【ヘンダーソン】大腸癌 入院3日目(0015)| 4.身体の位置を動かし、また良い姿勢を保持する

ヘンダーソン

事例の要約

横行結腸癌に対して腹腔鏡下結腸切除術を施行後、術後補助化学療法としてカペシタビン+オキサリプラチン(XELOX)療法1コース目を実施中の患者。化学療法開始3日目より、悪心・嘔吐、末梢神経障害、倦怠感などの副作用症状が出現し、日常生活動作に支障をきたしている60歳代の事例。介入日は10月15日。

4.身体の位置を動かし、また良い姿勢を保持する

A氏の日常生活動作は入院前まですべて自立しており、運動習慣として毎朝30分程度の散歩を行うなど、活動的な生活を送っていた。しかし、化学療法開始後は悪心・嘔吐と倦怠感により活動に消極的となり、病室でベッド上で過ごす時間が増加している。この活動量の低下は、筋力低下や体力消耗のリスクとなる可能性がある。

麻痺については現在認められていないが、55歳時の腰椎椎間板ヘルニアの手術歴がある。現在は症状なく経過しているものの、長期臥床による腰部への負担増加には注意が必要である。骨折の既往はないが、65歳という年齢を考慮すると、加齢による骨密度低下の可能性も考慮する必要がある。

治療に関連する身体的制限として、化学療法に伴う点滴ラインが挿入されている。ソルデム3A 500mlが9-17時まで投与されており、点滴ラインによる行動制限や転倒リスクへの配慮が必要である。手術創は治癒しており、ドレーン類の留置はない。

生活習慣については、几帳面で真面目な性格であり、規則正しい生活を送っていた。認知機能は正常で、見当識障害や記憶障害は認められず、医療者との意思疎通も良好である。これらの特徴は、治療への積極的な参加と自己管理能力の維持に有利に働くと考えられる。

呼吸機能に関しては、安静時の呼吸数は18回/分、酸素飽和度は97%(室内気)と正常範囲内である。しかし、喫煙歴が20本/日を30年間と長期であったことから、潜在的な呼吸機能低下の可能性がある。がん診断を機に禁煙しているが、活動時の呼吸状態の観察が必要である。

転倒転落のリスク要因として、以下の点が挙げられる。化学療法による倦怠感とふらつきの出現、点滴ラインの存在、活動量の低下による筋力低下の可能性、夜間トイレ回数の増加(1-2回)である。現在、トイレ歩行時はナースコールで看護師に知らせてもらい、必要時見守りを行っているが、特に夜間の排泄行動時には転倒リスクが高まる

必要な看護介入として、以下の対応が重要である。定期的な病室訪問による活動状況の確認、移動時の付き添いや見守り、適切な休息と活動のバランスの指導、転倒予防のための環境整備(ベッド柵の使用、夜間照明の調整、点滴スタンドの安定性確認など)である。また、化学療法の副作用による症状緩和を図りながら、段階的な活動量の増加を支援することが必要である。

身体の位置を動かし、良い姿勢を保持するというニーズについて、現時点では基本的な移動や姿勢保持の能力は維持されているものの、化学療法の副作用による活動制限と転倒リスクにより、十分な活動が確保できていない状態である。そのため、このニーズは一部充足されていない状態であり、継続的な観察と支援が必要である。特に、倦怠感や悪心による活動意欲の低下が活動量減少の主要因となっているため、これらの症状緩和と並行して、安全な活動の維持・拡大を図る必要がある。

看護問題の明確化

#化学療法による倦怠感と悪心に関連した活動耐性の低下

事例の目次

この記事の執筆者

なっちゃん
なっちゃん

・看護師と保健師免許を保有
・現場での経験-約15年
・プリセプター、看護学生指導、看護研究の経験あり

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