかる。具体的な薬剤名や使用頻度、効果についての情報は不足しているため、詳細な確認が必要である。小児への睡眠薬使用は慎重に行われることが多く、抗ヒスタミン薬の鎮静作用を利用した介入が選択されていると考えられる。しかし、抗ヒスタミン薬は逆説的な興奮作用を示すこともあるため、使用後の反応を注意深く観察する必要がある。また、非薬物的な入眠促進策(入眠儀式、環境調整など)の実施状況についても情報収集が必要である。

疲労の状態

A氏は「長時間の活動後は疲労感を訴える」状態であり、活動耐性の低下が認められる。これは白血病による全身状態の変化や治療による副作用、特に貧血(Hb 9.2g/dL)の影響と考えられる。疲労感の程度や日内変動、疲労回復に要する時間などの詳細情報は不足しているため、これらの評価が必要である。また、精神的疲労と身体的疲労を区別して評価することも重要であり、長期入院によるストレスや治療に伴う不安なども疲労感に影響している可能性がある。7歳児は自分の疲労状態を適切に言語化できない場合もあるため、行動観察(遊びの持続時間、集中力の変化、表情の変化など)による疲労評価も重要である。

療養環境への適応状況、ストレス状況

A氏は「病棟スタッフや家族の支援により精神的に安定している」との記載があり、療養環境への一定の適応が認められる。しかし、「長期間の入院に対して時に不安や寂しさを表出する」とあり、入院生活の長期化に伴うストレスも存在している。また「早く学校に戻りたい。友達と遊びたい」との発言から、仲間との交流の制限に対するストレスも窺える。学童期の子どもにとって、同年代の仲間との交流は重要な発達課題であり、これが制限されることはストレス要因となる。家族の支援状況としては、母親の毎日の付き添いや父親の面会、週末の妹の面会があり、家族の情緒的サポートは得られている状況である。また、担任の先生からのメッセージや学級の様子が伝えられるなど、学校との連携も図られている。これらの支援は療養環境への適応を促進する要因となっているが、治療の長期化に伴いストレスが蓄積する可能性もあるため、継続的な心理評価が必要である。

ニーズの充足状況

A氏の睡眠と休息に関するニーズは、入院環境への適応や治療の影響により十分に充足されているとは言い難い状況である。特にステロイド投与中の不眠や痛みによる中途覚醒が睡眠の質を低下させている。また、貧血による活動耐性の低下も十分な休息が得られていない可能性を示唆している。7歳児の発達段階を考慮すると、良質な睡眠は身体的・精神的発達に不可欠であり、睡眠障害は短期的にはストレス耐性の低下や免疫機能の低下につながり、長期的には成長発達に影響を及ぼす可能性がある。特に白血病治療中は免疫機能の維持が重要であり、睡眠と免疫系の関連を考慮した介入が必要である。また、日中の活動と夜間の睡眠のバランス、治療スケジュールと睡眠パターンの調整なども検討する必要がある。

健康管理上の課題として、①ステロイド投与に伴う睡眠障害への対応、②疼痛管理と睡眠の質の向上、③日中の活動と疲労のバランス調整、④入院ストレスの軽減と心理的安定の確保が挙げられる。これらに対する看護介入としては、ステロイド投与スケジュールの調整(可能であれば朝投与に統一するなど)、疼痛の定期的な評価と予防的な疼痛管理、就寝環境の整備(音・光・温度などの調整)、入眠儀式の確立(読み聞かせなど年齢に応じたリラクゼーション方法)、日中の適度な活動の促進と休息時間の確保、心理的サポート(プレパレーション、遊びの提供、感情表出の機会など)が重要である。また、家族への睡眠支援に関する教育も必要であり、帰宅後の睡眠習慣の再確立に向けた準備も考慮すべきである。

今後も継続して観察すべき点としては、睡眠パターンの変化と治療スケジュールとの関連性、疼痛の評価と睡眠への影響、入眠薬(抗ヒスタミン薬)の効果と副作用、日中の活動量と夜間睡眠の質の関係、精神状態の変化(不安、ストレス反応など)などが挙げられる。また、長期的な視点では、退院後の睡眠習慣の再確立に向けた支援計画の立案も重要である。特に、治療終了後も心理的な影響が持続する可能性があり、睡眠障害が長期化することもあるため、継続的なフォローアップが必要である。

ADL、運動機能、認知機能、麻痺の有無、活動意欲、点滴、ルート類の有無

A氏は7歳男児で、基本的なADLについては「衣類の着脱は自立している」との記載があり、着衣に関する日常生活動作は自立している。入院前は運動能力も高く、サッカークラブに所属して週2回の練習に参加するなど活発に活動していた。現在は全身状態の改善に伴い、病棟内の歩行は可能となっているが、長時間の活動後は疲労感を訴える状態である。運動機能に直接影響する麻痺の記載はなく、神経学的症状は認められていないと考えられる。認知機能については「認知力は年齢相応で良好である」と記載されており、7歳児として適切な発達段階にある。また、「治療や処置に対する理解も良好である」との記載から、状況判断能力も保たれており、衣類の選択や着脱に必要な認知機能は維持されていると評価できる。

活動意欲については「A氏は『早く学校に戻りたい。友達と遊びたい』と話している」との記載があり、基本的な活動意欲は保たれていると考えられる。しかし、白血病の治療中であり、化学療法による副作用や貧血の影響で活動意欲が変動する可能性もある。特に、「化学療法の副作用による口内炎」や「長時間の活動後の疲労感」は活動意欲に影響を及ぼす要因となり得る。

医療デバイスとしては「中心静脈カテーテルを挿入」しており、化学療法薬や高カロリー輸液の投与経路として使用されている。このカテーテルの存在は衣類の選択や着脱方法に影響を与える可能性がある。特に、カテーテルの挿入部位(鎖骨下や頸部など)や固定方法によっては、衣服との摩擦や引っかかりによる事故抜去のリスクがあるため、注意が必要である。現在は高用量メトトレキサート療法を実施中であり、点滴管理が必要な状況である。点滴ラインの存在は、特に上着の着脱時に配慮が必要となる。

発熱、吐気、倦怠感

A氏は来院時に体温38.2℃と発熱を認めたが、現在は体温36.5℃と解熱している。しかし、白血病治療中は骨髄抑制による免疫力低下に伴い、感染症のリスクが高く、発熱を繰り返す可能性がある。発熱時には体温調節のための衣類の調整が必要となるため、体温変動に応じた適切な衣類選択の支援が重要である。また、化学療法中は「変動」する可能性のある発熱パターンを考慮し、着脱しやすい衣類の選択が望ましい。

吐気に関する明確な記載はないが、高用量メトトレキサート療法中は嘔気・嘔吐の副作用が出現する可能性が高い。嘔吐時に衣服が汚染された場合の交換のしやすさや、吐気がある状態での着脱動作の負担軽減についても考慮が必要である。

倦怠感については「長時間の活動後は疲労感を訴える」状態であり、これは貧血(Hb 9.2g/dL)の影響による活動耐性の低下と関連している可能性がある。倦怠感は着脱動作の意欲や遂行能力に影響するため、エネルギー温存を考慮した着脱方法の工夫(動作の分割、休憩を挟むなど)や、着脱しやすい衣類の選択が重要である。また、化学療法のスケジュールによっては倦怠感が強い時期と軽減する時期があるため、状態に合わせた支援の調整も必要である。

ニーズの充足状況

A氏の衣類選択と着脱に関するニーズは、「衣類の着脱は自立している」との記載から、基本的には充足されていると考えられる。7歳という年齢では基本的な着脱動作が自立している発達段階であり、A氏もその段階に達していると評価できる。しかし、白血病治療中という特殊な状況下であるため、いくつかの課題が存在する。

まず、中心静脈カテーテルの存在は衣類選択に制約を与える可能性がある。カテーテル挿入部の保護と観察のしやすさ、点滴ラインの取り回しを考慮した衣類選択が必要である。また、病棟という環境下では、プライバシーの確保や温度管理、感染予防なども考慮した衣類選択が求められる。

さらに、化学療法による副作用(倦怠感、発熱、皮膚症状など)に対応するためには、着脱のしやすさや素材の快適性を重視した衣類選択が重要となる。特に、発汗、発熱、寒気などの体温調節機能の変動に対応できる調整可能な衣類(重ね着など)が望ましい。

現時点では着脱動作は自立しているが、治療の進行に伴う全身状態の変化や、特に貧血の進行、倦怠感の増強によっては、一時的に介助が必要となる可能性もある。そのような状況に備え、介助しやすい衣類の準備や、A氏の自立性を尊重した支援方法の検討も必要である。

学童期の発達課題としては、自分で衣類を選択する能力や好みの表現、季節や場面に応じた適切な衣類選択の学習などがある。長期入院により、これらの学習機会が制限される可能性もあるため、入院中でも年齢に応じた選択の機会を提供することが重要である。

健康管理上の課題として、①中心静脈カテーテル管理と衣類選択の両立、②治療に伴う体調変化(発熱、倦怠感など)に対応した衣類調整、③感染予防を考慮した衣類管理、④年齢に応じた自立性の促進が挙げられる。これらに対する看護介入としては、中心静脈カテーテルと衣類の関係についての説明と適切な衣類の提案、体調変化に応じた衣類調整の指導(重ね着の方法など)、清潔な衣類の確保と交換のタイミングの指導、自分で選択・管理できる範囲を尊重した支援などが重要である。また、家族に対しても、入院中に適した衣類の選択や持参物の調整についての指導を行うことが有効である。

