【ヘンダーソン】心不全 入院3日目(0005)| 1.正常に呼吸する

ヘンダーソン

事例の要約

慢性心不全の急性増悪により緊急入院となった72歳男性の事例である。入院3日目において、薬物療法と水分・塩分制限により症状の改善を認めており、今後は再発予防に向けた生活指導と退院支援を要する事例である。

1.正常に呼吸する

慢性心不全は、心臓のポンプ機能が低下することで全身への血液供給が不十分となり、その結果として肺うっ血や体液貯留を引き起こす症候群である。本症例では、左室駆出率が35%まで低下しており、中等度の僧帽弁閉鎖不全を合併している。これにより肺うっ血が生じ、呼吸困難や起座呼吸などの症状が出現している。また、体液貯留により両下肢の浮腫も認められている。

入院時の呼吸状態は、呼吸数24回/分と頻呼吸を呈し、室内気での経皮的動脈血酸素飽和度は94%と軽度の低酸素血症を認めていた。胸部レントゲン検査では、心胸郭比65%と心拡大を認め、両側肺うっ血像と胸水貯留が確認されている。肺うっ血を示す重要な聴診所見として、肺底部を中心とした湿性ラ音(捻髪音)の聴取が特徴的である。また、胸水貯留部位では呼吸音の減弱が認められる。心不全の増悪時には、これらの肺雑音が増強することから、定期的な聴診による評価が重要である。なお、喘鳴(wheeze)の有無についても確認が必要であり、特に心臓喘息の合併の可能性を考慮する必要がある。入院3日目には、利尿薬による治療効果により呼吸数は18回/分に改善し、経皮的動脈血酸素飽和度も96%まで上昇している。この時点での肺音の変化についても詳細な評価が必要である。

入院時に認められた起座呼吸は、体位性の呼吸困難を示す重要な症状である。これは臥位をとることで静脈還流が増加し、肺うっ血が悪化することに起因している。治療開始後は症状が改善し、現在は1-2個の枕を使用して仰臥位での睡眠が可能となっている。この変化は心不全の改善を示す重要な指標である。

呼吸機能に関しては、肺うっ血による拘束性換気障害が考えられる。夜間の体位変換時や活動時の呼吸音の変化、特に湿性ラ音の増強の有無を注意深く観察する必要がある。喀痰の性状や量についても、心不全の増悪による肺うっ血を反映する重要な指標となるため、詳細な観察が必要である。

喫煙歴はなく、呼吸器系へのタバコによる直接的な障害は否定的である。また、呼吸に関するアレルギーの既往もない。これらの要因は、呼吸機能の維持に有利に働いている。72歳という年齢を考慮すると、加齢による呼吸筋力の低下や肺の弾性収縮力の減少が存在する可能性があり、これらは心不全による呼吸障害を増悪させる要因となりうる。

現在の活動状況として、病棟内歩行時に軽度の息切れを認めており、看護師の見守りを要する状態である。上着の着脱時にも軽度の息切れがみられ、日常生活動作における呼吸負荷の影響が確認されている。この状況から、段階的な活動範囲の拡大と、それに伴う呼吸状態の変化を慎重に観察する必要がある。

必要な看護介入として、呼吸状態の定期的な観察(呼吸数、呼吸パターン、経皮的動脈血酸素飽和度のモニタリング、肺音の聴診)を継続する。特に、心不全の増悪を示唆する湿性ラ音の増強や呼吸音の左右差の出現などに注意を払う。活動時の呼吸状態の変化を観察し、過度な負荷を避けるよう活動と休息のバランスを調整する。就寝時の体位調整を行い、必要に応じて枕の数や角度を調整する。呼吸困難感の増強時に対応できるよう、患者教育と自己管理指導を行う。

現在の呼吸に関するニーズは、治療による改善は認められているものの、完全には充足されていない状態である。活動時の軽度の息切れが残存しており、夜間の体位にも配慮が必要である。しかし、入院時と比較して著明な改善を認めており、継続的な観察と段階的なリハビリテーションの実施により、さらなる改善が期待できる状態である。

看護問題の明確化

#疾患に伴う肺うっ血に関連した呼吸機能障害

事例の目次

この記事の執筆者

なっちゃん
なっちゃん

・看護師と保健師免許を保有
・現場での経験-約15年
・プリセプター、看護学生指導、看護研究の経験あり

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