【気胸】疾患解説と看護のポイント

呼吸器科

疾患概要

定義

気胸とは、何らかの原因により胸膜腔に空気が入り込み、肺が虚脱(縮んでしまう)した状態を指します。正常な状態では、胸膜腔は陰圧(大気圧より低い圧)に保たれており、肺は胸壁に張り付いて膨らんでいます。しかし、肺や胸壁に穴が開くと、空気が胸膜腔に流入して陰圧が失われ、肺が縮んでしまいます。

気胸は大きく分けて自然気胸外傷性気胸医原性気胸の3つに分類されます。

自然気胸は、外傷などの明らかな原因がなく自然に発症するもので、さらに原発性自然気胸(基礎疾患のない健常者に発症)と続発性自然気胸(肺疾患を基礎に持つ患者に発症)に分けられます。

外傷性気胸は、胸部外傷(交通事故、刺創、銃創など)により胸壁や肺が損傷して発症します。

医原性気胸は、医療行為(中心静脈カテーテル挿入、胸腔穿刺、肺生検など)に伴って発症します。

特殊な病態として緊張性気胸(tension pneumothorax)があります。これは、胸膜腔に空気が一方的に流入し続け、胸腔内圧が異常に上昇する重篤な状態で、緊急処置が必要です。

疫学

気胸の発症率は人口10万人あたり年間約18〜28人とされ、比較的頻度の高い疾患です。

原発性自然気胸は、15〜35歳の痩せ型の若年男性に圧倒的に多く、男女比は約6:1です。特に背が高く痩せた体型の人に好発し、「背の高い若い男性が突然胸が痛いと訴えたら気胸を疑え」と言われるほど典型的な特徴があります。日本では年間約1万人が原発性自然気胸を発症していると推定されています。

続発性自然気胸は、COPD(慢性閉塞性肺疾患)や肺気腫などの基礎疾患を持つ高齢者に多く見られます。こちらは原発性よりも重症化しやすく、呼吸不全に至るリスクが高いです。

再発率が高いことも特徴で、初回気胸の患者の約30〜50%が再発し、2回目の気胸を経験した患者では60〜80%が再々発すると言われています。

原因

原発性自然気胸 明確な基礎疾患はありませんが、肺の表面にブラ(bulla)やブレブ(bleb)と呼ばれる小さな袋状の構造物が存在し、これが破裂することで発症します。ブレブは肺尖部(肺の最上部)に好発し、胸膜のすぐ下にできる小さな空気の袋です。なぜ痩せ型の若年男性にブレブができやすいのかは完全には解明されていませんが、急速な身長の伸びと肺の成長のアンバランス、陰圧の影響などが関与していると考えられています。

誘因としては、咳、くしゃみ、重いものを持つ、トランペット演奏、スキューバダイビング、飛行機搭乗などの胸腔内圧が変化する行動が挙げられますが、安静時に突然発症することも多いです。

続発性自然気胸 基礎疾患として以下のようなものがあります:

  • COPD、肺気腫:最も多い原因で、高齢者に多い
  • 肺結核(特に陳旧性肺結核)
  • 間質性肺炎、肺線維症
  • 気管支喘息
  • 肺癌
  • ニューモシスチス肺炎(AIDS患者)
  • リンパ脈管筋腫症(LAM):若年女性に発症する稀な疾患
  • マルファン症候群などの結合組織疾患

外傷性気胸

  • 鈍的外傷:交通事故、転落などによる肋骨骨折が肺を損傷
  • 穿通性外傷:刺創、銃創により胸壁や肺に穴が開く

医原性気胸

  • 中心静脈カテーテル挿入(鎖骨下静脈穿刺)
  • 胸腔穿刺
  • 経気管支肺生検
  • 人工呼吸管理(高い気道内圧による肺損傷)
  • 肺切除術後

これらの医療行為に伴う合併症として気胸が発生することがあり、処置後は注意深い観察が必要です。


病態生理

気胸の病態を理解するには、正常な呼吸のメカニズムを知ることが重要です。

正常な胸膜腔の生理

胸膜腔は壁側胸膜と臓側胸膜に囲まれた密閉空間で、通常は陰圧(約-5cmH2O)に保たれています。この陰圧により、肺は常に外側に引っ張られ、胸壁に密着して膨らんでいます。吸気時には横隔膜が収縮して胸腔が拡大し、胸膜腔の陰圧がさらに増強(約-8cmH2O)することで、肺に空気が流入します。

