【ヘンダーソン】大腸癌 入院3日目(0015)

ヘンダーソン

事例の要約

横行結腸癌に対して腹腔鏡下結腸切除術を施行後、術後補助化学療法としてカペシタビン+オキサリプラチン(XELOX)療法1コース目を実施中の患者。化学療法開始3日目より、悪心・嘔吐、末梢神経障害、倦怠感などの副作用症状が出現し、日常生活動作に支障をきたしている60歳代の事例。介入日は10月15日。

この事例で勉強できること

大腸癌・抗癌剤の副作用のアセスメント

今回の情報

基本情報

A氏は65歳の男性で、身長168cm、体重58kg(標準体重61.8kg)である。妻と2人暮らしで、キーパーソンは妻である。定年まで会社員として総務部で勤務していたが、現在は退職している。几帳面で真面目な性格であり、治療に対して積極的な姿勢を持っている。また、自身の病状について詳しく理解したいという意欲があり、医療者の説明をメモに取る習慣がある。感染症やアレルギーの既往はない。認知機能は正常で、見当識障害や記憶障害は認められない。会話は論理的で、治療に関する意思決定も適切に行える状態である。

病名

病名は横行結腸癌(Stage III A:T3N1M0)である。20XX年8月15日に腹腔鏡下横行結腸切除術(D3郭清)を施行している。術後の病理組織診断は中分化型腺癌、漿膜下層浸潤、リンパ節転移陽性(2/18)であった。手術後の経過は良好で、予定通り術後補助化学療法としてXELOX療法を導入することとなった。

既往歴と治療状況

既往歴として50歳時より高血圧症があり、アムロジピン5mgを内服中である。血圧は概ね良好にコントロールされている。また、63歳時に慢性胃炎を指摘され、制酸薬を服用していたが、現在は自己判断で中止している。その他、55歳時に腰椎椎間板ヘルニアの手術歴があるが、現在は特に症状なく経過している。

入院から現在までの情報

10月12日に術後補助化学療法目的で入院となった。入院時の身体状態は良好で、手術創は治癒している。翌日の10月13日よりXELOX療法1コース目(カペシタビン1700mg/回 1日2回 14日間内服、オキサリプラチン130mg/㎡ day1点滴静注)を開始した。

化学療法開始2日目の10月14日夕方より軽度の悪心が出現。制吐剤(メトクロプラミド)を投与し一時的に改善を認めたが、3日目の10月15日朝より悪心が増強し、2回の嘔吐がみられた。また、全身倦怠感を訴えるようになった。血圧や体温は安定しているものの、活動量が低下し、病室でベッド上で過ごす時間が増えている。

医師により制吐剤がグラニセトロンに変更となった。カペシタビンの内服は継続しているが、服薬後の悪心が強く、内服に対して消極的な発言がみられている。

バイタルサイン

入院時(10月12日)のバイタルサインは、体温36.5℃、血圧132/78mmHg、脈拍78回/分・整、呼吸数16回/分、SpO2 98%(室内気)であった。意識清明で、疼痛の訴えはなかった。

現在(10月15日)のバイタルサインは、体温37.2℃、血圧126/72mmHg、脈拍84回/分・整、呼吸数18回/分、SpO2 97%(室内気)である。悪心・嘔吐による体調不良を訴えているが、バイタルサインは概ね安定している。嘔吐による脱水症状は認められていない。

食事と嚥下状態

入院前は1日3食を規則正しく摂取していた。食事は妻が準備することが多く、主食と副食をバランスよく摂取できていた。嚥下機能に問題はない。喫煙歴は20本/日を30年間であったが、がん診断を機に禁煙し、現在は喫煙していない。飲酒は機会飲酒程度であったが、手術後は控えている。
現在は制吐剤使用後も悪心が持続しており、食事摂取量は3割程度に低下している。水分は1日1000ml程度の摂取ができている。

排泄

入院前は1日1回の排便があり、便秘や下痢の症状はなかった。排尿は日中4-5回、夜間1回程度であった。下剤の使用はなかった。
現在は化学療法による悪心・嘔吐の影響で食事摂取量が減少しており、最終排便は2日前となっている。腹部は軟らかく、腹痛の訴えはない。排尿は日中5-6回、夜間1-2回で、尿量や性状に異常はない。緩下剤は使用していない。

睡眠

入院前は午後10時から午前6時まで良眠できていた。就寝前の習慣として、温かい飲み物を飲んでリラックスするようにしていた。眠剤の使用はなかった。
現在は悪心による不快感があり、入眠までに時間がかかることがある。夜間に嘔吐することもあり、睡眠が中断されることがある。日中の活動量も低下しており、午後に1-2時間程度の臥床休息をとっている。眠剤は使用していない。

視力・聴力・知覚・コミュニケーション・信仰

視力は近方視力の低下があり、老眼鏡を使用している。眼鏡使用にて新聞や書類の文字を不自由なく読むことができる。聴力は正常で、普通の大きさの会話に支障はない。

知覚に関しては、特に異常は認められない。腰椎椎間板ヘルニアの手術歴があるが、現在は症状なく経過している。触覚、痛覚、温度覚に異常はない。

コミュニケーションは良好で、医療者との意思疎通に問題はない。質問や説明に対して理解力があり、自身の症状や不安について適切に表現することができる。妻とは毎日面会があり、良好な関係性が保たれている。

