本記事では、看護師の思考プロセスを詳しく解説します。
実際の臨床では患者さんごとに状況が異なりますが、「わたしならどう考えるか」を具体的に示すことで、あなた自身の考える力を育てることを目指します。
この記事を参考に思考プロセスを学び、看護過程が得意になってもらえたら嬉しいです。
それでは、見ていきましょう。
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免責事項
本記事は教育・学習目的の情報提供です。事例は完全なフィクションであり、個別の診断・治療の根拠ではありません。実際の看護実践は患者の個別性を考慮し、指導者の指導のもと行ってください。本記事をそのまま課題として提出しないでください。内容の完全性・正確性は保証できず、本記事の利用により生じた損害について一切の責任を負いません。
基本情報
A氏、70歳、男性、身長165cm、体重58kg。妻(68歳)と長女(42歳)の3人暮らしで、キーパーソンは妻である。元会社員で、性格は真面目で几帳面、やや完璧主義的な傾向がある。感染症はなく、アレルギーも特記事項なし。認知機能は保たれており、MMSE 28点、HDS-R 27点と軽度の低下はあるものの日常生活に支障はない。
病名
パーキンソン病(Hoehn&Yahr重症度分類:ステージIII)、起立性低血圧、便秘症
既往歴と治療状況
5年前にパーキンソン病と診断され、以降レボドパ製剤を中心とした薬物療法を継続している。3年前に転倒により左大腿骨頸部骨折の既往があり、保存的治療を受けた。高血圧症で15年前から内服治療中である。現在は神経内科に月1回通院し、薬物療法の調整を受けている。
入院から現在までの情報
訪問看護導入の3か月前、自宅で転倒し右肩を打撲したことをきっかけに、妻から「自宅での生活が不安」との相談があり、主治医の指示で訪問看護が開始された。導入当初は週1回の訪問であったが、ADLの低下と服薬管理の必要性から現在は週2回の訪問となっている。パーキンソン病の進行により、動作緩慢、筋固縮、姿勢反射障害が顕著となり、特に午後のoff時間帯には症状が増悪する傾向にある。最近では服薬のタイミングがずれることがあり、症状の日内変動が大きくなっている。
バイタルサイン
訪問看護導入時のバイタルサインは、体温36.4℃、血圧132/78mmHg(臥位)、脈拍72回/分・整、呼吸数16回/分、SpO2 97%(室内気)であった。現在(11月15日訪問時)は、体温36.2℃、血圧108/62mmHg(臥位)、88/54mmHg(立位)、脈拍68回/分・整、呼吸数14回/分、SpO2 98%(室内気)である。起立性低血圧の所見が認められ、立位時の血圧低下が顕著である。
食事と嚥下状態
訪問看護導入前は常食を3食摂取していたが、現在は嚥下機能の低下により軟菜食としている。食事摂取量は6~7割程度で、特に夕食時の摂取量が少ない傾向にある。水分にとろみをつけており、むせは軽減している。食事時間は朝食30分、昼食40分、夕食50分程度を要している。喫煙歴はなく、飲酒も10年前に中止している。
排泄
訪問看護導入前は自立していたが、現在は日中はポータブルトイレ、夜間は尿器を使用している。排尿は1日6~8回、残尿感はない。排便は2~3日に1回で、硬便傾向がある。酸化マグネシウムを1日2回内服しているが、排便コントロールが不十分な状況である。時々腹部膨満感を訴えることがある。
睡眠
訪問看護導入前は6時間程度の睡眠が取れていたが、現在は中途覚醒が頻回で、夜間2~3回目が覚める。入眠困難はないが、夜間の筋強剛により寝返りが困難で、睡眠の質が低下している。ゾルピデム5mgを就寝前に内服しているが、効果は限定的である。日中の傾眠傾向も見られる。
視力・聴力・知覚・コミュニケーション・信仰
視力は老眼鏡使用で新聞の閲読が可能である。聴力は正常範囲内で、日常会話に支障はない。感覚障害はないが、姿勢反射障害により身体の位置感覚が低下している。コミュニケーションは、小声で単調な話し方が特徴的であるが、意思疎通は十分に可能である。特定の信仰はない。
動作状況