気胸発症のメカニズム

肺や胸壁に穴が開くと、そこから胸膜腔に空気が流入します。空気が入ることで胸膜腔の陰圧が失われ、肺を外側に引っ張る力がなくなります。その結果、肺は自らの弾性収縮力により内側に縮んでしまいます(虚脱)。肺が虚脱すると、換気可能な肺容積が減少し、ガス交換が障害されます。

気胸の程度と分類

気胸の程度は、肺の虚脱の範囲により軽度・中等度・高度に分類されます。胸部X線で、肺尖部から胸壁までの距離により評価します:

  • 軽度:2cm未満
  • 中等度:2cm以上で肺虚脱が肺野の1/3〜1/2程度
  • 高度:肺虚脱が肺野の1/2以上

開放性気胸と閉鎖性気胸

  • 閉鎖性気胸:胸壁に外部との交通がなく、胸膜腔への空気流入が自然に止まる状態。自然気胸の多くはこのタイプで、軽度であれば自然吸収により治癒することもあります
  • 開放性気胸:胸壁に穴が開いており、外部と胸膜腔が交通している状態。外傷性気胸で見られます

緊張性気胸(tension pneumothorax)

最も危険な病態で、胸膜腔への空気流入が一方向弁のように続き、胸腔内圧が異常に上昇します。陽圧となった胸腔は縦隔を健側に押しやり、健側の肺も圧迫します。さらに、心臓や大静脈が圧迫されることで静脈還流が障害され、心拍出量が低下してショック状態に至ります。

緊張性気胸の徴候:

  • 高度の呼吸困難
  • 頻脈と血圧低下(ショック)
  • 頸静脈の怒張
  • 患側の呼吸音消失
  • 気管の健側への偏位
  • チアノーゼ

緊張性気胸は緊急を要する病態であり、診断がつけば胸部X線を待たずに直ちに胸腔穿刺または胸腔ドレーン挿入が必要です。

再発のメカニズム

原発性自然気胸では、ブレブが複数存在することが多く、一度治癒しても別のブレブが破裂して再発します。また、破裂したブレブの修復が不完全だと同じ部位から再発することもあります。そのため、再発予防には根治的な治療(手術)が推奨されます。


症状・診断・治療

症状

気胸の症状は、気胸の程度、発症の速度、基礎疾患の有無により異なります。

典型的な症状

  • 突然の胸痛:最も特徴的な症状で、患側の鋭い胸痛が突然出現します。安静時に突然起こることも多く、「チクッとした」「刺すような」痛みと表現されます。痛みは数時間〜数日で軽減することが多いです
  • 呼吸困難:気胸の程度に応じて呼吸困難が出現します。軽度の気胸では軽い息切れ程度ですが、高度の気胸や緊張性気胸では安静時でも高度の呼吸困難を呈します
  • 乾性咳嗽:刺激性の乾いた咳が出ることがあります

身体所見

  • 患側の呼吸音減弱または消失:聴診で最も重要な所見です
  • 患側の胸部の動きの減少:視診で患側の呼吸運動が低下しています
  • 打診で鼓音:胸腔内に空気があるため、打診すると太鼓を叩いたような高い音(鼓音)が聴かれます
  • 頻呼吸と頻脈:低酸素血症の代償として呼吸数と心拍数が増加します
  • チアノーゼ:重症例では口唇や爪床が紫色になります

緊張性気胸の症状 前述の通り、高度の呼吸困難、ショック、頸静脈怒張、気管偏位などが見られ、生命を脅かす状態です。

続発性自然気胸の特徴 基礎に肺疾患があるため、原発性よりも症状が重く、呼吸不全に陥りやすいです。高齢者が多いため、意識障害や全身状態の悪化を伴うこともあります。

軽度の気胸では無症状のこともある 気胸の範囲が小さい場合、ほとんど症状がなく、健康診断や他の理由で撮影した胸部X線で偶然発見されることもあります。

診断

気胸の診断は、臨床症状と画像検査により行います。

胸部X線検査(最も重要)

