本事例の要約

横行結腸癌に対して腹腔鏡下結腸切除術を施行後、術後補助化学療法としてカペシタビン+オキサリプラチン（XELOX）療法1コース目を実施中の患者。化学療法開始3日目より、悪心・嘔吐、末梢神経障害、倦怠感などの副作用症状が出現し、日常生活動作に支障をきたしている60歳代の事例。介入日は10月15日。

看護計画＃1

看護問題

＃化学療法による悪心・嘔吐に関連した栄養摂取量低下

長期目標

化学療法終了時までに必要栄養量が確保でき、体重が維持できる

短期目標

1週間以内に1日の食事摂取量が6割以上に改善する

≪O-P≫観察計画

・1日3回の食事摂取量と内容（主食、副食別）を確認する
・食事前後の悪心・嘔吐の有無と程度を観察する
・嘔吐の回数、性状、量を確認する
・1日3回の体重測定値を確認する
・毎食前の口腔内の状態（口内炎、出血、乾燥）を観察する
・1日の水分摂取量（経口、点滴）を測定する
・1日の排尿回数と尿量を測定する
・脱水症状（皮膚の乾燥、眼球の張り、口渇）の有無を確認する
・制吐剤使用後の効果を評価する
・バイタルサインの変化（特に血圧低下、頻脈）を観察する
・冷感による末梢神経障害の有無と程度を確認する
・味覚の変化の有無を確認する
・食事に対する意欲や心理状態を観察する
・活動量と疲労度を観察する

≪T-P≫援助計画

・食事は少量ずつ（150-200g程度）に分けて提供する
・食事の温度を適温（20-40℃）に調整する
・食事前に部屋の換気を行う
・食事摂取時は上体を30度以上挙上する
・食後30分は左側臥位での安静を促す
・嘔気出現時は深呼吸を促す
・食事の時間帯を患者の体調に合わせて調整する
・食事環境を整える（他患者の食事の匂いを避ける）
・清潔な口腔内を保持するため毎食前後の含嗽を実施する
・制吐剤は指示された時間に確実に投与する
・経口補水液や栄養補助食品を患者の嗜好に合わせて準備する
・食事時の体動はゆっくりと行うよう介助する

≪E-P≫教育・指導計画

・悪心・嘔吐時の対処方法（深呼吸法、安静保持）について説明する
・食事摂取時の工夫（一口量を少なく、よく噛んでゆっくり食べる）を指導する
・冷たい飲食物を避け、常温以上での摂取を勧める
・食後の体位（30度挙上、左側臥位）の必要性を説明する
・口腔ケアの重要性と具体的な方法を指導する
・水分摂取の必要性と1日の目標量（1740ml）について説明する
・栄養補助食品の効果的な使用方法を説明する
・退院後の食事管理について妻を含めた指導を行う

看護計画＃2

看護問題

＃化学療法による骨髄抑制に関連した感染リスク状態

長期目標

化学療法期間中、重篤な感染症を発症することなく経過できる

短期目標

1週間以内に感染予防行動が実施できる

≪O-P≫観察計画

・1日3回のバイタルサイン（体温、血圧、脈拍、呼吸数、酸素飽和度）を測定する
・末梢部の冷感や発赤の有無を確認する
・悪寒戦慄の有無を観察する
・発熱時の随伴症状（倦怠感、頭痛、関節痛）を確認する
・口腔内の状態（粘膜損傷、潰瘍、出血）を観察する
・咳嗽、痰の有無と性状を確認する
・排尿時の症状（排尿痛、頻尿）の有無を確認する
・消化器症状（腹痛、下痢）の有無を確認する
・手術創部の状態（発赤、熱感、浸出液）を観察する
・室温・湿度の状態を確認する
・活動量と疲労度を観察する
・食事、水分摂取状況を確認する
・血液検査データ（白血球数、好中球数、CRP）の推移を確認する

≪T-P≫援助計画

・手指衛生（手洗い、手指消毒）を確実に実施する
・環境整備（埃の除去、換気）を1日2回実施する
・室温を26℃前後、湿度を50-60%に調整する
・清潔なシーツ交換を週2回実施する
・必要時、体温管理のためのクーリングを実施する
・個室管理が必要な場合は速やかに対応する
・マスク着用の徹底を図る
・患者に接触する物品の清潔管理を行う
・口腔ケアを毎食前後に実施する
・清潔保持のための清拭を1日1回実施する
・陰部洗浄を毎日実施する
・輸液ラインの管理と固定を確実に行う

≪E-P≫教育・指導計画

・手洗い、手指消毒の重要性と具体的な方法を説明する
・含嗽の必要性と正しい方法を指導する
・発熱時の報告の必要性と目安について説明する
・面会者への感染予防対策（手指消毒、マスク着用）を説明する
・シャワー浴や清拭による清潔保持の必要性を説明する
・活動と休息のバランスについて指導する
・予防接種の必要性と実施時期について説明する
・退院後の感染予防対策について妻を含めた指導を行う

看護計画＃3

看護問題

＃化学療法による消化器症状に関連した排便パターンの変調

長期目標

化学療法終了時までに規則的な排便パターン（1日1回程度）を確立できる

短期目標

1週間以内に3日以上連続して排便がない状態を防ぐことができる

≪O-P≫観察計画

・排便の回数、性状、量を毎日確認する
・最終排便からの経過時間を確認する
・腹部の状態（膨満感、腸蠕動音、圧痛）を1日2回観察する
・食事摂取量と水分摂取量を測定する
・排尿回数と性状を確認する
・活動量と臥床時間を観察する
・バイタルサインの変化を確認する
・悪心・嘔吐の有無と程度を観察する
・腹部症状（腹痛、膨満感）の有無を確認する
・センノシド錠の服用状況と効果を確認する
・歩行時のふらつきの有無を観察する
・トイレ動作の自立度を確認する
・疲労度と休息状況を観察する
・血液データ（電解質、BUN、Cr）の推移を確認する

≪T-P≫援助計画

・水分摂取を促し、1日1500ml以上の摂取を目標とする
・腸蠕動運動促進のための腹部マッサージを1日2回実施する
・必要時、温罨法を実施する
・排便時は安全な姿勢を保持できるよう環境を整える
・トイレ歩行時は転倒予防のため見守りを行う
・活動量維持のため病棟内歩行を促す
・臥床時は腸蠕動を促すため適度な体位変換を促す
・排便チェック表を作成し記録する
・緩下剤使用時は適切な時間に投与する
・トイレ環境を清潔に保つ
・必要時ポータブルトイレを設置する
・プライバシーの保護に配慮する