歩行は屋内で伝い歩き、小刻み歩行と突進歩行が見られる。移乗は見守りを要し、立ち上がりに時間がかかる。排泄は日中ポータブルトイレで一部介助、夜間は尿器使用で全介助である。入浴は週2回デイサービスで実施し、全介助を受けている。衣類の着脱は時間をかければ可能だが、ボタンの留め外しに15分程度を要する。転倒歴は過去3か月で2回あり、いずれも方向転換時に発生している。
内服中の薬
- レボドパ・カルビドパ配合錠(100mg/10mg):1回1錠、1日3回(朝8時・昼12時・夕18時)
- レボドパ・カルビドパ配合錠(100mg/10mg):1回0.5錠、1日1回(就寝前22時)
- プラミペキソール塩酸塩錠(0.125mg):1回1錠、1日3回(毎食後)
- エンタカポン錠(100mg):1回1錠、1日3回(毎食後)
- アマンタジン塩酸塩錠(50mg):1回1錠、1日2回(朝・夕食後)
- アムロジピンベシル酸塩錠(5mg):1回1錠、1日1回(朝食後)
- 酸化マグネシウム錠(330mg):1回2錠、1日2回(朝・夕食後)
- ゾルピデム酒石酸塩錠(5mg):1回1錠、1日1回(就寝前)
検査データ
| 項目 | 訪問看護導入時(8月10日) | 現在(11月8日) | 基準値 |
|---|---|---|---|
| WBC(/μL) | 5,800 | 6,200 | 3,300-8,600 |
| RBC(×10⁴/μL) | 428 | 412 | 435-555 |
| Hb(g/dL) | 13.2 | 12.6 | 13.7-16.8 |
| Ht(%) | 39.8 | 38.2 | 40.7-50.1 |
| Plt(×10⁴/μL) | 22.4 | 21.8 | 15.8-34.8 |
| TP(g/dL) | 7.1 | 6.8 | 6.6-8.1 |
| Alb(g/dL) | 4.2 | 3.8 | 4.1-5.1 |
| AST(U/L) | 24 | 26 | 13-30 |
| ALT(U/L) | 18 | 20 | 10-42 |
| BUN(mg/dL) | 16.2 | 18.8 | 8-20 |
| Cr(mg/dL) | 0.82 | 0.88 | 0.65-1.07 |
| Na(mEq/L) | 140 | 138 | 138-145 |
| K(mEq/L) | 4.2 | 4.4 | 3.6-4.8 |
| Cl(mEq/L) | 102 | 100 | 101-108 |
| CRP(mg/dL) | 0.08 | 0.12 | 0-0.14 |
服薬管理は当初自己管理であったが、飲み忘れや飲み間違いが増えたため、現在は一包化して妻が管理している。
今後の治療方針と医師の指示
主治医からは、現在の薬物療法を継続しながら、症状の日内変動を観察し、必要に応じて服薬タイミングの調整を行う方針が示されている。リハビリテーションとして、訪問看護時の運動指導と週2回のデイサービスでの理学療法を継続する。転倒予防のため、環境整備と動作指導を強化すること、起立性低血圧への対応として水分摂取の励行と起立時の段階的な動作を指導することが指示されている。便秘コントロールのため、排便状況を観察し必要時には浣腸の実施も検討するよう指示がある。
本人と家族の想いと言動
A氏は「以前のように自由に動けないのがもどかしい。妻に迷惑をかけて申し訳ない」と話し、時折落ち込んだ表情を見せる。「できることは自分でやりたいが、体が思うように動かない」と悔しさを訴えることもある。妻は「主人の世話は当然のことだが、正直疲れることもある。でも、できるだけ自宅で過ごさせてあげたい」と話す。長女は「両親が心配だが、仕事もあり頻繁には来られない。訪問看護があって本当に助かっている」と感謝の言葉を述べている。最近、A氏は「薬の時間が分からなくなることがある」と不安を口にしており、妻も「薬の管理が大変になってきた」と訴えている。
ゴードン11項目アセスメント解説
1. 健康知覚-健康管理パターンのポイント
このパターンでは、A氏とその家族がパーキンソン病という進行性疾患をどのように理解し、日々の健康管理にどう取り組んでいるかを評価することが重要です。特に、服薬管理の変化や疾患の進行に対する認識は、今後の在宅療養を支える上で重要な情報となります。
どんなことを書けばよいか
健康知覚-健康管理パターンでは、以下のような視点からアセスメントを行います。