今後も継続して観察すべき点としては、中心静脈カテーテル挿入部周囲の皮膚状態と衣類との関係、発熱や発汗のパターンと衣類調整の関連、倦怠感の程度と着脱動作への影響、治療スケジュールに応じた衣類ニーズの変化などが挙げられる。また、成長発達の視点からは、自己選択・自己決定の機会を通じた自立性の発達についても観察が必要である。さらに、退院後の生活を見据え、学校生活や季節変化に対応できる衣類選択と管理能力の獲得に向けた支援も計画的に進めていくことが重要である。特に、治療終了後も免疫抑制状態が継続する期間は感染予防に配慮した衣類管理が必要であり、この点についての家族教育も重要である。

バイタルサイン

A氏の来院時のバイタルサインは体温38.2℃、脈拍110回/分、呼吸数24回/分、血圧92/58mmHg、SpO2 98%(室内気)であり、発熱と頻脈、頻呼吸を認めていた。これは白血病の病態や感染症の影響と考えられる。現在のバイタルサインは体温36.5℃、脈拍88回/分、呼吸数20回/分、血圧94/60mmHg、SpO2 99%(室内気)と安定しており、治療による効果が認められる。体温は現在正常範囲内であるが、白血病治療中は骨髄抑制による好中球減少に伴い、感染症のリスクが高く、発熱を繰り返す可能性がある。特に、現在実施中の高用量メトトレキサート療法は骨髄抑制を引き起こすため、治療後の好中球減少期には感染リスクが高まる。また、化学療法薬自体による薬剤熱の可能性もあるため、体温変動のパターン観察が重要である。7歳児は成人と比較して体温調節機能が未熟であり、環境温の変化や活動量の変化による体温変動が生じやすい。さらに、体表面積に対する体積の比率が成人よりも大きいため、熱放散が盛んで体温低下が起こりやすいという特徴もある。

療養環境の温度、湿度、空調

療養環境の温度、湿度、空調に関する具体的な記載はないため、これらの情報収集が必要である。白血病治療中、特に骨髄抑制期には感染予防のための環境管理が重要であり、適切な温度・湿度の管理と空気清浄度の確保が求められる。一般的に小児病棟では室温22-26℃、湿度50-60%程度が目安とされるが、個人の快適性や治療状況に応じた調整が必要である。また、A氏は7歳児であり、自分で温度感覚を的確に表現したり、環境を調整したりする能力が十分に発達していない可能性があるため、客観的な観察と適切な環境調整の支援が必要である。中央空調システムの有無や個別調整の可能性、窓の開閉状況、日当たりの状況なども体温管理に影響するため、これらの情報収集も重要である。さらに、面会者の出入りや病室内の人数なども室温や感染リスクに影響するため、面会制限の状況についても確認が必要である。

発熱の有無、感染症の有無

現在のA氏の体温は36.5℃と正常範囲内であり、明らかな発熱は認められていない。入院時には38.2℃の発熱があり、この時点での白血球数増加(25,000/μL)と芽球(60%)の存在から、発熱は白血病そのものによる可能性が高いと考えられる。現在のWBCは3,500/μLと正常下限であり、化学療法による骨髄抑制の影響と推測される。CRPは入院時2.8mg/dLから現在0.3mg/dLと改善しており、炎症反応は沈静化していると考えられる。現時点での明らかな感染症の記載はないが、化学療法中は潜在的な感染リスクが高く、特に口内炎が存在することから口腔内感染のリスクがある。また、中心静脈カテーテルが挿入されているため、カテーテル関連血流感染症のリスクも考慮する必要がある。7歳児は自己の症状を適切に表現する能力が発達途上であり、感染初期症状の微細な変化を見逃さないよう注意深い観察が必要である。

ADL

A氏は「衣類の着脱は自立している」「移乗や排泄動作は自立している」との記載があり、基本的なADLは自立していると考えられる。また、「病棟内の歩行は可能」であるが、「長時間の活動後は疲労感を訴える」状態である。入浴については「付き添いのもとでシャワー浴を実施している」状況である。これらのADLの状況は、体温調節に関連して重要な情報である。特に、活動量の増減は熱産生に影響し、入浴やシャワー浴は熱放散に影響する。現在の状態では基本的なADLは自立しており、適切な活動と休息のバランスによる体温管理が可能であると考えられる。しかし、治療の進行に伴う全身状態の変化や、特に骨髄抑制期には活動量の低下や発熱のリスクがあるため、ADLの変化に応じた体温管理の支援が必要である。また、化学療法による末梢神経障害(特にビンクリスチンによる)が出現した場合、感覚異常により温度感覚が鈍麻する可能性があるため注意が必要である。

血液データ(WBC、CRP)

WBCは入院時25,000/μL(芽球60%)と著明に増加していたが、現在は3,500/μLと正常下限まで低下している。この変化は白血病の治療効果を反映していると考えられるが、同時に化学療法による骨髄抑制の影響も示唆している。CRPは入院時2.8mg/dLと上昇していたが、現在は0.3mg/dLと基準値上限まで低下しており、炎症反応の改善が認められる。これらの血液データからは、現時点で明らかな感染症の存在を示す所見はないが、WBCが正常下限であることから、今後の骨髄抑制の進行により感染防御能が低下するリスクが考えられる。特に高用量メトトレキサート療法後には、好中球数が著明に減少する時期(ナディア)があり、この時期の感染予防と早期発見が重要となる。また、血液データの評価にあたっては、7歳児の正常値を基準とした判断が必要であり、成人と比較して生理的にWBCやリンパ球の比率が高い傾向にあることを考慮する必要がある。

ニーズの充足状況

A氏の体温を生理的範囲内に維持するというニーズは、現時点では体温が36.5℃と正常範囲内であることから、充足されていると考えられる。しかし、白血病治療中という特殊な状況下では、骨髄抑制による感染リスクの増大や、化学療法薬による直接的な体温変動(薬剤熱など)、活動量の変化による熱産生の変化など、体温維持に影響を与える多くの要因が存在する。特に、7歳児は体温調節機能が発達途上であり、環境変化や活動変化に伴う体温変動が生じやすい特徴がある。また、自分の体温感覚を適切に表現する能力も発達途上であるため、客観的な観察と早期介入が重要である。現在のA氏は治療に対する理解も良好であり、家族の支援も得られているため、体温管理に関する教育的介入の効果も期待できる状況である。

健康管理上の課題として、①化学療法による骨髄抑制期の感染予防と早期発見、②口内炎や中心静脈カテーテルなど感染リスク因子の管理、③適切な環境調整による体温維持の支援、④体温変動時の適切な対応方法の教育が挙げられる。これらに対する看護介入としては、定期的なバイタルサイン測定と体温変動パターンの観察、感染予防策の徹底(手指衛生、環境清掃、接触制限など)、口腔ケアの実施と評価、中心静脈カテーテル挿入部の観察とケア、室温・湿度の適切な管理と調整、体温に応じた衣類・寝具の調整、発熱時の対応方法(解熱剤の使用、冷罨法の適用、水分摂取の促進など)の指導が重要である。また、A氏と家族に対して、発熱の意義や感染サインの早期発見方法、適切な体温管理方法についての教育も必要である。

今後も継続して観察すべき点としては、治療スケジュールと骨髄抑制の関連性の把握、好中球数の推移と感染リスクの評価、体温変動のパターンと発熱の性質(持続性、間欠性、弛張熱など)の観察、発熱に伴う他の症状(悪寒、戦慄、発汗、倦怠感など)の評価、解熱剤の効果と必要性の判断などが挙げられる。また、退院後の生活を見据え、家庭での体温管理方法や感染予防策、発熱時の対応と受診のタイミングについての具体的な指導計画も立案する必要がある。特に、治療終了後も免疫機能の回復には時間を要するため、長期的な感染予防の視点での教育が重要である。

自宅/療養環境での入浴回数、方法、ADL、麻痺の有無、鼻腔、口腔の保清、爪

A氏は7歳の男児で、自宅での入浴回数や方法についての具体的な記載はないため、家族からの情報収集が必要である。現在の療養環境では「入浴は付き添いのもとでシャワー浴を実施している」との記載がある。この状況から、完全に自立した入浴は困難であり、見守りや一部介助が必要な状態であると考えられる。これは7歳児の発達段階としては一般的であり、特に病院環境での入浴は不慣れな設備や、治療に伴う身体状態の変化により、付き添いが必要となるためと推測される。

ADLについては「移乗や排泄動作、衣類の着脱は自立している」との記載があり、基本的な日常生活動作は自立していると評価できる。また、「病棟内の歩行は可能」であるが「長時間の活動後は疲労感を訴える」状態である。これらの情報から、清潔保持に関わる基本的な動作(手洗いなど)は自立している可能性が高いが、長時間を要する入浴動作には疲労感による制約がある可能性がある。麻痺については記載がなく、神経学的症状は認められていないと考えられる。

