本事例の要約
慢性膵炎の急性増悪で緊急入院となった65歳男性の事例。強い腹痛、背部痛、嘔吐を主訴に救急搬送され、入院となる。長年のアルコール多飲が原因と考えられる。入院後は絶食・補液管理となり、疼痛コントロールを実施している。介入日は6月15日(入院2日目)である。
8.身体を清潔に保ち、身だしなみを整え、皮膚を保護する
A氏は65歳の男性で、慢性膵炎の急性増悪により入院中である。入院前の清潔習慣に関する具体的な情報は限られているが、自立した社会生活を送っていたことから、入浴や身だしなみの管理は自立していたと推測される。A氏は几帳面で真面目な性格であり、中小企業の経理部長として現役で働いていることからも、日常的には適切な清潔行動と身だしなみの維持ができていたと考えられる。
現在の入院中は、腹痛・背部痛のため活動が制限されており、短距離のみゆっくり歩行可能で、長距離は車椅子を使用している状態である。入院中の清潔保持に関しては、入浴は実施せず、清拭で身体清潔を保持している状況である。麻痺はなく、運動機能自体は保たれているが、疼痛による動作制限があるため、清潔行動にも影響が出ていると考えられる。特に上肢の挙上時に疼痛が増強するとの記載があり、洗体動作や洗髪が困難な状態が推測される。
口腔内の状態については、絶食中であり口渇感が強く、口腔内の不快感を訴えるため、口腔ケアを1日3回実施している。これにより口腔内の清潔は一定程度維持されていると考えられるが、口渇による口腔粘膜の乾燥や不快感は持続している可能性がある。鼻腔の保清や爪の状態に関する具体的な情報は提供されていないため、これらの部位の清潔状態を評価する必要がある。
排泄に関しては、尿は尿器での自力排尿が可能であり、尿失禁の記載はない。尿量は補液量に応じて1日1500〜2000ml程度あり、尿の色調は濃く、膵炎による軽度脱水状態を反映している。排便は入院後まだなく、腹部膨満感を訴えている状態である。腸蠕動音はやや減弱しており、絶食と安静、疼痛による腸管機能低下が考えられる。便失禁の既往はなく、現在も失禁状態ではないが、排便がない状態が続いている。
皮膚の状態については具体的な記載がないが、65歳という年齢を考慮すると、加齢に伴う皮膚の乾燥や弾力性の低下が予測される。また、疼痛による活動制限と臥床時間の延長から、特に背部や臀部の皮膚の圧迫リスクも考慮する必要がある。入院2日目の体温は37.2℃とやや高めであり、微熱に伴う発汗が皮膚の清潔状態に影響している可能性もある。
また、末梢静脈路が確保されていることから、刺入部の皮膚状態の観察と管理も重要である。現在の点滴刺入部の状態に関する情報は明示されていないが、感染兆候や固定部の皮膚トラブルがないか評価する必要がある。
看護介入としては、まず現在の清拭方法を評価し、疼痛を最小限に抑えながら効果的な清潔ケアを提供することが重要である。体位変換や清拭の際には疼痛の程度を確認しながら実施し、必要に応じて疼痛時の鎮痛薬投与を事前に行うことが望ましい。
口腔ケアについては、現在1日3回実施しているが、口渇感が強いことから、より頻回なケアや保湿剤の使用を検討することも有効かもしれない。医師の許可があれば、少量の水分で口腔内を湿らせることも考慮する。
皮膚の保護に関しては、特に圧迫部位(背部、仙骨部、踵部など)の定期的な観察と除圧の工夫が必要である。体位変換の頻度や方法を検討し、必要に応じて除圧マットレスの導入も検討する。皮膚の乾燥が認められる場合には保湿剤の使用も効果的である。
点滴刺入部については、感染兆候(発赤、腫脹、熱感、疼痛)がないか定期的に観察し、固定テープによる皮膚トラブルがないか確認する。刺入部の消毒と固定の交換を適切なタイミングで実施する。
排泄に関しては、排尿時の介助方法の工夫と、排便がない状態が続いていることから、医師と相談の上で緩下剤の使用や腹部マッサージなどの便秘対策を検討する必要がある。
また、A氏の自立心を尊重しながら、必要な範囲で介助を提供することが重要である。疼痛の軽減に伴い、徐々に自己ケア能力を高められるよう支援していく。妻が協力的であることから、家族の支援を取り入れた清潔ケアの計画も有効かもしれない。
さらに、入院環境における快適性の確保も重要である。ベッド周囲の整理整頓や寝具の清潔維持、適切な室温・湿度の管理により、快適な療養環境を提供する。
なお、情報が不足している部分(入浴習慣の詳細、鼻腔の保清状況、爪の状態、皮膚の詳細な状態など)については追加の情報収集が必要である。特に入院前の清潔習慣の詳細は、退院後の生活指導にも関連するため重要である。
以上のアセスメントから、A氏の「身体を清潔に保ち、身だしなみを整え、皮膚を保護する」ニーズは現時点では部分的に充足されていない状態である。疼痛による動作制限があり、清拭による身体清潔の保持が行われているものの、自立した清潔行動ができていない。また、口渇感による口腔内の不快感が持続しており、排便がない状態が続いていることからも、全体的な清潔と快適さの確保が十分でない状況と考えられる。適切な看護介入により、疼痛を最小限に抑えながら清潔のニーズを充足させるための支援が必要である。
看護問題の明確化
#慢性膵炎の急性増悪に伴う疼痛に関連したセルフケア不足(清潔・身だしなみ)
事例の目次
【ヘンダーソン】慢性膵炎 入院2日目(0019)| 今回の情報
1.正常に呼吸する
2.適切に飲食する
3.あらゆる排泄経路から排泄する
4.身体の位置を動かし、また良い姿勢を保持する
5.睡眠と休息をとる
6.適切な衣類を選び、着脱する
7.体温を生理的範囲内に維持する
8.身体を清潔に保ち、身だしなみを整え、皮膚を保護する
9.環境のさまざまな危険因子を避け、また他人を傷害しないようにする
10.自分の感情、欲求、恐怖あるいは気分を表現して他者とコミュニケーションを持つ
11.自分の信仰に従って礼拝する
12.達成感をもたらすような仕事をする
13.遊び、あるいはさまざまな種類のレクリエーションに参加する
14.正常な発達および健康を導くような学習をし、発見をし、あるいは好奇心を満足させる
看護計画
この記事の執筆者

・看護師と保健師免許を保有
・現場での経験-約15年
・プリセプター、看護学生指導、看護研究の経験あり
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