本事例の要約
85歳の男性A氏は、突然の左半身麻痺と言語障害により発症から2時間以内にrt-PA療法を実施し、その後リハビリテーションを行っている右中大脳動脈領域の脳梗塞の事例。介入は入院7日目である。
13.遊び、あるいはさまざまな種類のレクリエーションに参加する
A氏は入院前、盆栽の手入れと1日4000歩程度の散歩を日課とし、週に1回は地域の将棋サークルに参加するなど、活動的な余暇生活を送っていた。これらの活動は、身体機能の維持だけでなく、知的刺激や社会的交流の機会としても重要な役割を果たしていた。しかし、脳梗塞の発症により、左半身麻痺(ブルンストロームテスト:上肢Ⅲ、手指Ⅲ、下肢Ⅳ)が生じ、これらの活動が制限される状態となっている。
現在の認知機能は軽度低下(長谷川式認知症スケール25点、ミニメンタルステート検査26点)を認めるものの、日常会話や指示理解は良好である。日中は1~2回のリハビリテーションに意欲的に取り組んでいるが、入院環境での具体的な気分転換方法に関する情報は不足している。また、高齢による体力低下も考慮する必要がある。
基本的日常生活動作については、機能的自立度評価表で運動項目45点、認知項目25点であり、特に移動や更衣動作に介助を要する。ポータブルトイレへの移乗時には介助が必要で、入浴は週3回のシャワー浴を看護師2名で実施している状況である。
必要な看護介入として、まず現在の身体機能に応じたレクリエーションの提供が重要である。例えば、ベッド上や車椅子での将棋や読書など、座位で楽しめる活動を検討する。また、リハビリテーションの進捗に合わせて、院内散歩や簡単な園芸活動など、段階的に活動範囲を広げていく支援も必要である。
環境の変化による不眠や不穏に対しては、日中の活動性を高め、生活リズムを整えることが重要である。テレビ視聴や新聞購読など、本人の興味のある活動を通じて、時間を過ごす方法を考えていく。また、家族との面会時間を活用し、これまでの趣味や活動について話題を共有することで、心理的な安定を図ることも重要である。
退院後の生活を見据え、自宅での余暇活動の再開に向けた環境調整も必要である。特に盆栽の手入れについては、左半身麻痺に適応した道具の工夫や、作業方法の検討が求められる。また、将棋サークルへの復帰に向けて、移動手段や参加方法について、家族や地域資源との連携を図る必要がある。
継続的な観察が必要な項目として、活動への興味・関心の維持、疲労度、気分の変化、身体機能の回復状況が挙げられる。また、新たに取り入れた活動に対する反応や満足度についても評価を続ける必要がある。
以上のことから、レクリエーションに関するニーズは、現時点では十分な充足が得られていない状態である。身体機能の制限により従来の活動が困難となっているが、代替となる余暇活動が十分に確立されていない。また、退院後の趣味活動の再開に向けて、具体的な支援方法の検討が必要な状況である。
看護問題の明確化
# 脳梗塞に伴う左半身麻痺による身体機能低下に関連したレクリエーション活動の制限
事例の目次
【ヘンダーソン】脳梗塞 左片麻痺(0003)| 今回の内容
1.正常に呼吸する
2.適切に飲食する
3.あらゆる排泄経路から排泄する
4.身体の位置を動かし、また良い姿勢を保持する
5.睡眠と休息をとる
6.適切な衣類を選び、着脱する
7.体温を生理的範囲内に維持する
8.身体を清潔に保ち、身だしなみを整え、皮膚を保護する
9.環境のさまざまな危険因子を避け、また他人を傷害しないようにする
10.自分の感情、欲求、恐怖あるいは気分を表現して他者とコミュニケーションを持つ
11.自分の信仰に従って礼拝する
12.達成感をもたらすような仕事をする
13.遊び、あるいはさまざまな種類のレクリエーションに参加する
14.正常な発達および健康を導くような学習をし、発見をし、あるいは好奇心を満足させる
看護計画
この記事の執筆者

・看護師と保健師免許を保有
・現場での経験-約15年
・プリセプター、看護学生指導、看護研究の経験あり
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