【血友病】疾患解説と看護のポイント

疾患解説

疾患概要

定義

血友病(Hemophilia)は、血液凝固因子が先天的に欠乏または機能低下している遺伝性出血性疾患です。血液凝固因子は血を固めるために必要なタンパク質で、これが不足すると出血が止まりにくくなります。血友病にはいくつかのタイプがありますが、最も多いのは血友病A(第VIII因子欠乏症)と血友病B(第IX因子欠乏症)です。血友病Aが全体の約80〜85%を占め、血友病Bが約15〜20%を占めます。軽い外傷でも長時間出血が続いたり、関節内や筋肉内に出血しやすくなったりする特徴があります。

疫学

血友病は男性に圧倒的に多い疾患で、女性の発症は極めて稀です。これは、血友病がX連鎖劣性遺伝という遺伝形式をとるためです。血友病Aの発症頻度は男性5,000〜10,000人に1人、血友病Bは男性30,000〜50,000人に1人程度とされています。日本では、血友病Aの患者さんが約5,000人、血友病Bが約1,000人程度と推定されています。人種や地域による発症率の差はほとんどありません。

原因

血友病は遺伝性疾患で、X染色体上にある凝固因子の遺伝子に変異があることで発症します。男性はX染色体を1本しか持たないため、その1本に変異があると血友病を発症します。女性はX染色体を2本持っているため、1本に変異があっても、もう1本が正常であれば発症せず「保因者」となります。ただし、稀に両方のX染色体に変異がある場合や、正常なX染色体が不活化される場合には、女性でも発症することがあります。

患者さんの約3分の2は家族歴がありますが、約3分の1は突然変異(新生突然変異)により発症します。つまり、家族に血友病の人がいなくても、突然変異で血友病の子どもが生まれる可能性があるということです。


病態生理

血液が固まるプロセス(血液凝固)は、非常に複雑なカスケード反応によって進行します。このプロセスには多くの凝固因子(I〜XIII因子)が順番に活性化されていく必要があります。血友病では、このうちの第VIII因子(血友病A)または第IX因子(血友病B)が欠乏しているため、凝固カスケードが途中で止まってしまい、フィブリンという血餅を作る最終段階に到達できません

血友病の重症度は、凝固因子の活性レベルによって分類されます。

  • 重症:凝固因子活性が1%未満(正常の1%未満)
  • 中等症:凝固因子活性が1〜5%
  • 軽症:凝固因子活性が5〜40%

重症の場合、自然出血(特に誘因なく出血する)が頻繁に起こります。特に関節内出血(血腫関節症)が特徴的で、膝、足首、肘などの大きな関節に繰り返し出血が起こります。関節内に血液が溜まると、関節の滑膜が刺激されて炎症を起こし、さらに出血しやすくなるという悪循環が生じます。長期間にわたって関節内出血を繰り返すと、関節が変形・破壊され、慢性的な関節障害(血友病性関節症)に至ります。

また、筋肉内出血も多く見られ、特に腸腰筋出血(腰からお尻にかけての深い筋肉の出血)は、神経や血管を圧迫して重篤な症状を引き起こすことがあります。頭蓋内出血は最も危険な合併症で、生命に関わる可能性があります。

中等症では、軽い外傷で出血が起こりやすくなりますが、自然出血は少なめです。軽症では、大きな外傷や手術の際に出血が止まりにくくなる程度で、日常生活ではほとんど症状が出ないこともあります。


症状・診断・治療

症状

血友病の症状は、重症度によって大きく異なります。

重症の場合、乳児期から症状が出現します。生後すぐの頭血腫(出産時の頭の皮下出血)、臍帯出血、予防接種後の皮下出血などで気づかれることがあります。ハイハイや歩行を始める時期(生後6ヶ月〜2歳頃)には、関節内出血筋肉内出血が頻発するようになります。

関節内出血では、関節の腫脹、疼痛、熱感、運動制限が見られます。膝、足首、肘が「ターゲット関節」(繰り返し出血しやすい関節)となりやすく、慢性化すると関節の変形や可動域制限が生じます。筋肉内出血では、打撲や捻挫様の症状、腫脹、疼痛が出現し、特に腸腰筋出血では股関節の屈曲位固定や大腿神経麻痺を引き起こすことがあります。