信仰は特になく、宗教上の制限や配慮は必要としていない。

動作状況

入院前は日常生活動作すべてが自立しており、運動習慣として毎朝30分程度の散歩を行っていた。転倒歴はない。

入院後も化学療法開始前までは病棟内を自力歩行し、シャワー浴も自立して行えていた。しかし、化学療法開始3日目の現在は、悪心・嘔吐と倦怠感により、活動に消極的になっている。歩行は自立しているものの、ふらつきがみられることがあるため、トイレ歩行時はナースコールで看護師に知らせてもらい、必要時見守りを行っている。

移乗動作は手すりを使用し自立している。トイレまで歩行して行っている。入浴に関しては、悪心と倦怠感により現在はシャワー浴を中止しており、清拭で対応している。更衣は自分で行えているが、しゃがんで靴下を履く動作は疲労を伴うため、介助を要することがある。病室では主にベッド上で過ごし、疲労時には背上げ30度程度でギャッジアップして休息をとっている。

内服中の薬

【内服薬】

  • アムロジピン錠 5mg 1錠 1日1回 朝食後
  • カペシタビン錠 300mg 6錠 1日2回 朝夕食後(14日間)
  • グラニセトロン錠 2mg 1錠 1日2回 朝夕食前(頓用)
  • プレガバリンOD錠 25mg 1錠 1日1回 夕食後
  • センノシド錠 12mg 2錠 1日1回 就寝前(頓用)

【抗がん剤点滴】

  • オキサリプラチン 130mg/㎡ day1 点滴静注(10月13日に施行済み)

【服薬管理】
入院前は自己管理で内服できていたが、化学療法中は確実な服薬管理と副作用の観察が必要なため、現在は看護師管理としている。内服時は看護師が配薬し、服用を確認している。特に化学療法に伴う内服薬(カペシタビン)は、患者の状態に応じて医師と相談しながら投与を継続するため、看護師による慎重な観察と管理を行っている。

検査データ
検査項目基準値入院時(10/12)現在(10/15)
WBC3.3-8.6×10³/µL5.89.2
RBC4.35-5.55×10⁶/µL3.953.82
Hb13.7-16.8g/dL12.812.4
Ht40.7-50.1%38.637.2
Plt15.8-34.8×10⁴/µL22.418.6
TP6.6-8.1g/dL7.27.0
Alb4.1-5.1g/dL3.83.6
T-Bil0.4-1.5mg/dL0.80.9
AST13-30U/L2228
ALT10-42U/L2532
ALP106-322U/L242256
γ-GTP13-64U/L3842
BUN8-20mg/dL15.216.8
Cr0.65-1.07mg/dL0.820.88
Na138-145mEq/L140138
K3.6-4.8mEq/L4.24.0
Cl101-108mEq/L104102
CRP0-0.14mg/dL0.080.45
今後の治療方針と医師の指示

今後の治療方針:XELOX療法 6ヶ月間(8コース)

【第1コース スケジュール】

  • Day1(10/13):オキサリプラチン点滴
    デカドロン注 6.6mg
    プロイメンド注 150mg
    イメンドCap 125mg
    オキサリプラチン 130mg/㎡
  • Day2-14(10/14-27):カペシタビン内服
  • Day15-21(10/28-11/3):休薬期間
  • 支持療法:ソルデム3A 500ml(9-17時)

【観察項目】

  • バイタルサイン(1日3回)
  • 悪心・嘔吐、制吐剤の効果
  • 食事・水分摂取量
  • 末梢神経障害
  • 活動状況

【退院目安:10/20頃(Day8)】

  • 悪心・嘔吐コントロール良好
  • 経口摂取安定
  • 末梢神経障害が軽度
  • 自己管理可能

第2コース目は11/3(3週間後)から開始予定

本人と家族の想いと言動

本人は治療に対して前向きな姿勢を持っているが、予想以上の副作用症状に戸惑いを感じている。「抗がん剤は効果があるから頑張りたいけど、吐き気が辛くて食事も薬も飲むのが怖い」と不安を表出している。また、「こんなに具合が悪いと家に帰っても妻に迷惑をかけそう」と、退院後の生活への不安も語っている。一方で、「他の患者さんも乗り越えているから、自分もなんとか頑張りたい」と前向きな発言もみられる。

妻は毎日面会に訪れ、「本人の体調が一番大切。無理のないようにゆっくり治療を進めていってほしい」と話している。夫の体調管理に関して積極的に質問をし、食事の工夫や生活上の注意点について熱心に確認している。「家に帰ってきたら、本人の体調に合わせて家事の時間を調整するので、心配しないでほしい」と夫を励ましている。夫婦で協力しながら治療に取り組もうとする姿勢が見られる。

この記事の執筆者

なっちゃん
なっちゃん

・看護師と保健師免許を保有
・現場での経験-約15年
・プリセプター、看護学生指導、看護研究の経験あり

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