【ヘンダーソン】脳梗塞 左片麻痺(0003)| 12.達成感をもたらすような仕事をする

ヘンダーソン

事例の要約

85歳の男性A氏は、突然の左半身麻痺と言語障害により発症から2時間以内にrt-PA療法を実施し、その後リハビリテーションを行っている右中大脳動脈領域の脳梗塞の事例。介入は入院7日目である。

12.達成感をもたらすような仕事をする

A氏は元高校数学教師であり、退職後も地域の学習支援ボランティアとして活動し、社会的役割を継続していた。また、将棋サークルへの参加や盆栽の手入れなど、知的活動と趣味を通じた自己実現を図っていた。しかし、今回の脳梗塞発症により、これらの活動が突然中断された状態である。

特に学習支援ボランティアについては、教師としての経験を活かした活動であり、社会貢献という観点からも重要な役割を担っていた。この活動の中断は、単なる日課の喪失以上に、社会的存在価値への影響が大きいと考えられる。「こんな状態では家族に迷惑をかけるばかりだ」という発言からは、役割喪失による自尊心の低下が窺える。

現在のリハビリテーションには意欲的に取り組んでおり、「早く家に帰って盆栽の世話がしたい」という発言からは、これまでの生活や役割への復帰願望が強く感じられる。しかし、左半身麻痺(ブルンストロームテスト:上肢Ⅲ、手指Ⅲ、下肢Ⅳ)により、細かな作業を要する盆栽の手入れや、外出を必要とする社会活動への参加は現時点では困難な状況である。

必要な看護介入として、まずリハビリテーション中の成功体験を通じた達成感の獲得支援が重要である。できるようになったことを具体的に評価し、フィードバックすることで、新たな目標設定への意欲を引き出す必要がある。

退院後の生活を見据え、段階的な役割の再獲得に向けた支援も必要である。例えば、オンラインでの学習支援活動の可能性や、自宅でできる範囲での盆栽の手入れ方法など、代替手段の検討が重要である。また、将棋サークルへの復帰に向けた具体的な方策についても、理学療法士や作業療法士と連携しながら検討していく必要がある。

継続的な観察が必要な項目として、リハビリテーションへの意欲の維持、心理状態の変化、できるようになった動作の範囲、社会活動への関心度が挙げられる。また、家族の支援体制や地域資源の活用可能性についても、定期的な評価が必要である。

以上のことから、達成感をもたらす仕事に関するニーズは、現時点では十分な充足が得られていない状態である。リハビリテーションへの意欲的な取り組みは見られるものの、これまでの社会的役割や趣味活動の継続が困難な状況であり、新たな役割の創出や代替手段の確立が必要である。また、退院後の社会参加の再構築に向けて、具体的な支援計画の立案が求められる状況である。

看護問題の明確化

# 脳梗塞による身体機能低下に関連した役割喪失

事例の目次

この記事の執筆者

なっちゃん
なっちゃん

・看護師と保健師免許を保有
・現場での経験-約15年
・プリセプター、看護学生指導、看護研究の経験あり

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