その他、口腔内出血(歯の生え変わり時、抜歯後など)、鼻出血血尿消化管出血なども見られます。最も危険なのは頭蓋内出血で、頭部外傷後だけでなく、自然に発症することもあります。頭痛、嘔吐、意識障害、痙攣などの症状が出現したら緊急対応が必要です。

中等症や軽症では、日常生活での症状は少ないですが、抜歯、手術、外傷時に異常な出血が見られ、診断のきっかけとなることがあります。

診断

診断は、家族歴、臨床症状、血液検査を総合して行われます。

血液検査では、まずAPTT(活性化部分トロンボプラスチン時間)という凝固検査が延長します。これは、内因系凝固経路に異常があることを示します。一方、PT(プロトロンビン時間)や血小板数は正常です。APTTが延長している場合、次に各凝固因子の活性測定を行い、第VIII因子または第IX因子の低下を確認します。これにより、血友病Aか血友病Bかを鑑別し、重症度も判定します。

遺伝子検査により、具体的な遺伝子変異を同定することもできます。これは、家族内の保因者診断や出生前診断にも役立ちます。

新生児期や乳児期に診断されることが多いですが、軽症の場合は成人してから診断されることもあります。家族歴がある場合は、出生後早期に検査を行い、早期診断・早期治療につなげることが重要です。

治療

血友病の治療の基本は、欠乏している凝固因子を補充することです。これを補充療法と呼びます。

定期補充療法(予防的投与)は、重症の患者さんに対して、出血が起こる前に定期的に凝固因子製剤を投与する方法です。週に2〜3回、または隔日に凝固因子製剤を静脈注射することで、血中の凝固因子レベルを一定以上に保ち、自然出血を予防します。この方法により、関節内出血の頻度が大幅に減少し、血友病性関節症の進行を防ぐことができます。現在では、重症の患者さんには定期補充療法が標準治療とされています。

オンデマンド療法(出血時補充療法)は、出血が起こった時に凝固因子製剤を投与する方法です。出血の部位や程度に応じて、必要な量を計算して投与します。出血後できるだけ早く(理想的には2時間以内)投与することが重要です。

凝固因子製剤には、血漿由来製剤(献血された血液から精製したもの)と遺伝子組換え製剤(遺伝子工学により作られたもの)があります。現在は、ウイルス感染のリスクがより低い遺伝子組換え製剤が主流となっています。

近年では、長時間作用型製剤(週1回の投与で効果が持続)や、皮下注射製剤(エミシズマブ:ヘムライブラ)も登場し、治療の利便性が大幅に向上しています。エミシズマブは、第VIII因子の働きを補う抗体製剤で、血友病Aの患者さんに使用され、週1回の皮下注射で出血予防効果が得られます。

在宅自己注射は、患者さんや家族が自宅で凝固因子製剤を注射する方法です。特に重症の患者さんでは、出血時に迅速に対応できるよう、在宅自己注射の導入が推奨されています。医療機関で十分なトレーニングを受けた後、自宅で実施します。

合併症の治療として、血友病性関節症に対しては、理学療法、装具療法、鎮痛薬の使用、場合によっては関節固定術や人工関節置換術などの整形外科的治療が行われます。また、約20〜30%の患者さんでインヒビター(凝固因子に対する抗体)が産生されることがあり、この場合は通常の凝固因子製剤が効かなくなるため、バイパス製剤や免疫寛容療法が必要になります。


看護アセスメント・介入

よくある看護診断・問題

  • 出血リスク状態(凝固因子欠乏による)
  • 急性疼痛(関節内出血、筋肉内出血による)
  • 身体可動性障害(関節症による)
  • 不安(出血への恐怖、将来への不安)
  • 知識不足(疾患管理、在宅自己注射に関する)

ゴードン機能的健康パターン

健康知覚-健康管理パターン

血友病は生涯にわたる管理が必要な慢性疾患です。患者さんや家族が疾患をどのように理解し、日常生活でどのような注意をしているかをアセスメントします。特に小児の場合、保護者が過保護になりすぎて活動を過度に制限していないか、逆に疾患を軽視して危険な行動を取っていないかを確認します。適切な活動と安全のバランスを見つけることが重要です。

栄養-代謝パターン

消化管出血のリスクや、関節症による活動制限から肥満になりやすいことに注意します。肥満は関節への負担を増やすため、適切な体重管理が重要です。また、口腔内出血を避けるために歯磨きが不十分になり、虫歯や歯周病のリスクが高まることもあります。