- 疾患についての本人・家族の理解度(病態、治療、予後など)
- 疾患や治療に対する受け止め方、受容の程度
- 現在の健康状態や症状の認識
- これまでの健康管理行動(受診行動、服薬管理、生活習慣など)
- 疾患が日常生活に与えている影響の認識
- 健康リスク因子(喫煙、飲酒、アレルギー、既往歴など)
疾患の理解と受け止め方
A氏は5年前にパーキンソン病と診断され、神経内科に月1回定期的に通院しているという情報から、疾患管理に対する意識の高さがうかがえます。真面目で几帳面、やや完璧主義的な性格という記載を踏まえると、これまで自己管理を徹底してきた可能性が高いことを考慮するとよいでしょう。しかし、「薬の時間が分からなくなることがある」というA氏の発言や、「以前のように自由に動けないのがもどかしい」「妻に迷惑をかけて申し訳ない」という言葉からは、疾患の進行に伴う自己管理能力の低下と、それに対する本人の葛藤が読み取れます。この葛藤が健康管理行動にどのような影響を与えているかという視点でアセスメントすることが重要です。
服薬管理の変化
服薬管理が当初の自己管理から、現在は一包化して妻が管理する形に変化している点に着目するとよいでしょう。これは認知機能の軽度低下(MMSE 28点、HDS-R 27点)と関連している可能性があります。「薬の時間が分からなくなることがある」というA氏の不安と、「薬の管理が大変になってきた」という妻の訴えは、服薬タイミングのずれによる症状の日内変動拡大という問題につながっていることを踏まえて記述するとよいでしょう。パーキンソン病治療において、レボドパ製剤を含む複数の薬剤を正確なタイミングで服用することが症状コントロールに直結するため、この変化は疾患管理の質に大きく影響する点を押さえておくことが重要です。
既往歴と健康リスク因子
3年前の左大腿骨頸部骨折の既往歴と、訪問看護導入前の転倒による右肩打撲、さらに過去3か月で2回の転倒歴があることから、転倒リスクが継続的に存在していることを意識して記載するとよいでしょう。15年間の高血圧治療歴も心血管系リスクとして重要な情報です。喫煙歴がなく、10年前に飲酒も中止している点は、健康リスク軽減のための行動がとれていたことを示しており、これまでの健康管理意識の高さを反映していると考えられます。
家族の健康管理への関与
妻がキーパーソンとして服薬管理を担い、「自宅での生活が不安」という相談から訪問看護導入に至った経緯を踏まえると、家族が積極的に健康管理に関与していることがわかります。一方で、妻の「正直疲れることもある」という発言から、介護負担が増大していることも考慮する必要があります。長女は「仕事もあり頻繁には来られない」と述べており、主な介護者である妻への支援体制を評価する視点が重要となります。
アセスメントの視点
A氏は真面目で几帳面な性格から、これまで自己管理を徹底してきたと考えられますが、疾患の進行により自己管理能力が低下し、家族依存度が高まっています。服薬管理の困難さは症状コントロールに直結するため、この変化を単なるADL低下としてではなく、疾患管理の質に関わる重要な問題として捉えることが大切です。また、本人の「できることは自分でやりたい」という意欲と、現実の身体機能とのギャップが心理的負担となっている可能性を踏まえてアセスメントするとよいでしょう。
ケアの方向性
服薬管理の支援体制を強化しながら、A氏の自尊心を保ち、可能な範囲での自己管理を継続できるよう支援することが重要です。妻への介護負担軽減策と、服薬アドヒアランス向上のための工夫(服薬カレンダー、アラーム機能の活用など)を検討する必要があります。また、疾患の進行に伴う変化を本人・家族が理解し、適切なタイミングで支援を受け入れられるよう、継続的な情報提供と心理的サポートが求められます。
2. 栄養-代謝パターンのポイント
このパターンでは、パーキンソン病の進行に伴う嚥下機能の低下と、それに対する食事形態の調整、さらに栄養状態の変化を評価することが重要です。検査データの推移からも栄養状態の悪化傾向が読み取れるため、多角的な視点でのアセスメントが必要となります。
どんなことを書けばよいか
栄養-代謝パターンでは、以下のような視点からアセスメントを行います。