口腔内の状態については「化学療法の副作用による口内炎があり」との記載があり、口腔内の清潔保持は特に重要である。口内炎の程度(グレード分類)や部位についての詳細情報は不足しているが、「口内痛のため水分や柔らかめの食事を好んでいる」ことから、ある程度の疼痛を伴う状態であると推測される。口腔ケアの具体的な方法や頻度、自立度についての情報は不足しているため、これらの情報収集が必要である。特に白血病治療中は骨髄抑制による免疫力低下があり、口腔内感染のリスクが高いため、適切な口腔ケアの実施状況の評価が重要である。

鼻腔の保清や爪に関する情報は記載されていない。鼻腔は口腔と同様に感染経路となる可能性があるため、清潔状態の確認が必要である。また、爪は特に小児では遊びや日常活動における細菌の温床となりやすく、衛生管理が重要である。さらに、化学療法による爪の変化(脆弱化など)の有無も確認する必要がある。これらの点についての情報収集を行い、適切な介入計画を立案することが重要である。

尿失禁の有無、便失禁の有無

尿失禁や便失禁に関する直接的な記載はないが、「排尿は問題なく、1日に5~6回ある」「排便は2~3日に1回程度である」との記載があり、排泄機能自体に問題はないと考えられる。また、「移乗や排泄動作は自立している」との記載から、排泄の自立性は確保されていると評価できる。7歳という年齢を考慮すると、通常は排泄の自立が確立している発達段階であり、A氏も同様であると推測される。

ただし、白血病治療中は下痢や便秘などの消化器症状が出現する可能性があり、特に抗がん剤の副作用として下痢が生じた場合には、緊急性を伴う排便となり失禁のリスクが高まる。現在は「抗がん剤の副作用による便秘傾向」があるとの記載があり、失禁のリスクは低いと考えられるが、治療内容の変更に伴い消化器症状も変化する可能性があるため、継続的な観察が必要である。

また、夜間の排尿については情報が不足している。特に睡眠障害がある状況では、夜間の排尿行動にも影響が生じる可能性があるため、夜間の排尿状況についても確認が必要である。さらに、発熱や多飲に伴う尿量増加時の対応能力についても評価することが重要である。

ニーズの充足状況

A氏の身体を清潔に保ち、身だしなみを整え、皮膚を保護するというニーズは、現時点では一定程度充足されていると考えられる。付き添いのもとでシャワー浴を実施することで基本的な全身清潔は維持されており、排泄の自立性も確保されている。ただし、白血病治療中という特殊な状況下では、いくつかの課題が存在する。

第一に、化学療法による骨髄抑制状態では感染リスクが高まるため、通常以上に厳密な清潔管理が必要となる。特に口内炎が存在する状況では口腔内感染のリスクが高く、適切な口腔ケアが重要である。また、中心静脈カテーテルが挿入されており、カテーテル挿入部の清潔保持も重要な課題である。これらの医療デバイス関連の清潔管理については情報が不足しているため、現状の評価と適切な介入が必要である。

第二に、化学療法に伴う皮膚や粘膜の変化(乾燥、脆弱化、色素沈着など)が生じる可能性があり、特別なスキンケアが必要となる場合がある。現時点での皮膚状態に関する詳細情報は不足しているため、全身の皮膚状態の詳細な観察と評価が必要である。

第三に、7歳児という発達段階を考慮すると、清潔習慣の獲得と自立が重要な課題である。入院環境では自宅と異なる制約があり、自立した清潔行動の機会が制限される可能性がある。A氏の清潔習慣に関する知識や技術、自立への意欲などについての情報収集も必要である。

健康管理上の課題として、①化学療法中の感染予防のための適切な清潔管理、②口内炎に伴う口腔ケアの強化、③中心静脈カテーテル挿入部の管理、④皮膚の乾燥や脆弱化に対するスキンケア、⑤年齢に応じた清潔習慣の自立支援が挙げられる。これらに対する看護介入としては、感染予防の視点からの清潔ケア指導(手洗い方法、入浴後のスキンケア、爪の手入れなど)、口内炎に対する適切な口腔ケア(痛みに配慮した方法、頻度、使用物品の選択など)、中心静脈カテーテル挿入部の観察とドレッシング管理、皮膚の状態に合わせた保湿ケアや摩擦・圧迫の予防、年齢に応じた清潔習慣の教育と自立支援(手順の視覚化、成功体験の提供など)が重要である。

また、家族に対しても、入院中の清潔ケアへの参加方法や、退院後の自宅での清潔管理方法について指導することが重要である。特に、白血病治療は長期にわたるため、治療段階に応じた清潔ケアの方法や注意点について段階的に指導することが必要である。

今後も継続して観察すべき点としては、口内炎の進行度や治癒過程、皮膚統合性の維持状況(特に圧迫部位や摩擦が生じやすい部位)、中心静脈カテーテル挿入部の状態、治療の進行に伴う皮膚や粘膜の変化(特に薬剤によるアレルギー反応や色素沈着)、清潔行動の自立度の変化などが挙げられる。また、季節の変化に伴う皮膚状態の変化(乾燥など)や発汗量の変化にも注意が必要である。

さらに、長期的な視点では、治療終了後の清潔習慣の再確立や、治療による晩期合併症(皮膚変化など)のモニタリングも重要である。特に、化学療法による皮膚や爪の変化は治療終了後も持続する可能性があるため、継続的な観察と適切なケア方法の指導が必要である。また、学校生活復帰後の清潔習慣の維持や、同年代の子どもとの交流の中での身だしなみについても配慮した支援が望ましい。

危険箇所(段差、ルート類)の理解、認知機能、術後せん妄の有無

A氏は7歳の男児で、「認知力は年齢相応で良好である」「治療や処置に対する理解も良好である」との記載があり、基本的な認知機能は保たれている。学童期前半の発達段階であるため、論理的思考や因果関係の理解は発達途上である。環境内の危険箇所に対する認識は形成されつつあるが、完全ではなく、特に病院という不慣れな環境での危険予測能力は限定的である可能性がある。中心静脈カテーテルを挿入しており、このルート類の取り扱いに関する理解や注意力は、年齢的特性から十分でない可能性がある。特に、活発で明るい性格であることから、遊びに夢中になった際にルート類を引っ張ってしまうリスクが考えられる。また、「入院環境への適応と治療の影響で入眠困難と中途覚醒がみられる」ことから、睡眠不足による注意力低下も考慮する必要がある。

術後せん妄については該当しないが、化学療法、特にステロイド投与による精神状態への影響が考えられる。「ステロイド投与中は特に不眠が強く」との記載があり、ステロイドによる気分変調や行動変化が生じる可能性がある。実際の行動変化についての具体的記載はないため、プレドニゾロン投与中の精神状態や行動変化について詳細な観察と記録が必要である。また、高用量メトトレキサート療法による中枢神経系への影響も考慮すべきであり、投与中・投与後の意識レベルや行動変化の観察が重要である。

皮膚損傷の有無

皮膚損傷に関する直接的な記載はないが、入院時には「両下肢と体幹に点状出血斑を認めた」との記載がある。これは血小板減少(入院時2.0×10^4/μL)による出血傾向を反映していると考えられる。現在の血小板数は15.0×10^4/μLと改善しているが、治療の進行に伴い再度低下する可能性があり、出血リスクには継続的な注意が必要である。特に、活発な7歳児では転倒や衝突による外傷のリスクがあり、骨髄抑制期には軽微な外力でも皮下出血や粘膜出血を生じる可能性がある。また、化学療法による皮膚の脆弱化や粘膜障害も考慮すべきであり、特に口内炎の存在は記載されているが、その他の皮膚・粘膜障害の有無についての情報収集が必要である。さらに、中心静脈カテーテル挿入部の皮膚状態(発赤、腫脹、疼痛、浸出液の有無など)の詳細評価も重要である。

感染予防対策(手洗い、面会制限)

感染予防対策については、「医師からは、化学療法中の感染予防として手洗いの徹底と人混みを避けることの指導があった」との記載がある。しかし、実際の手洗い実施状況や理解度、面会制限の具体的内容についての記載はない。白血病治療中、特に骨髄抑制期には厳重な感染予防策が必要であり、特に7歳児の場合、手洗いなどの衛生行動の自立度やその一貫性には個人差がある。A氏の手洗いの技術や習慣化の状況、家族の感染予防に対する理解度と協力状況について評価する必要がある。また、面会者の制限基準や面会時の感染予防策(マスク着用、手指消毒など)の実施状況についても確認が必要である。さらに、環境整備の状況(病室の清掃、おもちゃや持ち物の消毒など)や、医療者の感染対策(標準予防策の遵守など)についても評価することが重要である。特に、現在実施中の高用量メトトレキサート療法後は好中球減少が予測されるため、この時期に向けた感染予防策の強化計画も必要である。

血液データ(WBC、CRP)

WBCは入院時25,000/μL(芽球60%)と著明に増加していたが、現在は3,500/μLと正常下限まで低下している。CRPは入院時2.8mg/dLから現在0.3mg/dLと改善し、炎症反応は沈静化している。これらの血液データからは、白血病の治療効果と共に、化学療法による骨髄抑制が生じていることが窺える。現時点では好中球数は正常下限程度と推測されるが、今後の高用量メトトレキサート療法後には好中球減少が進行し、感染リスクが高まることが予測される。また、骨髄抑制は白血球系だけでなく血小板系にも影響し、出血リスクも上昇する可能性がある。このように、血液データの変動は感染リスクや出血リスクに直結するため、定期的な評価と、それに基づいた環境調整や活動制限の見直しが重要である。特に、小児の場合、活動意欲や好奇心と安全確保のバランスを考慮した個別的な対応が必要である。