立位正面像で、胸膜腔に黒く抜けた空気の層(気胸腔)と、虚脱した肺の境界線(visceral pleural line)が確認できます。軽度の気胸では呼気時の撮影により検出しやすくなります。

胸部X線で評価する項目:

  • 気胸の範囲(肺尖部から胸壁までの距離)
  • 肺虚脱の程度
  • 縦隔偏位の有無(緊張性気胸の所見)
  • 胸水の有無(血胸の合併)

胸部CT検査

胸部X線で診断が困難な場合や、ブレブの位置を確認する場合に有用です。特に手術を検討する際は、CTでブレブの数や位置を詳細に評価します。わずかな気胸もCTでは検出可能です。

血液ガス分析

低酸素血症(PaO2低下)の程度を評価します。続発性自然気胸や高度の気胸では、著明な低酸素血症を呈することがあります。

心電図

気胸では時に心電図変化(T波の変化、軸偏位)が見られることがあります。また、胸痛の鑑別診断として心筋梗塞を除外するためにも実施します。

鑑別診断

気胸と鑑別が必要な疾患:

  • 急性心筋梗塞
  • 肺塞栓症
  • 大動脈解離
  • 胸膜炎
  • 肋骨骨折
  • 筋骨格系の痛み

突然の胸痛と呼吸困難では、これらの重篤な疾患を除外することが重要です。

治療

気胸の治療は、気胸の程度、症状の重症度、原発性か続発性か、初発か再発かにより異なります。

経過観察(安静・酸素療法)

軽度の気胸(肺虚脱が軽度で症状が軽い)では、入院して安静にし、酸素投与を行いながら自然吸収を待ちます。胸膜腔の空気は1日あたり約1.25%吸収されるため、小さな気胸であれば1〜2週間で改善します。酸素投与により、空気の吸収が促進されます。

定期的に胸部X線を撮影し、気胸の改善を確認します。悪化傾向があればドレナージに移行します。

胸腔穿刺(脱気)

中等度の気胸や症状が強い場合、針やカテーテルを胸腔内に挿入して空気を吸引します。一時的な処置として行われることが多く、完全に空気を除去できない場合は胸腔ドレーンに移行します。

胸腔ドレーン挿入

高度の気胸、症状が強い気胸、続発性自然気胸、再発性気胸では、胸腔ドレーンを挿入して持続的に脱気します。ドレーンは通常、第4〜5肋間の中腋窩線上から挿入され、胸腔内の空気を体外に排出します。

ドレーンは持続吸引装置または水封式ドレーンバッグに接続され、陰圧を維持して肺の再膨張を促します。エアリーク(空気の漏れ)がなくなり、肺が完全に膨張したことが胸部X線で確認されれば、ドレーンを抜去します。通常、挿入後2〜7日程度でドレーン抜去が可能です。

手術療法

以下の場合、手術的治療が推奨されます:

  • 2回以上の再発
  • 両側気胸
  • 血胸を伴う気胸
  • エアリークが持続し、ドレナージで改善しない
  • 緊張性気胸
  • 特殊な職業(パイロット、ダイバーなど)

手術方法は胸腔鏡下手術(VATS: Video-Assisted Thoracic Surgery)が主流で、小さな切開から胸腔鏡を挿入し、ブレブを切除します。同時に胸膜癒着術を行い、肺と胸壁を癒着させて気胸の再発を予防します。

手術により再発率は約5%以下に低下しますが、完全にゼロにはなりません。

緊張性気胸の緊急処置

緊張性気胸は生命に関わるため、診断がつけば直ちに緊急減圧を行います。太い針(14〜16G)を第2肋間鎖骨中線上から胸腔内に挿入し、空気を抜いて胸腔内圧を下げます。その後、速やかに胸腔ドレーンを挿入します。

退院後の生活指導

  • 飛行機搭乗:気胸治癒後2週間以上経過し、胸部X線で完全に治癒していることを確認してから搭乗します
  • スキューバダイビング:気胸の既往がある場合、根治手術を受けていない限り、原則として禁止です
  • 喫煙:喫煙は気胸の再発リスクを高めるため、禁煙が強く推奨されます
  • 激しい運動:治癒後1ヶ月程度は激しい運動や重いものを持つことを避けます

