本事例の要約
横行結腸癌に対して腹腔鏡下結腸切除術を施行後、術後補助化学療法としてカペシタビン+オキサリプラチン(XELOX)療法1コース目を実施中の患者。化学療法開始3日目より、悪心・嘔吐、末梢神経障害、倦怠感などの副作用症状が出現し、日常生活動作に支障をきたしている60歳代の事例。介入日は10月15日。
5.睡眠と休息をとる
A氏は入院前、午後10時から午前6時まで良好な睡眠が取れており、就寝前には温かい飲み物を飲んでリラックスするという確立された睡眠習慣を持っていた。しかし、化学療法開始後は悪心による不快感により入眠までに時間がかかり、夜間の嘔吐により睡眠が中断される状況となっている。65歳という年齢を考慮すると、加齢に伴う睡眠の質の低下も考えられるが、現在の睡眠障害は主に治療に伴う症状が原因と考えられる。
疼痛に関しては、手術創は治癒しており、現在明らかな疼痛の訴えはない。また、掻痒感についての訴えもない。安静度は特に制限はないものの、倦怠感により日中の活動量が低下しており、午後に1-2時間程度の臥床休息を必要としている。この日中の活動量低下は、夜間の睡眠にも影響を与える可能性がある。
入眠剤については、入院前から使用しておらず、現在も使用していない。しかし、化学療法に伴う悪心・嘔吐により睡眠が妨げられている状況であり、制吐剤の効果的な使用による症状コントロールが睡眠の質の改善に重要である。グラニセトロン錠が処方されているが、その効果と服用タイミングについて評価が必要である。
疲労の状態については、化学療法の副作用として全身倦怠感が出現している。活動量が低下し、病室でベッド上で過ごす時間が増加しているが、これは過度の疲労を回避するための代償行動とも考えられる。しかし、過度の臥床は筋力低下や生活リズムの乱れを招く可能性があるため、適切な活動と休息のバランスを図る必要がある。
療養環境への適応状況については、A氏は几帳面で真面目な性格であり、治療に対して積極的な姿勢を持っている。医療者との意思疎通も良好で、自身の症状や不安について適切に表現できている。しかし、「抗がん剤は効果があるから頑張りたいけど、吐き気が辛くて食事も薬も飲むのが怖い」という発言から、治療に伴う身体的苦痛がストレス要因となっていることが窺える。また、「こんなに具合が悪いと家に帰っても妻に迷惑をかけそう」という発言からは、退院後の生活に対する不安も存在している。
一方で、妻の毎日の面会は精神的支援となっており、「家に帰ってきたら、本人の体調に合わせて家事の時間を調整する」という妻の言葉は、A氏の不安軽減に寄与していると考えられる。このような家族からの支援は、療養生活への適応を促進する重要な要素である。
必要な看護介入として、以下の対応が重要である。悪心・嘔吐に対する効果的な制吐剤の使用と評価、就寝前の環境調整(室温、照明、騒音への配慮)、日中の適度な活動の促進、睡眠パターンの継続的な観察、不安の傾聴と支持的な関わりである。特に、化学療法の副作用による症状緩和は、睡眠の質の改善に直接的に影響するため、優先的な介入が必要である。
睡眠と休息に関するニーズについて、現時点では化学療法の副作用による身体症状と精神的ストレスにより、十分な睡眠が確保できていない状態である。日中の休息は確保できているものの、夜間の睡眠が中断されることで、質の高い睡眠が得られていない。したがって、このニーズは充足されていない状態であり、継続的な観察と支援が必要である。
看護問題の明確化
#化学療法による悪心・嘔吐に関連した睡眠パターンの混乱
事例の目次
【ヘンダーソン】大腸癌 入院3日目(0015)| 今回の情報
1.正常に呼吸する
2.適切に飲食する
3.あらゆる排泄経路から排泄する
4.身体の位置を動かし、また良い姿勢を保持する
5.睡眠と休息をとる
6.適切な衣類を選び、着脱する
7.体温を生理的範囲内に維持する
8.身体を清潔に保ち、身だしなみを整え、皮膚を保護する
9.環境のさまざまな危険因子を避け、また他人を傷害しないようにする
10.自分の感情、欲求、恐怖あるいは気分を表現して他者とコミュニケーションを持つ
11.自分の信仰に従って礼拝する
12.達成感をもたらすような仕事をする
13.遊び、あるいはさまざまな種類のレクリエーションに参加する
14.正常な発達および健康を導くような学習をし、発見をし、あるいは好奇心を満足させる
看護計画
この記事の執筆者

・看護師と保健師免許を保有
・現場での経験-約15年
・プリセプター、看護学生指導、看護研究の経験あり
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