ニーズの充足状況

A氏の環境の危険因子を避け、他人を傷害しないようにするというニーズは、現時点では一定程度充足されていると考えられる。認知機能が年齢相応に保たれており、基本的な治療理解も良好であることから、危険回避のための基本的な指示理解と協力は得られる状況にある。ただし、7歳という年齢を考慮すると、危険予測能力や自己制御能力はまだ発達途上であり、特に遊びに夢中になった状態や疲労時、ステロイド投与による精神状態変化時には注意力が低下する可能性がある。

また、白血病治療中という特殊な状況下では、通常の小児期の発達課題に加えて、治療に伴う特有の危険因子(免疫抑制による感染リスク、血小板減少による出血リスク、中心静脈カテーテル管理など)が存在する。これらのリスクに対する理解と対策は、A氏の年齢では完全には期待できず、医療者や家族による継続的な監視と支援が必要である。特に、活発で明るい性格の7歳児にとって、長期間の活動制限や感染予防策の遵守は困難な場合も多く、発達段階に応じた説明と動機づけが重要である。

健康管理上の課題として、①中心静脈カテーテル管理と事故抜去防止、②骨髄抑制に伴う感染・出血リスク管理、③年齢に応じた危険予測と回避能力の育成、④治療薬(特にステロイド)による精神状態変化への対応、⑤長期入院に伴う環境リスクの継続的評価が挙げられる。これらに対する看護介入としては、中心静脈カテーテルの適切な固定と保護(衣服の選択、活動時の固定強化など)、骨髄抑制期の感染予防と外傷予防の強化(環境整備、活動調整、面会制限など)、年齢に応じた安全教育(視覚的教材の活用、繰り返しの説明、ポジティブフィードバックなど)、ステロイド投与中の行動観察と環境調整(刺激の軽減、安全な活動の提供など)、病室環境の定期的な安全評価と改善(ベッド周囲の整理、転倒リスク評価など)が重要である。

また、家族への支援も重要であり、特に母親(キーパーソン)に対して、感染予防や安全確保の方法、危険サインの早期発見と報告の重要性などを指導することが必要である。さらに、多職種連携による安全管理も重要であり、医師、看護師、薬剤師、保育士など様々な職種が協働して、A氏の安全を確保するための体制を構築することが望ましい。

今後も継続して観察すべき点としては、血液データの推移と感染・出血リスクの評価、中心静脈カテーテル挿入部の状態、ステロイド投与と行動変化の関連性、治療の進行に伴う新たな症状や副作用の出現、学習した安全行動の維持状況などが挙げられる。また、長期的な視点では、退院後の自宅や学校での安全管理方法についても、段階的に指導していくことが重要である。特に、治療終了後も免疫機能の回復には時間を要するため、日常生活における感染予防策の継続について、A氏本人と家族の理解を促進する必要がある。

表情、言動、性格は問題ないか、家族や医療者との関係性

A氏は7歳の男児で、「性格は活発で明るく、友達が多い」との記載があり、基本的に社交的で開放的な性格傾向を持っていると考えられる。現在の入院生活における具体的な表情や言動についての詳細な記載は限られているが、「病棟スタッフや家族の支援により精神的に安定している」とあることから、基本的な感情表現や対人関係には大きな問題はないと推測される。ただし、「長期間の入院に対して時に不安や寂しさを表出する」との記載があり、入院の長期化に伴う心理的ストレスが存在していることが窺える。このような感情表出は、7歳児として健全な反応であり、むしろ自分の感情を適切に表現できる能力を示している。

家族との関係性については、母親が毎日付き添いをしており、父親は仕事の合間に面会に来ている状況である。母親がキーパーソンとして機能しており、A氏と母親との間に安定した関係性が形成されていると考えられる。また、妹との関係性についても「妹は週末に面会に来ることがあり、A氏は妹と会うと嬉しそうにしている」との記載から、良好な兄妹関係が窺える。両親からは「治療がうまくいっていると聞いて安心しています。できるだけ普通の生活に戻れるよう支えたい」との言葉が聞かれ、家族全体としてA氏の治療と回復を支援する体制が整っていると評価できる。

医療者との関係性については、「医療スタッフとも積極的に会話する」「治療や処置に対する理解も良好である」との記載から、医療者との基本的なコミュニケーションは良好であり、治療への協力的な姿勢も見られる。ただし、具体的な信頼関係の構築状況や、不安や恐怖を表出する場面での医療者の対応についての詳細情報は不足しているため、さらなる観察と情報収集が必要である。特に、侵襲的な処置(骨髄穿刺、髄腔内投与など)に対する恐怖感や不安の表現方法と、それに対する医療者の支援状況についての評価が重要である。

言語障害、視力、聴力、メガネ、補聴器

視力、聴力については「視力、聴力ともに正常である」との記載があり、感覚器障害はないと考えられる。メガネや補聴器の使用についての記載はないが、これらの記載から視聴覚補助具は不要であると推測される。言語障害についての直接的な記載はないが、「コミュニケーションは年齢相応に良好」「医療スタッフとも積極的に会話する」との記載から、言語発達や言語機能には大きな問題はないと考えられる。7歳という年齢からは、基本的な言語能力が確立し、複雑な会話や抽象的な表現も徐々に理解できる発達段階にある。ただし、化学療法の副作用として口内炎があることから、痛みによる発語の制限や意欲低下が一時的に生じる可能性があり、この点についての観察と配慮が必要である。また、中枢神経系への予防的治療(メトトレキサートの髄腔内投与)が実施されていることから、これによる言語機能への影響についても注意深い観察が求められる。

認知機能

A氏の認知機能については「認知力は年齢相応で良好である」との記載があり、7歳児として適切な発達段階にあると考えられる。治療や処置に対する理解も良好であるとの記載から、状況理解力や因果関係の理解なども発達しており、基本的な説明を理解し、それに基づいて行動する能力を有していると評価できる。学童期前半の認知発達段階としては、具体的操作期にあり、論理的思考や分類能力が発達しつつあるが、まだ抽象的な概念理解は限定的である。そのため、白血病という疾患や治療の複雑な側面については、年齢に適した説明と理解の確認が継続的に必要である。特に、治療の長期的な見通しや、症状と治療の関連性については、具体的な表現や視覚的補助を用いた説明が効果的である。また、ステロイド投与中は不眠や精神状態の変化が生じる可能性があり、これが一時的に認知機能や情報処理能力に影響する可能性があるため、投与スケジュールに合わせた観察と支援の調整が必要である。

面会者の来訪の有無

面会者については、母親が毎日付き添いをしており、父親は仕事の合間に面会に来ている状況である。また、「妹は週末に面会に来ることがある」との記載がある。これらの情報から、家族からの定期的な面会があり、情緒的支援が提供されていると考えられる。さらに、「学校との連携も図られており、担任の先生から励ましのメッセージや学級の様子が届けられている」との記載から、学校からの情報提供や励ましもあることが窺える。ただし、友人の面会についての記載はなく、同年代との交流状況については情報が不足している。A氏は「早く学校に戻りたい。友達と遊びたい」と話しており、友人関係の維持や同年代との交流に対する欲求が表現されている。学童期における同年代との交流は重要な発達課題であり、特に「友達が多い」A氏にとって、この制限は大きなストレス要因となる可能性がある。感染予防の観点から面会制限が必要である一方で、代替的な交流方法(手紙、ビデオ通話など)の活用状況についても評価する必要がある。

ニーズの充足状況

A氏の自分の感情、欲求、恐怖あるいは”気分”を表現して他者とコミュニケーションを持つというニーズは、基本的には充足されていると考えられる。「長期間の入院に対して時に不安や寂しさを表出する」「早く学校に戻りたい。友達と遊びたい」と自分の気持ちを表現できていることから、感情表現の能力自体には問題がないと評価できる。また、家族や医療者との良好な関係性が構築されており、基本的なコミュニケーション環境は整っていると考えられる。

しかし、長期入院という状況下では、いくつかの課題も存在する。第一に、白血病という重篤な疾患と長期的な治療過程に対する不安や恐怖は、7歳児が完全に理解し言語化することが難しい場合がある。表面的には適応しているように見えても、内面では様々な感情が混在している可能性があり、言語以外の表現方法(遊び、描画など)を通じた感情の評価も重要である。第二に、同年代との交流制限は、社会的コミュニケーション能力の発達機会を制限する可能性がある。特に「活発で明るく、友達が多い」A氏にとって、この制限は大きな喪失感をもたらす可能性がある。第三に、治療の副作用(口内炎、倦怠感、ステロイドによる気分変動など)は、コミュニケーションの意欲や方法に影響を与える可能性がある。