看護アセスメント・介入

よくある看護診断・問題

  • 非効果的呼吸パターン:肺虚脱による呼吸機能の低下
  • ガス交換障害:換気領域の減少による低酸素血症
  • 急性疼痛:胸痛による不快感
  • 不安:突然の発症と呼吸困難による不安
  • 活動耐性低下:呼吸困難と胸腔ドレーン留置による活動制限

ゴードン機能的健康パターン

健康知覚-健康管理パターン

原発性自然気胸の患者は、多くが健康な若年者であり、突然の発症に驚き、強い不安を抱いています。「なぜ自分が気胸になったのか」「また再発するのではないか」という疑問や恐れを持つことが多いです。気胸の原因、治療方針、再発予防について、患者の理解度に応じて説明し、不安を軽減することが重要です。

喫煙者の場合、喫煙が気胸の再発リスクを高めることを説明し、禁煙を強く勧めます。また、再発の可能性が高いことを理解してもらい、症状が出現した際の早期受診の重要性を伝えます。

活動-運動パターン

気胸により呼吸機能が低下し、活動耐性が著しく制限されます。特に高度の気胸では、安静時でも呼吸困難があり、トイレ歩行さえ困難なこともあります。胸腔ドレーンが挿入されると、さらに活動が制限されます。

呼吸状態の継続的モニタリングが最優先です。呼吸数、SpO2、呼吸パターン、呼吸困難の程度、チアノーゼの有無を定期的に観察します。患側の呼吸音を聴診し、肺の再膨張を評価します。バイタルサインの変化、特に頻脈や血圧低下は緊張性気胸への進展を示唆するため、注意深く観察します。

胸腔ドレーンが挿入されている場合は、ドレーンの管理が重要です。ドレーンの屈曲や閉塞を防ぎ、エアリークの有無、排液量を観察します。患者の体位変換や移動の際は、ドレーンが抜けないよう注意します。

睡眠-休息パターン

胸痛や呼吸困難、胸腔ドレーンの違和感により、睡眠が障害されます。痛みがある間は仰臥位が困難で、患側を下にした側臥位や半座位が楽なことが多いです。適切な疼痛管理と体位の工夫により、睡眠を確保できるよう支援します。

ドレーンが留置されている間は、体動が制限され、同一体位での睡眠となりがちです。クッションや枕を使用して安楽な姿勢を保持し、可能な範囲で体位変換を促します。

コーピング-ストレス耐性パターン

突然の入院と治療により、若年者は学校や仕事への影響を心配します。ドレーン留置による活動制限や入院の長期化は、精神的ストレスを増大させます。また、再発への不安や手術の可能性についても懸念を持ちます。

患者の思いを傾聴し、不安を表出できる環境を作ります。治療経過や今後の見通しについて説明し、見通しを持てるよう支援します。必要に応じて、学校や職場との連絡調整も行います。

役割-関係パターン

若年者の場合、入院により学業や部活動、アルバイトなどの社会活動が中断されます。友人との交流も制限され、孤独感を感じることがあります。面会やスマートフォンの使用を許可し、社会とのつながりを維持できるよう配慮します。

ヘンダーソン14基本的ニード

1. 正常な呼吸

気胸患者にとって最も重要なニードです。肺虚脱により換気が障害されているため、呼吸状態を継続的に観察します。呼吸数が増加(頻呼吸)、SpO2が低下、呼吸困難の増悪、チアノーゼの出現などの徴候があれば、直ちに医師に報告します。

酸素療法が処方されている場合は、適切な酸素流量を維持し、効果を評価します。緊張性気胸への進展を疑う所見(急激な呼吸困難の増悪、血圧低下、頸静脈怒張)があれば、緊急で医師に連絡します。

4. 体位の保持と変換

呼吸を楽にするため、患者が最も楽な体位を見つけられるよう支援します。多くの場合、半座位または座位が楽です。胸腔ドレーンが留置されている場合は、ドレーンの屈曲や抜去を防ぎながら、体位変換を行います。

長時間の同一体位は褥瘡や筋肉疲労のリスクとなるため、疼痛管理を行いながら、2〜3時間ごとに体位変換を促します。ベッドアップや側臥位への変換時は、患者に事前に説明し、ゆっくりと行います。

8. 身体を清潔に保つ

胸腔ドレーンが留置されている間は、全身清拭で対応します。ドレーン挿入部は清潔に保ち、感染予防のため定期的に消毒とガーゼ交換を行います。ドレーンが抜去され、症状が改善したら、段階的に入浴を再開します。