- 食事と水分の摂取量と摂取方法
- 食欲、嗜好、食事に関するアレルギー
- 身長・体重・BMI・必要栄養量・身体活動レベル
- 嚥下機能・口腔内の状態
- 嘔吐・吐気の有無
- 皮膚の状態、褥瘡の有無
- 栄養状態を示す血液データ(Alb、TP、RBC、Ht、Hb、Na、K、TG、TC、HbA1c、BSなど)
食事摂取状況と嚥下機能の変化
A氏の食事は、訪問看護導入前の常食から現在は軟菜食へと変更されており、嚥下機能の低下に応じた対応がなされています。水分にとろみをつけることでむせが軽減している点は、適切な嚥下調整が行われていることを示しています。しかし、食事摂取量が6~7割程度にとどまり、特に夕食時の摂取量が少ない傾向にあることに着目する必要があります。食事時間が朝食30分、昼食40分、夕食50分と徐々に延長していることから、夕方にかけての疲労の蓄積や、午後のoff時間帯における症状増悪の影響を考慮するとよいでしょう。
栄養状態の評価
身長165cm、体重58kgから算出されるBMIは約21.3で標準範囲内ですが、検査データの推移を見ると栄養状態の悪化傾向が認められます。Albが4.2から3.8g/dLへ低下し、TPも7.1から6.8g/dLへ低下しています。さらにHbが13.2から12.6g/dL、Htが39.8から38.2%、RBCも428から412×10⁴/μLへと低下しており、軽度貧血の状態にあることを踏まえて記述するとよいでしょう。これらの変化は、食事摂取量の減少と長時間の食事時間による疲労、さらにパーキンソン病による代謝の変化が関連している可能性を考えることが重要です。
食事時間の延長と疲労
食事時間が朝から夕にかけて延長し、夕食では50分を要している点は、日中の活動による疲労の蓄積を示唆しています。パーキンソン病の動作緩慢により、咀嚼や嚥下の動作自体に時間がかかることに加え、食事動作そのものが大きなエネルギー消費を伴うことを意識してアセスメントするとよいでしょう。特に午後のoff時間帯には症状が増悪するため、夕食時にはより顕著に食事動作の困難さが現れている可能性があります。
水分摂取と代謝の評価
水分にとろみをつけているという記載から、誤嚥予防のための対策がとられていることがわかります。電解質データではNaが140から138mEq/L、Clが102から100mEq/Lとやや低下傾向にあり、水分摂取状況や体液バランスとの関連を考慮する必要があります。便秘症の管理において水分摂取は重要な要素であるため、とろみ調整による水分摂取量への影響も評価する視点が大切です。
パーキンソン病と栄養代謝の関連
パーキンソン病患者では、筋固縮や不随意運動によるエネルギー消費の増大、嚥下障害による食事時間の延長と疲労、消化管運動の低下による便秘などが栄養状態に影響を与えます。A氏の場合、これらの要因が複合的に作用し、食事摂取量の減少と栄養指標の低下につながっていると考えられることを踏まえて記述するとよいでしょう。
アセスメントの視点
食事形態の調整や嚥下対策は適切に行われていますが、摂取量の不足と栄養指標の低下傾向が認められます。夕食時の摂取量減少は、時間帯による症状変動と疲労の蓄積が関連していると考えられるため、服薬タイミングの調整や休息の取り方、食事時間の工夫などを含めた総合的なアプローチを検討する視点が重要です。また、栄養状態の悪化は活動耐性や免疫機能の低下につながる可能性があるため、継続的なモニタリングが必要です。
ケアの方向性
食事摂取量を改善するために、少量頻回食や補食の活用、症状が比較的安定している時間帯での食事摂取、高カロリー・高タンパク質食品の利用などを検討する必要があります。また、食事環境の整備や食事介助の方法、本人のペースに合わせた食事時間の確保なども重要です。栄養状態の評価を継続し、必要に応じて栄養補助食品の導入や主治医への相談を含めた対応を考えることが求められます。
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ゴードンの続きとヘンダーソン・関連図・看護計画について解説しています😊



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