【ヘンダーソン】大腸癌 入院3日目(0015)| 2.適切に飲食する

ヘンダーソン

事例の要約

横行結腸癌に対して腹腔鏡下結腸切除術を施行後、術後補助化学療法としてカペシタビン+オキサリプラチン(XELOX)療法1コース目を実施中の患者。化学療法開始3日目より、悪心・嘔吐、末梢神経障害、倦怠感などの副作用症状が出現し、日常生活動作に支障をきたしている60歳代の事例。介入日は10月15日。

2.適切に飲食する

A氏は身長168cm、体重58kg、BMI20.5kg/m²であり、標準体重61.8kgに対して現在の体重は若干の低値を示している。化学療法開始前は1日3食を規則正しく摂取し、妻の支援により主食と副食をバランスよく摂取できていた。しかし、XELOX療法開始後、悪心・嘔吐により食事摂取量が3割程度まで著明に低下している状況である。水分摂取に関しては、現在経口から1日1000ml程度の摂取ができているものの、体重あたりの必要水分量(30ml/kg/日)から計算すると、A氏の場合約1740ml/日が必要である。これに加えて嘔吐による喪失も考えられるため、不足分は医師の指示のもと、支持療法としてのソルデム3A 500ml(9-17時)の点滴投与で補完されている。体液・電解質バランスの維持のため、飲水量と排尿量の観察、および脱水症状の有無を定期的に確認する必要がある。

血液データについては、総タンパク7.0g/dL(基準値6.6-8.1g/dL)、アルブミン3.6g/dL(基準値4.1-5.1g/dL)、ヘモグロビン12.4g/dL(基準値13.7-16.8g/dL)と、アルブミン値とヘモグロビン値の低下が認められる。これらの値から中等度の栄養不良状態にあると判断され、化学療法による副作用と相まって全身状態への影響が懸念される。

XELOX療法では様々な副作用が予測され、栄養状態に影響を与える副作用として複数の症状が懸念される。カペシタビンによる副作用として口内炎、味覚障害、食欲不振、下痢が高頻度で出現する可能性がある。特に口内炎と味覚障害は食事摂取量に直接的な影響を与える重要な副作用である。また、オキサリプラチンによる末梢神経障害は、冷感刺激で誘発される特徴があり、冷たい飲食物の摂取が困難となる可能性がある。これらの副作用は単独でなく、複合的に出現する可能性が高く、栄養状態の更なる悪化につながるリスクがある。

嚥下機能は正常で、口腔内の状態に関する特記事項はないが、化学療法による口内炎などの副作用出現の可能性があるため、定期的な口腔内アセスメントが必要である。必要栄養量については、現在の体重58kgと活動量の低下を考慮すると、基礎エネルギー消費量は約1300kcal/日と推定される。

XELOX療法における嘔気・嘔吐の発生メカニズムは複合的である。オキサリプラチンによる消化管粘膜への直接的な刺激作用があり、これは投与直後から急性の症状として現れる。カペシタビンの代謝産物の蓄積による影響があり、これは内服後徐々に症状として現れる。化学療法剤による消化管でのセロトニン分泌増加があり、これにより嘔吐中枢が刺激される。さらに、化学療法に伴う心理的ストレスも症状を増悪させる要因となっている。65歳という年齢による消化機能の生理的な低下も、これらの症状に影響を与えている可能性がある。

必要な看護介入として、まず制吐剤の効果と副作用の観察が重要である。悪心・嘔吐の発現時期、程度、持続時間を詳細に観察し、制吐剤使用後の効果を評価する。症状コントロールが不十分な場合は、医師に報告・相談し、制吐剤の調整を依頼する。

食事に関する具体的な工夫として、まず食事の温度管理が重要である。冷たすぎず、熱すぎない適温(20-40℃程度)での提供を心がける。また、消化の良い食品として、おかゆ、うどん、豆腐などを中心とした食事を提供する。匂いの強い食品は避け、だし汁やゼリー状の食品など、さっぱりとした食事から開始する。食事の1回量は150-200g程度を目安とし、少量頻回の摂取を促す。

予測される副作用に対する予防的ケアとして、口腔ケアの徹底と継続的な症状モニタリングが必要である。口内炎の予防と早期発見のため、食前食後の含嗽を励行し、口腔内の観察を毎日実施する。味覚障害に対しては、食前の口腔内の清潔保持と、患者の味覚の変化に応じた食事内容の調整を行う。末梢神経障害による冷感刺激の症状に備え、常温以上での食事提供を基本とし、患者に冷たい飲食物を避けるよう説明する。下痢・便秘の予防として、食物繊維の適切な摂取と水分バランスの管理を行う。

環境調整においては、食事前の換気を十分に行い、食事中も必要に応じて窓を開けるなどの配慮を行う。また、他の患者の食事の匂いなどが気にならないよう、場所や時間の調整も検討する。食後は30分程度の安静を保持し、急な体動による嘔気の誘発を防ぐ。

セルフケア指導では、まず嘔気出現時の対処方法として深呼吸法を指導する。腹式呼吸を行いながら、ゆっくりと深い呼吸を繰り返すことで、嘔気の軽減を図る。また、食事の際は一口量を少なめにし、よく噛んでゆっくりと摂取することを説明する。食後の体位は上半身を30度程度挙上し、左側臥位を基本とする。

経口補水液や栄養補助食品の活用においては、患者の嗜好を考慮しながら、複数の種類を用意する。特に、がん患者用の高カロリー栄養補助食品や、電解質バランスの整った経口補水液を常時配置し、少しでも摂取できる時に飲めるよう準備する。

観察項目として、体重測定は1日3回(朝・昼・夕)実施し、急激な変動がないか確認する。食事摂取量は食品ごとに詳細に記録し、特に蛋白質源となる食品の摂取状況に注目する。水分出納バランスについては、飲水量、点滴量、排尿量を測定するとともに、嘔吐の回数や性状、おおよその量を観察する。また、脱水症状の有無を定期的に確認する。口腔内の状態は1日2回以上観察し、特に口内炎や出血傾向の有無を確認する。血液データは定期的にチェックし、特にアルブミン値、電解質、貧血の進行について注意を払う。

これらの看護介入を実施するにあたっては、医師、薬剤師、管理栄養士などの多職種と緊密に連携する。特に、制吐剤の種類や使用タイミングについては薬剤師と、食事内容や提供方法については管理栄養士と随時相談しながら調整を行う。また、患者の不安や恐れに対しては傾聴と共感的な態度で接し、心理面のサポートも並行して行う。妻の面会時には、自宅での食事に関する工夫や注意点について具体的な指導を行い、退院後の生活に向けた準備を進める。

看護問題の明確化

#化学療法による悪心・嘔吐に関連した栄養摂取量低下

事例の目次

この記事の執筆者

なっちゃん
なっちゃん

・看護師と保健師免許を保有
・現場での経験-約15年
・プリセプター、看護学生指導、看護研究の経験あり

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