9. 危険の回避

胸腔ドレーンの管理が最も重要です。ドレーンの屈曲、閉塞、自己抜去を防ぎます。ドレーンは常に患者の体位より低い位置に保ち、逆流を防ぎます。移動や体位変換の際は、ドレーンの状態を確認します。

水封式ドレーンの場合、水封部に常に水が入っていることを確認し、エアリーク(呼吸に同調した気泡)の有無を観察します。エアリークが続く場合は、空気の漏れが持続していることを意味し、医師に報告します。

持続吸引の場合、吸引圧が適切に設定されているか(通常-10〜-20cmH2O)を確認します。

ドレーン抜去後は、気胸の再発に注意します。抜去後24時間は特に注意深く観察し、呼吸困難や胸痛の出現があれば直ちに報告します。抜去後の胸部X線で気胸の再発がないことを確認します。

疼痛管理

胸痛は患者にとって辛い症状であり、適切な疼痛管理が必須です。疼痛スケール(NRSやVAS)を用いて痛みの程度を評価し、医師の指示に基づき鎮痛薬を適切に投与します。痛みが強い場合は、NSAIDsやオピオイド鎮痛薬も使用されます。

深呼吸や咳をすると痛みが増強しますが、無気肺や肺炎を予防するため、痛みをコントロールしながら深呼吸や咳嗽を促すことも重要です。

14. 学習

気胸の病態、治療方針、再発の可能性について、患者の理解度に応じて説明します。特に、再発率が高いこと(初回気胸で30〜50%)を伝え、症状が再出現した際の早期受診の重要性を強調します。

退院後の生活指導も重要です:

  • 禁煙:喫煙は気胸の再発リスクを約2倍に高めるため、禁煙を強く勧めます
  • 激しい運動の制限:治癒後1ヶ月程度は、激しい運動や重いものを持つことを避けます
  • 飛行機搭乗:完全に治癒してから2週間以上経過後に搭乗可能です
  • スキューバダイビング:根治手術を受けていない限り、原則禁止です
  • 高所への移動:気圧の変化により気胸が悪化する可能性があるため、治癒するまで避けます

手術が必要になる可能性(再発時や初回でも重症の場合)についても説明し、手術により再発率が大幅に低下することを伝えます。

看護計画・介入の内容

  • 呼吸状態の継続的モニタリング:呼吸数、SpO2、呼吸パターン、呼吸困難の程度を1〜2時間ごとに観察します。患側の呼吸音を聴診し、肺の再膨張を評価します。緊張性気胸への進展を疑う所見があれば、直ちに医師に報告します
  • バイタルサインの観察:体温、脈拍、血圧を定期的に測定します。頻脈や血圧低下は緊張性気胸や出血の徴候である可能性があり、注意が必要です
  • 胸腔ドレーンの管理:ドレーンの屈曲、閉塞、自己抜去を防ぎます。エアリークの有無、排液量、排液の性状(血性、漿液性)を観察し、記録します。挿入部の観察と消毒を毎日行い、感染予防に努めます。水封部の水位が適切か、吸引圧が設定通りかを確認します
  • 疼痛アセスメントと管理:疼痛スケールを用いて痛みの程度を定期的に評価します。鎮痛薬を適切なタイミングで投与し、効果を確認します。体位の工夫や温罨法なども活用し、多角的に疼痛を緩和します
  • 酸素療法の管理:低酸素血症がある場合は、医師の指示に基づき酸素投与を行います。SpO2を継続的にモニタリングし、90%以上を維持できるよう酸素流量を調整します
  • 体位管理と安楽の提供:患者が最も楽な体位(多くは半座位または座位)を保持できるよう、ベッドアップやクッションを使用します。胸腔ドレーン留置中も、安全に体位変換ができるよう支援します
  • 活動と安静のバランス:急性期は安静が必要ですが、過度の臥床は廃用症候群や肺炎のリスクとなります。症状が改善してきたら、段階的に活動を拡大します。ドレーン留置中でも、歩行が可能であれば、ドレーンバッグを携帯して病室内を歩くことを促します
  • 深呼吸・咳嗽指導:無気肺や肺炎を予防するため、痛みをコントロールしながら深呼吸や咳嗽を促します。インセンティブスパイロメトリー(呼吸訓練器)を使用することもあります
  • 心理的支援:突然の発症と入院、ドレーン留置による苦痛に対し、患者の思いを傾聴します。治療経過や今後の見通しについて説明し、不安を軽減します。特に若年者では、学業や仕事への影響について配慮します
  • 合併症の観察:再膨張性肺水腫(急速な肺の再膨張により起こる肺水腫)、出血、感染、皮下気腫などの合併症に注意します。特にドレーン挿入後や抜去後は、注意深く観察します
  • 退院指導:禁煙、激しい運動の制限、飛行機搭乗やダイビングの制限、再発時の症状と早期受診の重要性について具体的に説明します。手術が必要になる可能性についても情報提供します