健康管理上の課題として、①治療過程における不安や恐怖の適切な表現と対処支援、②長期入院による社会的交流制限への対応、③年齢に応じた疾患・治療理解の促進、④治療の副作用がコミュニケーションに与える影響への対応、⑤家族を含めた心理的サポート体制の強化が挙げられる。これらに対する看護介入としては、年齢に適した説明と理解確認(絵本、模型、人形などの活用)、感情表現の多様な機会提供(遊び療法、芸術療法など)、同年代との代替的交流方法の工夫(手紙、ビデオメッセージ、オンライン交流など)、治療スケジュールに合わせた心理的支援の強化(特に侵襲的処置前後や副作用出現時)、家族への心理的サポートと効果的なコミュニケーション方法の指導などが重要である。

また、多職種連携によるサポートも重要であり、医師、看護師だけでなく、小児科専門の心理士、保育士、院内学級教師などとの協働により、A氏の心理的・社会的ニーズに対応していくことが望ましい。

今後も継続して観察すべき点としては、治療の進行に伴う心理状態の変化(特に侵襲的処置前後や副作用出現時)、治療の長期化に伴う感情表現の変化(退行現象、感情の抑制、攻撃性の出現など)、家族関係の変化(特に両親の疲労や妹との関係性)、学校や友人関係の維持状況などが挙げられる。また、治療終了後の社会復帰(学校復帰など)に向けた準備も重要であり、徐々に社会的交流の機会を増やしていくための計画立案も必要である。特に、白血病治療を経験した子どもは、治療終了後も心理的影響が持続する可能性があり、長期的な心理的サポート体制の構築も視野に入れた支援が重要である。

信仰の有無、価値観、信念、信仰による食事

A氏の家族については「家族に特定の宗教的信仰はない」との記載がある。しかし、信仰がなくとも、家族として大切にしている価値観や信念、生活習慣などが存在する可能性がある。これらについての詳細情報は不足しているため、A氏や家族の生活における重要な価値観や日常的な習慣、特別な行事や記念日などについて情報収集する必要がある。特に日本の文化的背景では、特定の宗教に所属していなくても、季節の行事や慣習が生活の中に根付いていることが多い。例えば、七五三、こどもの日、お正月、お盆などの行事や、初詣、墓参りなどの習慣が家族の生活リズムや価値観の中に組み込まれている可能性がある。これらの家族文化や価値観は、長期入院中のA氏の精神的安定や生活の質に影響を与える要素となりうる。

食事に関しては、「入院前は食欲旺盛で好き嫌いなく食事を摂取していた」との記載がある。特定の宗教的理由による食事制限はないと考えられるが、家族の食習慣や食に対する考え方(例:食事を共にすることの大切さ、特別な日の特別な食事など)についての理解も必要である。また、卵アレルギーがあるとの記載があり、これは医学的な理由による食事制限に該当するが、アレルギーがあることで食事に対するA氏や家族の不安や懸念がある可能性もあり、この点についても確認が必要である。

7歳という年齢を考慮すると、宗教的な概念や信仰の意味を完全に理解するのは難しい発達段階にあるが、家族の価値観や習慣から学び、徐々に自分自身の道徳観や価値観を形成していく時期である。このような発達的視点からも、A氏が家族から受け継いでいる価値観や、大切にしていることについての理解を深めることが重要である。

治療法の制限

特定の宗教的信仰がないとの記載から、宗教的理由による治療法の制限はないと考えられる。A氏は現在、標準リスク群としての治療プロトコールに従い、B前駆細胞型急性リンパ性白血病に対する化学療法を受けている。寛解導入療法を終え、現在は地固め療法中である。この治療経過から、家族は医学的治療を受け入れており、治療方針に対する大きな抵抗や制限要求はないと推測される。

ただし、治療に対する家族の考え方や懸念、特に侵襲的な処置(中心静脈カテーテル挿入、骨髄穿刺、髄腔内投与など)に対する不安や抵抗感については、詳細な情報が不足している。両親からは「治療がうまくいっていると聞いて安心しています。できるだけ普通の生活に戻れるよう支えたい」との言葉が聞かれることから、治療に対する基本的な理解と受容姿勢が窺えるが、治療の詳細や副作用に対する具体的な認識や、治療に対する家族なりの意味づけについては、さらなる情報収集が必要である。

また、7歳児であるA氏自身の治療に対する理解や感じ方、特に痛みを伴う処置に対する恐怖感や、長期間の治療に対する受け止め方についても考慮する必要がある。「治療や処置に対する理解も良好である」との記載があるが、具体的にどの程度理解しているか、どのような心理的支援が効果的かについては、継続的な評価が重要である。

ニーズの充足状況

A氏と家族の信仰に関するニーズは、特定の宗教的信仰がないとの記載から、宗教的儀式や礼拝に関する直接的なニーズは少ないと考えられる。しかし、信仰がなくとも、すべての人間には生きる意味や目的、価値観、精神的なつながりを求めるスピリチュアルなニーズが存在する。特に生命を脅かす疾患である白血病と診断され、長期にわたる治療を受けるという状況は、A氏や家族のスピリチュアリティに大きな影響を与える可能性がある。

A氏は7歳であり、スピリチュアルな概念を成人のように理解することは難しいが、「なぜ自分が病気になったのか」「どうして長い間入院しなければならないのか」といった実存的な問いを抱いている可能性がある。これらの問いに対する年齢に応じた説明や、A氏なりの意味づけを支援することが重要である。

家族にとっては、子どもの重篤な病気という予期せぬ出来事に直面し、「なぜ私の子どもが」という気持ちがあったとの記載がある。この感情は多くの親が経験するもので、自然な反応である。現在は「医療者の説明を理解し、積極的に治療に参加している」状態であり、初期の衝撃から適応段階に移行していると考えられるが、治療の長期化に伴う不安や疑問、時には怒りや悲しみなど様々な感情が生じる可能性もある。これらの感情表出を受け止め、家族のスピリチュアルな支援ニーズを継続的に評価することが重要である。

健康管理上の課題として、①A氏と家族の価値観や信念の尊重、②病気や治療に対する意味づけの支援、③長期入院中の精神的安定の維持、④成長発達に必要な精神的・文化的体験の確保が挙げられる。これらに対する看護介入としては、A氏と家族の価値観や大切にしていることについての理解を深め、それらを尊重した関わりを行うこと、年齢に応じた病気や治療の説明と、A氏なりの理解や疑問に寄り添うこと、家族の感情表出を受け止め、必要に応じて心理的サポートや専門家(臨床心理士など)への橋渡しを行うこと、入院中でも季節の行事や家族の大切にしている習慣を可能な範囲で継続できるよう支援することなどが重要である。

特に、A氏が「早く学校に戻りたい。友達と遊びたい」と述べていることから、学校生活や友人関係を大切にしていることが窺える。これらの価値観を尊重し、入院中でも学習の継続や友人とのつながりを保つための支援(例:院内学級への参加、手紙やビデオ通話による友人との交流など)を行うことも重要である。

また、母親が毎日付き添い、父親も面会に来ており、妹との交流もあることから、家族のつながりが大切にされていることがわかる。この家族の絆を支援し、家族が共に過ごす時間の質を高めるための配慮(例:プライバシーの確保、家族での食事の時間の調整など)も必要である。

今後も継続して観察すべき点としては、治療の進行に伴うA氏と家族の心理状態の変化、特に治療効果や副作用に対する反応、長期入院による精神的疲労の徴候、家族のコーピング方法と効果、A氏の成長発達に伴う理解度や疑問の変化などが挙げられる。また、退院後の生活への移行期においても、病気体験がA氏と家族の価値観や人生観にどのような影響を与えたかを評価し、必要に応じて支援を継続することが重要である。

さらに、白血病の治療は長期にわたり、維持療法も含めると約2年間の治療期間となる。この間の季節の変化や学年の進級、家族の生活状況の変化なども考慮し、A氏と家族の価値観や重要視するものの変化にも柔軟に対応していく必要がある。特に、治療が進むにつれて、A氏自身の理解力や意思表示も発達していくため、常に発達段階に応じた関わりを心がけることが重要である。

職業、社会的役割、入院

A氏は7歳の男児であり、小学校2年生である。職業としての仕事はないが、発達段階における重要な役割として「児童」であり、「学習者」としての役割を持っている。また、家族内では「息子」「兄」としての役割、サッカークラブでは「メンバー」としての役割など、年齢相応の社会的役割を担っていると考えられる。A氏は白血病と診断され、4月10日から入院治療中であり、現在は地固め療法の段階にある。長期的な入院治療により、学校生活への参加が制限され、「児童」「学習者」としての役割遂行が困難な状況にある。また、サッカークラブの活動にも参加できず、通常の社会活動から一時的に離脱している状態である。

学校との連携については「学校との連携も図られており、担任の先生から励ましのメッセージや学級の様子が届けられている」との記載がある。これにより、学校とのつながりは部分的に維持されているが、クラスメイトとの日常的な交流や学校での学習活動という重要な側面は制限されている。A氏自身も「早く学校に戻りたい。友達と遊びたい」と述べており、学校生活への復帰を望んでいる様子が窺える。

7歳の学童期は、エリクソンの発達理論によれば「勤勉性 対 劣等感」の段階にあたり、学習や技術の習得を通じて達成感や有能感を得ることが重要な発達課題である。この時期の子どもにとって、学校での学習や友人との活動、クラブ活動などは達成感を得る重要な機会となる。しかし、入院によりこれらの活動が制限されているため、代替となる達成感を得られる活動の提供が必要である。