排泄パターン

血尿の有無を観察します。血尿が出現した場合は、程度や持続時間を確認し、医師に報告します。また、便の色(黒色便やタール便)で消化管出血の有無を評価します。

活動-運動パターン

関節内出血の既往や関節症の程度により、ADLや運動能力が制限されます。しかし、適度な運動は筋力を維持し、関節を保護する効果があるため、推奨されています。どのような活動をしているか、関節の可動域や筋力はどうか、疼痛の有無などを評価します。コンタクトスポーツや激しい運動は避けるべきですが、水泳、サイクリング、ウォーキングなどは推奨されます。

睡眠-休息パターン

関節痛により睡眠が妨げられていないか確認します。疼痛コントロールと安楽な体位の工夫が必要です。

認知-知覚パターン

関節内出血や筋肉内出血による疼痛の程度、部位、性質を詳しく評価します。また、出血の早期徴候(関節の違和感、ピリピリ感など)を患者さん自身が認識できているかも重要です。頭部外傷後は、頭蓋内出血の徴候(頭痛、嘔吐、意識障害)に注意します。

自己知覚-自己概念パターン

特に思春期の患者さんでは、疾患により「他の人と違う」という感覚や、活動制限によるコンプレックスを抱くことがあります。自己肯定感を高め、疾患と上手に付き合っていけるよう支援します。

役割-関係パターン

学校や職場での理解が得られているか、必要な配慮(体育の見学、重労働の制限など)がなされているかを確認します。また、家族のサポート体制や、疾患による家族への負担も評価します。

性-生殖パターン

思春期以降の患者さんには、遺伝カウンセリングの必要性を説明します。また、女性の保因者では、月経過多や分娩時の出血リスクについても情報提供が必要です。

ストレス-コーピングパターン

出血への恐怖、将来への不安、経済的負担などのストレスにどう対処しているかを評価します。患者会などのピアサポートの利用も有効です。

ヘンダーソン14基本的ニード

正常に呼吸する

頸部や気道周囲の出血は気道閉塞を引き起こす可能性があるため、注意が必要です。

適切に飲食する

口腔内出血を避けるため、硬い食べ物や熱すぎる食べ物は避けるよう指導します。また、適切な体重管理のための栄養指導も重要です。

正常に排泄する

血尿や下血の観察を行います。便秘は避けるべきで、排便時のいきみが出血を誘発することがあります。

身体の位置を動かし、またよい姿勢を保持する

関節症がある場合、適切な体位の工夫や補助具の使用が必要です。長時間同じ姿勢を続けると関節に負担がかかるため、定期的な体位変換や軽い運動を促します。

睡眠と休息をとる

関節痛がある場合、クッションなどで安楽な体位を工夫します。疼痛コントロールが不十分な場合は、医師と連携して鎮痛薬の調整を検討します。

適当な衣類を選び、着たり脱いだりする

関節の可動域制限がある場合、着脱しやすい衣類の選択や自助具の使用を提案します。

体温を正常範囲内に保つ

関節内出血時には関節の熱感が見られることがあります。アイシングが推奨されることもありますが、凝固因子製剤の投与が最優先です。

身体を清潔に保ち、身だしなみを整える

口腔ケアは重要ですが、出血を避けるため、柔らかい歯ブラシを使用し、優しく磨くよう指導します。デンタルフロスや歯間ブラシは慎重に使用します。

危険を回避する

出血リスクを避けるため、転倒予防、鋭利なものの取り扱い注意、コンタクトスポーツの回避などを指導します。また、定期補充療法や在宅自己注射を適切に実施できるよう支援します。