よくある疑問・Q&A

Q: 気胸はなぜ痩せ型の若い男性に多いのですか?

A: 完全には解明されていませんが、いくつかの理由が考えられています。痩せ型で背の高い人は、急速な身長の伸びに対して肺の成長が追いつかず、肺の上部(肺尖部)に機械的なストレスがかかりやすいと考えられています。この部位にブレブ(小さな空気の袋)ができやすく、これが破裂することで気胸が発症します。また、男性ホルモンの影響や喫煙率の高さも関与している可能性があります。若年男性に多いとはいえ、女性や高齢者でも発症するため、痩せ型の若い男性だけの病気ではありません。

Q: 気胸になったら必ず入院が必要ですか?自宅で安静にしていればよくなりませんか?

A: 気胸の程度により異なります。ごく軽度の気胸(肺虚脱が2cm未満で症状が軽い)では、外来で経過観察することもあります。しかし、中等度以上の気胸や症状が強い場合、続発性自然気胸の場合は、入院治療が原則です。気胸は自然に悪化して緊張性気胸に進展する可能性があり、これは生命に関わる緊急事態です。また、自宅での安静では、気胸の改善を確認する胸部X線が撮影できず、悪化に気づくのが遅れる危険があります。医師の判断に従い、必要な場合は必ず入院してください。

Q: 胸腔ドレーンはどのくらいの期間入れておく必要がありますか?痛くないですか?

A: 胸腔ドレーンの留置期間は、気胸の治癒状況により異なりますが、通常2〜7日程度です。エアリーク(空気の漏れ)がなくなり、胸部X線で肺が完全に膨張したことが確認されれば、ドレーンを抜去します。軽症であれば2〜3日で抜去できることもありますが、エアリークが続く場合は1週間以上留置されることもあります。

ドレーン挿入時は局所麻酔を使用するため、挿入の瞬間は痛みがありますが、麻酔が効けば痛みは軽減します。ドレーン留置中は、挿入部の違和感や軽い痛みがありますが、多くの患者は数日で慣れます。鎮痛薬により痛みをコントロールできます。ドレーンが留置されていても、ベッド上で体を動かしたり、ドレーンバッグを携帯して歩行したりすることは可能です。

Q: 気胸は再発しやすいと聞きました。再発を防ぐにはどうすればいいですか?

A: 残念ながら、気胸は非常に再発しやすい疾患です。初回気胸の患者の約30〜50%が再発し、2回目の気胸を経験した患者では60〜80%が再々発すると言われています。再発を完全に防ぐことは困難ですが、以下の対策が有効です:

  • 禁煙:喫煙は気胸の再発リスクを約2倍に高めます。絶対に禁煙してください
  • 激しい運動や重いものを持つことを避ける:特に治癒後1ヶ月間は注意が必要です
  • 手術:2回以上再発した場合、手術(胸腔鏡下ブレブ切除術+胸膜癒着術)が強く推奨されます。手術により再発率は約5%以下に低下します
  • 早期受診:再発の兆候(突然の胸痛、呼吸困難)があれば、すぐに医療機関を受診します

Q: 気胸になったら飛行機に乗れないのですか?いつから乗れますか?

A: 気胸が完全に治癒していない状態で飛行機に搭乗すると、気圧の変化により胸腔内の空気が膨張し、気胸が悪化する危険があります。そのため、気胸治癒後2週間以上経過し、胸部X線で完全に治癒していることを確認してから搭乗するのが安全です。医師の許可を得てから搭乗してください。また、スキューバダイビングは、根治手術を受けていない限り、原則として禁止です。ダイビング中の気圧変化により、気胸が再発するリスクが非常に高いためです。

Q: 気胸の患者さんが突然呼吸困難を訴えたらどうすればいいですか?