疾患が仕事/役割に与える影響

A氏の白血病という疾患は、その治療の特性から長期間の入院と活動制限を必要とし、学童期の社会的役割遂行に大きな影響を与えている。標準的な治療プロトコールでは、寛解導入療法、地固め療法、再寛解導入療法を経て、約2年間の維持療法が必要とされる。このような長期的な治療経過は、学校生活やサークル活動など、A氏の社会的活動に継続的な影響をもたらす。

学校生活への影響としては、クラスメイトとの日常的な交流の欠如、集団での学習経験の不足、学校行事への不参加などが考えられる。特に小学校低学年は基礎的な学習習慣や社会性を形成する重要な時期であり、長期欠席による学習の遅れや社会的スキルの発達への影響が懸念される。ただし、「学校との連携も図られており」との記載から、何らかの学習支援や情報共有が行われていることが推測されるが、具体的な内容(院内学級の利用状況、訪問教育の有無など)については情報が不足しているため、これらの情報収集が必要である。

また、「性格は活発で明るく、友達が多い」「サッカークラブに所属して週2回の練習に参加していた」との記載から、A氏は社交的で活動的な児童であると考えられる。このような特性を持つ児童にとって、友人関係の制限や身体活動の制約は大きな喪失体験となる可能性がある。特に、急性リンパ性白血病の治療中は活動制限や感染予防のための隔離措置が必要となる場合もあり、社会的交流の機会が著しく減少することが予想される。

家族内の役割についても、入院により変化が生じる可能性がある。「妹は週末に面会に来ることがあり、A氏は妹と会うと嬉しそうにしている」との記載から、兄としての役割に喜びを感じていることが窺えるが、日常的な兄妹関係の維持が困難な状況である。また、両親との関係についても、入院による依存度の増加や役割の変化(例:自立していた部分での依存の増加)が生じていると考えられる。

ニーズの充足状況

A氏の達成感をもたらすような仕事をするというニーズは、現在の入院状況において十分に充足されているとは言い難い。学校生活やサッカークラブ活動など、これまで達成感を得ていた主要な活動が制限されているためである。ただし、「治療や処置に対する理解も良好である」との記載から、治療に対する協力的な姿勢が窺え、治療過程への参加という形での役割意識は形成されつつあると考えられる。また、「医療スタッフとも積極的に会話する」との記載から、入院環境での新たな対人関係の構築にも取り組んでいることが窺える。

7歳の発達段階においては、単純な作業の完遂や、小さな挑戦の成功体験を通じて達成感を得ることができる。入院生活においても、年齢に応じた目標設定と達成体験の機会を意図的に設けることで、勤勉性の発達を支援することが可能である。例えば、治療に関連した小さな目標(薬を自分で管理する、処置の前に自分で準備するなど)や、入院生活における役割(植物の水やり係、自分のベッド周囲の整理など)を設けることで、達成感を得る機会を創出できる。

学習面については、「認知力は年齢相応で良好である」との記載から、学習能力自体には問題がないと考えられるため、入院中でも年齢に応じた学習活動を継続することが重要である。ただし、治療による体調変動や倦怠感があるため、体調に合わせた学習計画と、成功体験が得られるような適切な難易度の設定が必要である。

健康管理上の課題として、①入院中の学習継続と学校復帰への準備、②年齢に応じた達成感を得られる活動の提供、③社会的交流の維持と促進、④長期治療における役割の再構築と自己効力感の育成が挙げられる。これらに対する看護介入としては、院内学級や訪問教育の調整と活用促進、体調に合わせた個別学習計画の支援、入院生活における小さな役割や目標の設定と達成の援助、同年代の子どもとの交流機会の創出(可能であれば他の入院児との交流など)、治療への参加意識の強化(治療計画の説明や選択肢の提供など)、家族と共に行う活動の支援(工作、ゲーム、読書など)が重要である。

また、多職種連携による包括的支援も効果的であり、医師、看護師だけでなく、保育士、院内学級教師、心理士などと協働し、A氏の発達段階に応じた達成感促進プログラムを検討することが望ましい。

今後も継続して観察すべき点としては、学習意欲の維持状況、達成感を得られる活動に対する反応、治療の進行に伴う体調変化と活動能力の関係、社会的交流への関心と参加状況、家族内での役割意識の変化などが挙げられる。また、長期的な視点では、学校復帰に向けた準備状況や不安の有無、サークル活動などへの復帰に関する意向なども評価していく必要がある。特に、治療終了後の学校生活再開時には、学習の遅れや対人関係の変化に伴う困難が生じる可能性があるため、前もっての支援計画立案が重要である。

さらに、成長発達の視点からは、今回の病気体験がA氏のアイデンティティ形成や将来の職業選択にも影響を与える可能性がある。そのため、A氏が自分の病気体験をどのように意味づけ、どのような強みを獲得しているかという点についても、発達段階に応じた理解と支援を提供することが重要である。

趣味、休日の過ごし方、余暇活動

A氏は7歳の男児で、入院前はサッカークラブに所属して週2回の練習に参加するなど、活発に体を動かす活動を好んでいたことが窺える。サッカー以外の趣味や休日の過ごし方、余暇活動についての詳細な記載はないため、この点についての情報収集が必要である。「性格は活発で明るく、友達が多い」という記載から、A氏は社交的で外向的な特性を持ち、友人との交流を通じた遊びや活動を好む可能性が高い。また、「早く学校に戻りたい。友達と遊びたい」という発言からも、同年代の子どもとの交流を通じた遊びに価値を見出していることが推測される。

7歳児の発達段階としては、ルールのある集団遊びやスポーツ、競争的な遊び、構成的な遊び(ブロック、工作など)、読書や描画などの静的な活動も楽しむ時期である。また、この年齢では、遊びを通じて社会的スキルの獲得や達成感の体験、自己効力感の向上などの発達課題を達成していく。白血病と診断され入院している現在、これらの通常の遊びや余暇活動が制限されている状況にあるため、入院環境下での代替的な遊びや活動の提供が重要である。

学校生活や家庭での日常のルーティンについての情報も不足しているため、入院前の生活リズムや遊びのパターン、好きな玩具や遊び道具、読書や視聴するメディアの好みなどについても情報収集することで、より個別的なレクリエーション計画の立案が可能となる。

入院、療養中の気分転換方法

現在の入院中における気分転換方法についての具体的な記載はないため、この点についての情報収集が必要である。入院環境では活動範囲や使用できる遊具、交流相手などが制限されるため、自宅や学校とは異なる気分転換方法が必要となる。特に白血病治療中は、感染予防のための隔離措置や、化学療法の副作用による活動制限があり、通常の遊びや活動が困難な場合もある。

A氏の場合、「病棟内の歩行は可能となっているが、長時間の活動後は疲労感を訴える」状態であり、活動耐性が低下している。また、「化学療法の副作用による口内炎があり」、「ステロイド投与中は特に不眠が強く」といった治療に伴う症状も見られるため、体調や治療スケジュールに合わせた気分転換活動の調整が必要である。

現在の療養環境において、母親が毎日付き添い、父親も仕事の合間に面会に来ており、妹は週末に面会に来ることがあるとの記載がある。家族との交流は重要な気分転換となっていると推測されるが、家族との具体的な活動内容(一緒に行う遊びや会話、読み聞かせなど)についての情報も収集する必要がある。また、病棟内の他の子どもとの交流状況や、医療スタッフとの関わりの中での遊びや活動についても確認が重要である。

学校との連携が図られており、担任からのメッセージや学級の様子が届けられているとの記載があるが、学習活動自体も重要な気分転換となりうる。院内学級への参加状況や、病室での学習活動、他の療養児との交流学習の機会などについても情報を収集し、学習と遊びを統合したアプローチを検討することが望ましい。

運動機能障害

A氏には明らかな運動機能障害の記載はなく、「病棟内の歩行は可能」であり、「移乗や排泄動作、衣類の着脱は自立している」状態である。基本的な運動機能自体には問題はないと考えられるが、白血病治療に伴う二次的な影響として、貧血(Hb 9.2g/dL)による活動耐性の低下がみられる。「長時間の活動後は疲労感を訴える」状態であり、これは持続的な遊びや活動に制約をもたらす要因となる。

また、化学療法薬(特にビンクリスチン)による末梢神経障害のリスクがあり、これが進行すると協調運動の障害や感覚異常をもたらす可能性がある。現時点では明らかな神経症状の記載はないが、治療の進行に伴う神経学的症状の出現には注意が必要である。

さらに、血小板数は現在15.0×10^4/μLと正常範囲内であるが、治療の進行に伴い変動する可能性があり、出血リスクを考慮した活動制限が必要となる場合もある。特に、活発な遊びや身体接触を伴うレクリエーションについては、血液データの推移に応じた適切な判断が重要である。

中心静脈カテーテルを挿入しているため、このデバイスの保護と事故抜去防止も考慮した活動選択が必要である。カテーテルの位置や固定状態によっては、特定の体位や動作に制限が生じる可能性もある。

認知機能、ADL

A氏の認知機能については「認知力は年齢相応で良好である」との記載があり、7歳児として適切な発達段階にあると考えられる。「治療や処置に対する理解も良好である」ことから、状況理解力や指示理解能力も十分であると評価できる。これらの認知機能は、ルールのある遊びやゲーム、年齢に適した学習的遊びを楽しむ上で重要な基盤となる。