他者とコミュニケーションをもつ

患者さんや家族の不安や悩みを傾聴し、疾患について正しく理解できるよう教育的支援を行います。患者会の情報提供も有効です。

自分の信仰に従って礼拝する

遺伝性疾患であることへの罪悪感や、将来への不安に対するスピリチュアルなサポートも必要な場合があります。

達成感をもたらすような仕事をする

疾患があっても、適切な管理により通常の社会生活を送れることを伝え、就学・就労を支援します。

遊び、あるいはさまざまな種類のレクリエーションに参加する

年齢に応じた安全な遊びや趣味を提案し、QOLの向上を図ります。水泳などの推奨スポーツの情報提供も行います。

学習する

疾患の理解、在宅自己注射の手技、出血時の対応などについて、患者さんや家族が十分に学習できるよう支援します。

看護計画・介入の内容

  • 出血の早期発見:関節の腫脹、疼痛、可動域制限、皮下出血、血尿、鼻出血などの出血徴候を観察します。患者さんが出血の前兆(関節の違和感、ピリピリ感)を感じた時点で報告するよう指導します。
  • 凝固因子製剤の適切な投与:定期補充療法のスケジュールを守り、出血時はできるだけ早期に投与します。在宅自己注射を実施している場合は、手技が正しく行われているか、製剤の保管方法は適切かを確認します。
  • 疼痛管理:関節内出血時の疼痛に対して、凝固因子製剤の投与に加え、安静、患部の挙上、アイシング、鎮痛薬の使用などを行います。アスピリンやNSAIDsは血小板機能を抑制するため原則避け、アセトアミノフェンを使用します。
  • 関節の保護:出血時は安静を保ち、関節に負担をかけないようにします。出血が落ち着いたら、理学療法士と連携して関節可動域訓練や筋力強化訓練を行います。装具の使用も検討します。
  • 安全教育:転倒予防、危険な遊びや活動の回避、保護具(ヘルメット、肘・膝パッドなど)の使用について指導します。特に小児では、発達段階に応じた安全対策が必要です。
  • 口腔ケア指導:柔らかい歯ブラシを使用し、優しく磨くよう指導します。定期的な歯科受診を促し、抜歯などの処置前には必ず凝固因子製剤を投与します。
  • 活動の推奨:適度な運動は筋力維持と関節保護に有効です。水泳、サイクリング、ウォーキングなどの低リスクな運動を推奨し、コンタクトスポーツ(ラグビー、柔道、ボクシングなど)は避けるよう指導します。
  • 在宅自己注射の指導:手技の習得、製剤の保管方法(冷蔵保管が必要な製剤もある)、注射記録のつけ方、使用済み針の処理方法などを指導します。定期的に手技の確認も行います。
  • 心理的サポート:出血への恐怖、活動制限への不満、将来への不安などを傾聴し、疾患と上手に付き合っていけるよう支援します。患者会の情報提供や、同じ疾患を持つ仲間との交流の機会を提供します。
  • 家族支援:特に小児の場合、保護者の不安や負担感に配慮します。過保護になりすぎず、子どもの自立を促せるよう支援します。また、きょうだいへの配慮も忘れずに行います。
  • 学校・職場との連携:必要に応じて、学校や職場に疾患について説明し、適切な配慮を依頼します。体育の見学や、重労働の制限などについて相談します。
  • 遺伝カウンセリングの紹介:思春期以降の患者さんや保因者の女性に対して、遺伝カウンセリングの情報を提供します。

よくある疑問・Q&A

Q: 血友病の患者さんは、採血や注射ができないのですか?

A: いいえ、そんなことはありません。採血や筋肉注射、静脈注射は可能です。ただし、穿刺後の圧迫止血を十分に行うことが重要です。通常よりも長めに(5〜10分程度)、しっかりと圧迫します。筋肉注射は皮下出血のリスクがあるため、できれば避けるか、どうしても必要な場合は凝固因子製剤を投与してから行うこともあります。予防接種も同様で、接種後の圧迫止血を十分に行えば問題ありません。むしろ、感染症予防のためにワクチン接種は重要です。看護師としては、穿刺は一発で成功させること、穿刺後は確実に圧迫することを心がけましょう。

Q: 関節内出血を起こした患者さんへの初期対応として、RICE処置は有効ですか?

A: はい、RICE処置(Rest:安静、Ice:冷却、Compression:圧迫、Elevation:挙上)は関節内出血の初期対応として有効です。ただし、最も重要なのは凝固因子製剤の投与です。RICE処置はあくまで補助的な対応と考えましょう。まず凝固因子製剤を投与し、その上で患部を安静にし、アイシングを行い、患部を心臓より高く挙上します。圧迫は、関節内出血では腫脹を増強させる可能性があるため慎重に行います。アイシングは、出血直後から24〜48時間程度行うと疼痛や腫脹の軽減に効果的です。ただし、凍傷を避けるため、直接皮膚に当てず、タオルなどで包んで使用します。出血が落ち着いたら、早期に関節可動域訓練を開始することも重要です。

Q: 在宅自己注射の指導で特に注意すべきポイントは何ですか?