A: まず呼吸状態を迅速に評価します。SpO2、呼吸数、呼吸パターン、チアノーゼの有無、意識レベルを確認し、バイタルサインを測定します。患側の呼吸音を聴診し、気胸の悪化や緊張性気胸への進展を疑います。以下の所見があれば、緊張性気胸の可能性があり、緊急対応が必要です:

  • 高度の呼吸困難
  • 頻脈と血圧低下(ショック)
  • 頸静脈の怒張
  • 気管の健側への偏位
  • 患側の呼吸音消失

直ちに医師に報告し、緊急での胸腔穿刺またはドレーン挿入を要請します。患者を楽な体位(半座位)にし、高濃度酸素を投与します。患者に穏やかに声をかけ、「すぐに処置をします」と安心させることも重要です。胸腔ドレーンが留置されている場合は、ドレーンの屈曲や閉塞がないか確認し、吸引装置が正常に作動しているか確認します。

Q: 気胸の手術はどのような手術ですか?傷は大きいですか?

A: 現在は胸腔鏡下手術(VATS: Video-Assisted Thoracic Surgery)が主流です。これは、胸壁に1〜3箇所の小さな切開(各1〜2cm程度)を作り、胸腔鏡(カメラ)と手術器具を挿入して行う手術です。胸腔鏡の映像をモニターで見ながら、ブレブを切除し、同時に胸膜癒着術(胸膜を人工的に癒着させる処置)を行います。

従来の開胸手術と比べて、傷が小さく、痛みが少なく、回復が早いのが特徴です。手術時間は通常1〜2時間程度で、入院期間は3〜7日程度です。手術により再発率は約5%以下に低下し、ほとんどの患者で再発を防ぐことができます。手術後は、徐々に日常生活に戻れますが、激しい運動は術後1〜2ヶ月は控えます。


まとめ

気胸は、胸膜腔に空気が入り込み、肺が虚脱する病態です。痩せ型の若年男性に好発する原発性自然気胸が最も多く、肺の表面にあるブレブの破裂が原因です。突然の胸痛と呼吸困難が特徴的で、診断は胸部X線で行います。

病態の本質は、胸膜腔の陰圧が失われることで肺が縮んでしまうことです。軽度であれば安静と酸素療法で自然治癒しますが、中等度以上では胸腔ドレーンによる脱気が必要です。緊張性気胸は生命に関わる緊急事態であり、迅速な減圧が必須です。

治療は気胸の程度により、経過観察、胸腔穿刺、胸腔ドレーン挿入、手術療法から選択されます。再発率が高い(初回で30〜50%)ことが特徴で、2回以上再発した場合は手術が推奨されます。

看護の要点は、呼吸状態の継続的モニタリング胸腔ドレーンの適切な管理です。呼吸数、SpO2、呼吸困難の程度を頻回に観察し、緊張性気胸への進展を早期に発見します。ドレーンの屈曲や閉塞を防ぎ、エアリークの有無を観察し、肺の再膨張を促します。疼痛管理も重要で、患者が安楽に過ごせるよう体位の工夫と鎮痛薬の適切な使用を行います。

患者教育では、禁煙の重要性再発の可能性とその症状早期受診の必要性を繰り返し説明します。退院後の生活制限(飛行機搭乗、ダイビング、激しい運動)についても具体的に指導します。

実習では、若年者が多いため、突然の入院による精神的ショックや将来への不安に配慮し、温かく寄り添う姿勢が大切です。バイタルサインの変化を見逃さず、異常があれば迅速に報告する姿勢を持ちましょう。


免責事項

本記事は教育・学習目的の情報提供です。

・一般的な医学知識の解説であり、個別の患者への診断・治療の根拠ではありません

・実際の看護実践は、患者の個別性を考慮し、指導者の指導のもと行ってください

・記事の情報は公開時点のものであり、最新の医学的知見と異なる場合があります

・本記事を課題としてそのまま提出しないでください

正確な情報提供に努めていますが、内容の完全性・正確性を保証するものではありません。


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