ADLについては「移乗や排泄動作、衣類の着脱は自立している」との記載から、基本的な日常生活動作は自立していると評価できる。入浴については「付き添いのもとでシャワー浴を実施している」状況であるが、これは7歳児としては一般的であり、特に病院環境では安全面からの配慮と考えられる。これらのADL状況から、基本的な遊びや活動への参加には大きな制約はないと考えられるが、体調変動や治療スケジュールに伴う一時的な活動制限は考慮する必要がある。

また、「入院環境への適応と治療の影響で入眠困難と中途覚醒がみられる」との記載があり、特に「ステロイド投与中は不眠が強い」状態である。睡眠の質や量の低下は日中の活動性や集中力、気分に影響を与える可能性があり、遊びやレクリエーションの計画においても考慮すべき要素である。

ニーズの充足状況

A氏の遊びやレクリエーションに参加するというニーズは、現在の入院状況において十分に充足されているとは言い難い。入院前はサッカークラブに所属し活発に活動していたA氏にとって、病院環境での活動制限は大きな変化である。「早く学校に戻りたい。友達と遊びたい」との発言からも、同年代との交流や通常の遊び環境への復帰を望んでいることが窺える。

7歳という発達段階における遊びの意義を考慮すると、単なる気晴らしではなく、認知的発達、社会的スキルの獲得、情緒的発達、身体的発達など多面的な意義を持つ活動である。特に、エリクソンの発達理論における「勤勉性 対 劣等感」の段階にあるA氏にとって、遊びや活動を通じた達成感の体験は重要な発達課題である。

現在の入院環境において、A氏の遊びやレクリエーションニーズを充足するためには、①体調や治療スケジュールに合わせた活動計画、②個別の興味や好みに応じた活動の提供、③同年代との交流機会の創出、④家族との質の高い交流時間の確保、⑤学習と遊びを統合したアプローチなどが重要である。

健康管理上の課題として、①治療による体調変動に対応した遊びとレクリエーションの調整、②長期入院による発達課題達成の支援、③社会的孤立の予防と交流機会の創出、④身体活動制限下での代替的な活動提供が挙げられる。これらに対する看護介入としては、体調や検査値に合わせた活動レベルの評価と調整、個別の興味や発達段階に合わせた遊び・活動の提供(例:創作活動、読書、デジタルデバイスを活用したゲームなど)、可能な範囲での同年代との交流促進(例:兄弟姉妹との遊び、他の入院児との交流、オンライン交流など)、家族との遊びの支援と指導(例:親子で楽しめるゲームの提案、適切な玩具の選択など)、病院内の遊びスペースや院内学級の活用促進などが重要である。

また、多職種連携による包括的アプローチも効果的であり、看護師だけでなく、保育士、チャイルドライフスペシャリスト、作業療法士、院内学級教師などとの協働により、A氏の発達段階と治療状況に合わせた個別的なレクリエーションプログラムを検討することが望ましい。

今後も継続して観察すべき点としては、体調や血液データの変動と活動耐性の関係、遊びや活動に対する反応や満足度、社会的交流への欲求と実際の交流状況、治療の進行に伴う新たな症状や制限の出現(特に末梢神経障害など)、家族との交流の質と量などが挙げられる。また、長期的な視点では、退院後の活動再開に向けた準備状況や、学校生活やサークル活動への復帰に関する不安の有無なども評価していく必要がある。特に、治療終了後の活動再開においては、長期間の活動制限による運動機能や持久力の低下が見られる可能性があり、段階的な活動拡大と適切な評価が重要である。

発達段階

A氏は7歳の男児で小学校2年生である。ピアジェの認知発達理論によれば、この年齢は具体的操作期(7~11歳頃)の初期に位置し、論理的思考が発達し始める時期である。具体的な事物や経験を通じて思考することができ、可逆的な操作や分類、系列化などの能力が形成される段階にある。また、エリクソンの心理社会的発達理論では、学童期(6~12歳)は「勤勉性 対 劣等感」の時期にあたり、学習や技能の習得を通じて有能感を獲得することが発達課題となる。この時期の子どもは、学校や家庭での様々な活動に取り組み、達成感を得ることで自己効力感を高めていく。

A氏の発達状況については、「認知力は年齢相応で良好である」との記載があり、認知的発達は年齢相当と評価されている。また、「性格は活発で明るく、友達が多い」とあることから、社会性の発達も良好であると推測される。「サッカークラブに所属して週2回の練習に参加していた」という情報からは、身体的発達も問題なく、集団活動への適応能力も有していることが窺える。学習面については具体的な記載がないが、「治療や処置に対する理解も良好である」とのことから、状況理解力や学習能力にも大きな問題はないと考えられる。

ただし、白血病の診断と長期入院により、通常の発達環境から離れ、学校生活や同年代との交流、様々な経験の機会が制限されている状況にある。このような環境変化が発達に与える影響を考慮し、代替的な学習や発達の機会を提供する必要がある。特に、この年齢の子どもは具体的な経験を通じた学習が重要であり、入院環境でも可能な限り多様な経験と学習の機会を確保することが望ましい。

疾患と治療方法の理解

A氏の疾患理解については、「年齢なりに病気の説明を受け、治療に協力的である」との記載があり、ある程度の疾患理解があると考えられる。7歳児にとって白血病という疾患の複雑な病態生理を完全に理解することは難しいが、年齢に応じた簡潔で具体的な説明により、基本的な概念(「血液を作る工場に問題があり、治療で直す必要がある」など)は理解可能である。治療に協力的であるという点からは、治療の必要性と目的についての基本的な理解があることが窺える。

治療方法の理解については、「治療や処置に対する理解も良好である」との記載から、現在行われている処置や治療の手順については理解していると考えられるが、治療全体の流れや今後の見通しについての理解度は不明である。白血病治療は複雑で長期にわたるため、現在の地固め療法から再寛解導入療法、維持療法へと続く今後の治療過程についての理解や、各治療段階での生活上の変化(例:退院の可能性、学校復帰の時期など)についての認識が重要となる。これらの点についての情報収集が必要である。

また、治療に伴う副作用や制限についての理解も重要である。現在、「化学療法の副作用による口内炎がある」「抗がん剤の副作用による便秘傾向がある」などの副作用を経験しているが、これらの症状が治療と関連していることの理解度や、対処方法についての知識の程度は不明である。さらに、「長時間の活動後は疲労感を訴える」との記載があるが、これが貧血や治療の影響であることの理解度も確認が必要である。

学習意欲、認知機能、学習機会への家族の参加度合い

A氏の学習意欲については直接的な記載はないが、「早く学校に戻りたい」との発言から、学校生活への復帰を望んでおり、学習に対しても一定の関心があると推測される。ただし、入院中の学習状況や院内学級への参加状況、実際の学習活動への取り組み姿勢などの具体的情報は不足しているため、これらの情報収集が必要である。また、治療による体調変動や副作用が学習意欲や集中力に与える影響についても評価することが重要である。

認知機能については「認知力は年齢相応で良好である」との記載があり、学習に必要な基本的な認知能力は保たれていると考えられる。ただし、治療に伴う状態変化(例:貧血による倦怠感、ステロイドによる気分変動など)が一時的に認知機能や学習能力に影響を与える可能性もあるため、この点についての観察も必要である。

学習機会への家族の参加度合いについては、「母親は毎日付き添いをしており、父親は仕事の合間に面会に来ている」との記載から、家族の関わりは比較的多いと考えられる。また、「学校との連携も図られており、担任の先生から励ましのメッセージや学級の様子が届けられている」ことから、学校教育との連続性を保つ努力もなされている。ただし、家族が具体的にどのように学習支援に関わっているか(例:入院中の学習教材の準備、勉強の付き添い、教師との連絡調整など)についての詳細情報は不足しているため、これらの情報収集が必要である。特に、長期入院中の学習の継続には家族の協力が不可欠であり、家族の教育的関わりの状況と能力を評価することが重要である。

ニーズの充足状況

A氏の「正常」な発達および健康を導くような学習をし、発見をし、あるいは好奇心を満足させるというニーズは、現在の入院状況において十分に充足されているとは言い難い。白血病の治療による長期入院は、通常の学校教育からの離脱、同年代との交流制限、様々な経験機会の不足など、学習と発達の多様な側面に影響を与える。

まず、形式的な学習(学校教育)については、「学校との連携も図られており」との記載はあるが、具体的な学習の継続方法(院内学級、訪問教育、自主学習など)や学習内容、学習量についての情報が不足している。7歳の小学2年生は基礎的な読み書き計算の習得時期であり、この時期の学習の中断は今後の学習にも影響を与える可能性がある。

次に、非形式的な学習(日常生活における発見や経験を通じた学習)についても、入院環境では制限される部分が多い。特に、同年代との相互作用を通じた社会的学習や、自然環境・社会環境での様々な経験を通じた学習の機会が減少している。「友達と遊びたい」という発言からも、A氏がこの側面での不足を感じていることが窺える。