A: 在宅自己注射は、血友病患者さんのQOLを大きく向上させる治療法ですが、適切な手技の習得が不可欠です。指導のポイントは以下の通りです。

  1. 手技の確実な習得:手洗い、消毒、薬液の溶解(必要な場合)、注射、針の廃棄まで一連の流れを繰り返し練習します。
  2. 製剤の保管方法:冷蔵保管が必要な製剤もあるため、適切な温度管理を指導します。凍結させてはいけません。
  3. 投与量の計算:体重に応じた投与量を正しく計算できるか確認します。
  4. 投与記録:いつ、どれだけ投与したかを記録することで、製剤の使用状況や出血頻度の把握ができます。
  5. 緊急時の対応:重大な出血や頭部外傷時には、自己注射後すぐに医療機関を受診するよう指導します。
  6. 針刺し事故の予防:使用済み針は専用の廃棄容器に入れ、リキャップはしないよう指導します。
  7. 定期的な手技の確認:慣れてくると自己流になることもあるため、定期的に手技を確認します。

患者さんや家族が不安なく在宅自己注射を実施できるよう、丁寧に指導し、いつでも相談できる体制を整えることが重要です。

Q: 血友病の子どもの保護者から「うちの子は普通の子と同じように遊ばせてもいいのでしょうか?」と聞かれたら、どう答えたらよいですか?

A: これは保護者が最も悩む質問の一つです。答えとしては、「適切な管理のもとで、できるだけ普通の子どもと同じように活動させることが大切です」と伝えましょう。過度な制限は、子どもの身体的・精神的発達を妨げ、自己肯定感の低下や社会性の欠如につながる可能性があります。

ただし、危険な活動は避ける必要があります。コンタクトスポーツ(ラグビー、柔道、ボクシングなど)や、転倒のリスクが高い活動(スケートボード、スキーなど)は推奨されません。一方、水泳、サイクリング、ウォーキング、卓球などは安全で、筋力や関節機能の維持に有効です。

また、定期補充療法を適切に行っていれば、出血のリスクは大幅に減少します。保護具(ヘルメット、肘・膝パッドなど)の使用も有効です。保護者には、「危険を完全に避けることではなく、適切な管理のもとで安全に活動する方法を一緒に考えていきましょう」と伝え、具体的なアドバイスを提供することが大切です。子ども自身が、自分の疾患を理解し、適切に管理できるよう成長していくことが最終的な目標です。


まとめ

血友病は、血液凝固因子の先天的欠乏により出血傾向を示す遺伝性疾患です。病態の核心は、第VIII因子または第IX因子の欠乏により、血液凝固カスケードが正常に進行しないことにあり、これが関節内出血、筋肉内出血、粘膜出血などの多彩な出血症状を引き起こします。

看護の要点は、出血の早期発見と迅速な対応凝固因子製剤の適切な投与管理関節の保護と機能維持、そして患者・家族への教育的支援です。特に関節内出血は繰り返すと血友病性関節症へと進行し、患者さんのQOLを大きく低下させるため、定期補充療法による予防と、出血時の早期治療が極めて重要です。

治療法の進歩により、血友病患者さんの予後は大幅に改善しています。定期補充療法長時間作用型製剤皮下注射製剤などの登場により、出血頻度が減少し、多くの患者さんが通常の社会生活を送れるようになっています。しかし、適切な管理には患者さん自身と家族の理解と協力が不可欠です。

実習では、出血徴候を見逃さないこと在宅自己注射の指導が適切に行われているか確認すること、そして患者さんや家族の不安に寄り添うことを意識しましょう。特に小児の患者さんでは、保護者が過保護になりすぎず、子どもの正常な成長発達を促せるよう支援することが重要です。また、思春期の患者さんには、疾患による活動制限や他者との違いに対する悩みに共感し、自己肯定感を高める関わりが求められます。

血友病は生涯にわたる管理が必要な疾患ですが、適切な治療と自己管理により、患者さんは十分に充実した人生を送ることができます。医療者として、患者さんが疾患と上手に付き合い、自分らしく生きていけるよう、長期的な視点で支援していくことが大切です。


免責事項

本記事は教育・学習目的の情報提供です。

・一般的な医学知識の解説であり、個別の患者への診断・治療の根拠ではありません

・実際の看護実践は、患者の個別性を考慮し、指導者の指導のもと行ってください

・記事の情報は公開時点のものであり、最新の医学的知見と異なる場合があります

・本記事を課題としてそのまま提出しないでください

・正確な情報提供に努めていますが、内容の完全性・正確性を保証するものではありません


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