さらに、白血病という疾患体験自体も重要な学習機会となりうるが、これを発達に適した形で意味づけるための支援状況は不明である。病気や治療に関する適切な情報提供や、自己管理能力の育成、治療への主体的参加の促進などを通じて、この体験を肯定的な学習経験として位置づけることも重要である。

健康管理上の課題として、①入院中の形式的学習(学校教育)の継続支援、②発達に適した非形式的学習機会の創出、③病気体験を通じた学習の促進、④家族による教育的支援の強化が挙げられる。これらに対する看護介入としては、院内学級や訪問教育の調整と活用促進、学校との連携強化と情報共有、治療スケジュールと学習計画の調整、入院環境での多様な学習素材と経験の提供(例:自然科学的な観察や実験、文化的活動、創作活動など)、年齢に応じた疾患・治療教育と自己管理スキルの育成、家族への教育的支援方法の指導と資源の紹介などが重要である。

また、多職種連携による包括的アプローチも効果的であり、看護師だけでなく、院内学級教師、チャイルドライフスペシャリスト、心理士、作業療法士などとの協働により、A氏の発達段階と治療状況に合わせた個別的な学習支援プログラムを検討することが望ましい。

今後も継続して観察すべき点としては、治療の進行に伴う認知機能や学習意欲の変化、学習内容の理解度と習得状況、病気や治療に対する理解の深まり、家族の教育的関わりの質と量、退院後の学校復帰に向けた準備状況などが挙げられる。また、長期的な視点では、治療終了後の学校生活再開時の適応状況や学習の遅れの回復状況も評価していく必要がある。特に、白血病治療は約2年間と長期にわたるため、この間の発達段階の変化に合わせた継続的な教育的支援の調整が重要である。

さらに、治療の副作用として生じうる晩期合併症(例:中枢神経系への影響による認知機能や学習能力への影響)についても注意深く観察し、必要に応じて早期介入を行うことが重要である。白血病治療、特に中枢神経予防のための髄腔内投与は、一部の児童において学習障害などの晩期合併症のリスクがあるため、長期的なフォローアップの視点も含めた支援計画の立案が必要である。

看護計画

看護問題

化学療法に伴う骨髄抑制に関連した感染リスク状態

長期目標

治療終了まで重篤な感染症の合併なく経過する。

短期目標

1週間以内に感染予防行動(手洗い、口腔ケア)を理解し実践できる。

≪O-P≫観察計画

・体温、脈拍、呼吸数、血圧の変動を1日3回以上測定する
・発熱、悪寒、戦慄の有無を確認する
・口腔内の状態(口内炎の程度、粘膜の色調、出血の有無)を毎食後観察する
・中心静脈カテーテル挿入部の発赤、腫脹、疼痛、浸出液の有無を毎日確認する
・咳嗽、痰の性状、呼吸音の変化を1日1回以上観察する
・排尿時の痛み、尿の混濁、異臭の有無を確認する
・皮膚の発赤、発疹、掻痒感の有無を観察する
・血液検査結果(特にWBC、好中球数)の推移を確認する
・CRPの変動を確認する
・面会者の体調、感冒症状の有無を確認する
・手指衛生の実施状況や正確さを観察する
・食事摂取前の手洗いの実施状況を観察する

≪T-P≫援助計画

・訪室時や処置前後の手指消毒を徹底する
・環境整備(病室の清掃、ベッド周囲の整理)を1日1回以上実施する
・リネン交換を週2回以上実施する
・口腔ケアを毎食後および就寝前に実施する
・中心静脈カテーテル挿入部の消毒とドレッシング交換を週1回および汚染時に実施する
・シャワー浴時はカテーテル挿入部を防水する
・可能な限り個室管理とし、空気の流れを考慮した換気を1日3回以上行う
・鮮度が確保された食事を提供し、温かいものは温かく、冷たいものは冷たく提供する
・使用する物品(おもちゃ、文房具など)は定期的に消毒する
・血液検査結果に応じた活動制限を設定する
・面会者の制限と面会時の手指消毒を徹底する
・感染症流行時期は不要不急の外出を控える

≪E-P≫教育・指導計画

・手洗いの正しい方法(石鹸と流水による30秒以上の手洗い)を指導する
・口腔ケアの方法と重要性について説明する
・発熱時や体調不良時の速やかな報告の必要性を説明する
・面会者への感染予防対策(マスク着用、手指消毒)を説明する
・感染リスクの高い食品(生もの、未加熱食品)の摂取を避けるよう指導する
・人混みや感染症患者との接触を避ける必要性を説明する
・中心静脈カテーテル挿入部の観察ポイントと異常時の報告について指導する
・白血球数低下時の注意点について年齢に応じた説明を行う

看護問題

化学療法の副作用に関連した栄養摂取不足

長期目標

治療終了時に年齢相応の体重(標準体重±10%)を維持できる。

短期目標

1週間以内に1日の必要カロリーの80%以上を摂取できる。

≪O-P≫観察計画

・毎食の食事摂取量を記録する
・水分摂取量を1日3回以上確認する
・体重を週2回測定し変化を観察する
・口内炎の程度と痛みの強さを毎食前に評価する
・嚥下時の痛みや困難さの有無を確認する
・嘔気・嘔吐の頻度と程度を記録する
・排便の回数、性状、量を記録する
・貧血症状(倦怠感、顔色、活動耐性)の程度を観察する
・血液検査値(Hb、TP、Alb)の推移を確認する
・食事に対する嗜好や好みの変化を確認する
・食事中の疲労感や集中力の持続時間を観察する
・高カロリー輸液の実施状況と効果を確認する

≪T-P≫援助計画

・口内炎に対して食前の含嗽や局所麻酔薬の使用を行う
・食事は柔らかく刺激の少ない食形態で提供する
・食事の温度調整(特に熱すぎる食事は避ける)を行う
・少量頻回の食事提供(1日5-6回の分割食)を行う
・嗜好を考慮した食事内容の調整を栄養士と連携して行う
・疲労感が少ない時間帯に合わせて食事時間を調整する
・食事環境の整備(清潔、静かな環境、姿勢の工夫)を行う
・必要に応じて栄養補助食品を提供する
・食事摂取が不十分な場合は高カロリー輸液による補完を行う
・食事中の姿勢保持の援助を行う
・食器や食具の工夫(持ちやすい、使いやすいものの選択)を行う
・食前の軽い運動や活動を促し食欲増進を図る

≪E-P≫教育・指導計画

・口内炎予防のための口腔ケア方法を指導する
・栄養価の高い食品の選択方法について説明する
・少量でも栄養価の高い食事の摂り方を指導する
・水分摂取の重要性と必要量について説明する
・嘔気時の対処法(少量頻回摂取、冷たい食べ物の選択など)を指導する
・食事摂取状況の記録方法を家族に指導する
・便秘予防のための食品選択や水分摂取について説明する
・体重測定の意義と記録方法を説明する

看護問題

長期入院による社会的交流制限に関連した発達課題達成の困難

長期目標

治療終了時に年齢相応の社会的スキルと学習能力を獲得している。

短期目標

2週間以内に入院環境でも達成感を得られる活動に1日1回以上参加できる。

≪O-P≫観察計画

・日々の気分や表情の変化を観察する
・学習意欲や集中力の持続時間を評価する
・友人や家族との交流に対する反応を観察する
・遊びや活動への参加状況と満足度を確認する
・達成感を表現する言動の有無を観察する
・同年代の子どもとの交流に対する欲求表現を確認する
・治療や入院生活に対する理解度を評価する
・睡眠パターン(入眠時間、中途覚醒、睡眠の質)の変化を観察する
・ストレス反応(イライラ、退行現象、攻撃性)の有無を確認する
・体力や活動耐性の程度を評価する
・家族の面会頻度と交流内容を観察する
・学習活動への集中力や達成度を確認する

≪T-P≫援助計画

・年齢に応じた遊びや活動の機会を1日2回以上提供する
・体調に合わせた学習時間と休息時間の調整を行う
・院内学級やベッドサイド学習の調整と環境整備を行う
・可能な範囲での同年代の子どもとの交流機会(他の入院児との交流など)を設定する
・家族との質の高い交流時間を確保するための面会調整を行う
・達成感を得られる課題や役割(植物の水やり、簡単な手伝いなど)を提供する
・季節の行事や誕生日などの特別な日の企画と実施を行う
・オンラインでの友人や学級との交流機会を設定する
・体調に合わせた屋内レクリエーション活動を提供する
・好みの本や玩具、創作活動の材料などを準備する
・治療スケジュールを考慮した活動計画を立案する
・遊びや学習を通じて成功体験が得られるよう支援する

≪E-P≫教育・指導計画

・治療過程と今後の見通しについて年齢に応じた説明を行う
・学校の課題や学習内容について担任教師と連携する方法を家族に説明する
・家族に対して、入院中の発達支援の重要性と関わり方を指導する
・友人関係を維持する方法(手紙、メッセージカード作りなど)を提案する
・体調の変化に応じた活動調整の方法を説明する
・退院後の学校生活再開に向けた段階的な準備方法を説明する
・病気体験を肯定的に捉える視点を提供する
・同年代の子どもとの交流時のマナーや感染予防策について説明する

この記事の執筆者

なっちゃん
なっちゃん

・看護師と保健師免許を保有
・現場での経験-約15年
・プリセプター、看護学生指導、看護研究の経験あり

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